「第23回:アジャイルとは、みんなで作ること」はこちら>
「第24回:実践者が語る!アジャイルの課題と壁の乗り越え方 その1」はこちら>
「第25回: 実践者が語る!アジャイルの課題と壁の乗り越え方 その2」はこちら>
アジャイルに必要なマインド
![画像1: アジャイルに必要なマインド](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783596/rc/2023/08/04/396c733594f8a0d653c47b69a230243c387acada.jpg)
平鍋
次の質問は少し抽象度が高いのですが、アジャイルに必要なマインドとは?
大畑
私は、楽しんでやることだと思っています。
平鍋
それは素晴らしい。
大畑
以前、担当していたウォーターフォールの大規模システム開発では、リリースまでに1年半から3年かかっていました。一方で、今担当しているアジャイル開発では、大体2~3週間でリリースしています。アジャイル開発では毎日やることが変わるし、今日決めたことが明日には平気で変わっています。計画通り進む日は多くはなく、毎日どきどきわくわくします。1日が終わるとすっきりします。タスクがどんどん消えていくのも見えるし、成果物ができるとちゃんと提供できた実感もある。こうしたアジャイルならではの醍醐味があって、今はそれが楽しい。このため私はアジャイルに必要なマインドは「楽しむ」ことだと思っています。
平鍋
最近は仕事の中でも幸福度とかエンゲージメントという言葉がふつうに使われるようになりました。僕たち昭和世代は、「仕事というのはつらいものだ」というマインドを植え付けられてきましたが、そういう考え方はもう捨てるべきだと思います。そこで出会った人たちと一緒にものを作って喜びを共有するというのは、すごく基本的なことです。しかし以前は、楽しさを主張すると「甘いことを言うな」とたしなめられる空気でしたが、今は胸を張って「楽しむ」と言えるように時代が変わってきた。これは本当に素晴らしいことだと思います。
![画像2: アジャイルに必要なマインド](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783596/rc/2023/08/04/7e2e7f71cf87263136b3a0d1d1f493b7b31944dc.jpg)
向坂
今の「楽しむ」というところにつながる話として、私はエンジニアの方たちも積極的にビジネスに興味を持ってもらいたいと思っています。ウォーターフォールの経験が長い人は、仕様通りにものを作るというマインドになってしまっている場合がありますが、「私が作ったもので、世の中をこう変えることができる」という視点でビジネスに興味を持ってもらえれば、それもモチベーションを上げる大きな原動力になります。
平鍋
おっしゃる通りです。そのマインドがないと仕様書に向かって仕事をすることになるので、何のために仕事をしているのか答えられなくなってしまいます。プロダクトオーナーは熱意を持ってそのプロダクトの愛を語って欲しいし、それに共感したエンジニアは「自分が形にすることで世の中を変えるんだ」「ユーザーを喜ばせるんだ」という意識で開発して欲しい。プロジェクト全体でそんな関係性を共有することができれば、仕事も楽しく作り出すものの品質も上がるはずです。
アジャイルの学び
平鍋
次の質問は、自分自身がアジャイルをどうやって学んだか。これは最近、経験されてきた大畑さん、いかがでしょう。
![画像: アジャイルの学び](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783596/rc/2023/08/04/7472cbd362a8e391cd6b171120bd3f60d9177a0b.jpg)
大畑
自己紹介の時にも話しましたが、チーム全員がアジャイル未経験からのスタートだったため、導入として向坂に1時間半の研修を2回実施していただきました。それとは別に私個人としては本を2冊ほど読み、あとは実際に作業を行いました。具体的には、自分でユーザーストーリーマップを作成し、プロダクトバックログに落とし込みました。毎日向坂に成果物の報告と作り方の疑問や質問を行い、実践的なアドバイスをいただきました。さらにそこでアドバイスいただき学んだものを、すべてチームに還元する体制とプロセスを作り、チーム全体で連携しました。
加えて、今もチームのメンバーが代わる時には、必ず向坂の研修教材を使って行っています。書籍で勉強した時に感じたのですが、それぞれの本は正しいことが書いてあるのですが、理解やニュアンス、用語などが少しずつ違っていて、チーム内の知識がブレる要因になったりするので、教育は全員がまったく同じ内容ということをルールにしています。
平鍋
確かに言葉がブレたり知識量に差が出ると、結構面倒です。
大畑
そうなのです。少なくとも現在のプロジェクトでは、このやり方がいいみたいです。
平鍋
特にはじめて取り組む場合、同じ言語と知識基盤をまず共有する、というのは開始時にぜひ心がけたいことですね。
「第27回: 実践者が語る!アジャイルの課題と壁の乗り越え方 その4」はこちら>
関連記事
![画像1: DXを加速するアジャイル ~変化を味方にしたチームづくり~
【第26回】 実践者が語る!アジャイルの課題と壁の乗り越え方(その3)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783596/rc/2023/08/04/cb5f3211e8ee09f34dc5261a143c30b6c69b3a9d.jpg)
平鍋 健児(ひらなべ けんじ)
株式会社 永和システムマネジメント 代表取締役社長、株式会社チェンジビジョン 代表取締役CTO、Scrum Inc.Japan 取締役。1989年東京大学工学部卒業後、UMLエディタastah*の開発などを経て、現在は、アジャイル開発の場、Agile Studio にて顧客と共創の環境づくりを実践する経営者。 初代アジャイルジャパン実行委員長、著書『アジャイル開発とスクラム 第2版』(野中郁次郎、及部敬雄と共著) 他に翻訳書多数。
![画像2: DXを加速するアジャイル ~変化を味方にしたチームづくり~
【第26回】 実践者が語る!アジャイルの課題と壁の乗り越え方(その3)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783596/rc/2023/08/04/03c27e5ea4185f358154afcae5b9fd5f8e844e8c.jpg)
向坂 太郎(さきさか たろう)
株式会社 日立製作所 アプリケーションサービス事業部 主任技師(アジャイルコーチ)
1999年、株式会社 日立製作所入社。金融系システム開発のプロジェクトに従事。その後、社内の開発フレームワークや開発標準の整備など、ソフトウェア生産技術の開発・展開に従事。その知見と経験を生かし、2019年からアジャイル開発コンサルティングサービスを立ち上げ、コンサルタントとしてユーザー企業さまのアジャイル開発プロジェクト、人財育成、社内標準化など、さまざまな課題解決を支援。
![画像3: DXを加速するアジャイル ~変化を味方にしたチームづくり~
【第26回】 実践者が語る!アジャイルの課題と壁の乗り越え方(その3)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783596/rc/2023/08/04/2d95f90f2250de1e955853d2602d0bca87832fb5.jpg)
杉原 優子(すぎはら ゆうこ)
株式会社 日立製作所 アプリケーションサービス事業部 主任技師(アジャイルコーチ)
2008年 株式会社 日立製作所入社。生産技術本部にて社内の開発フレームワークや開発標準の整備など、ソフトウェア生産技術の開発・展開に従事。2019年から2021年にかけてアジャイル教育講師・コーチとして活動。2022年よりGlobalLogic Japanビジネス推進本部に席を置き、GlobalLogicとともに顧客協創活動に従事、現在に至る。
![画像4: DXを加速するアジャイル ~変化を味方にしたチームづくり~
【第26回】 実践者が語る!アジャイルの課題と壁の乗り越え方(その3)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783596/rc/2023/08/04/4cfa6a6c92f2d1c158cede0824267736e05a9f32.jpg)
大畑 聡(おおはた さとし)
株式会社 日立製作所 金融第二システム事業部 技師(スクラムマスター)
2007年 株式会社 日立製作所入社。政府系金融機関のシステム開発に従事。2021年から証券会社のシステム開発に従事。
![画像5: DXを加速するアジャイル ~変化を味方にしたチームづくり~
【第26回】 実践者が語る!アジャイルの課題と壁の乗り越え方(その3)](https://d1uzk9o9cg136f.cloudfront.net/f/16783596/rc/2023/08/04/4611e3673ef9b5e4467a904e674154c191009925.jpg)
『アジャイル開発とスクラム 第2版』
著:平鍋健児 野中郁次郎 及部敬雄
発行:翔泳社(2021年)