Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
「DXを加速するアジャイル ~変化を味方にしたチームづくり~」 第11回は、コロナ禍において試行錯誤を重ねたオンラインでの「スクラム」について。工夫と改善でチームに合ったやり方を見つける、そのための参考事例をご紹介いただきます。

「第1回:DXがアジャイルを必要とする理由」はこちら>
「第2回:アジャイルとの出合いから現在まで」はこちら>
「第3回:スクラムの原点は、日本発のひとつの論文」はこちら>
「第4回:アジャイル開発の実際」はこちら>
「第5回:スクラムによる組織改革事例」はこちら>
「第6回:心理的安全性と幸福度」はこちら>
「第7回:1週間のスプリントを繰り返す「スクラム」」はこちら>
「第8回:「スクラム」の3つの役割」はこちら>
「第9回:「朝会」と「ふりかえり」を大切に」はこちら>
「第10回:「場づくり」の5つの原則」はこちら>

オンラインホワイトボードを有効に活用する

コロナ禍の約3年間、「スクラム」に取り組まれている人たちも、「朝会」や「ふりかえり」などそれまで毎日顔を合わせることを前提に組まれていたイベントは、オンラインで行うことを余儀なくされました。僕の会社でも、各チームがさまざまな工夫をしながらコロナ禍で仕事を続けてきました。今回は、そんな試行錯誤から生まれたオンライン環境での「スクラム」のやり方を紹介したいと思います。

画像: オンラインホワイトボードの全体像

オンラインホワイトボードの全体像

これは10数人のチームがオンラインで「スクラム」を進めるときの全体像です。大きすぎてわかりにくいと思いますが、イメージだけをつかんでもらえれば大丈夫です。チーム全員が Miro というオンラインホワイトボードを、コミュニケーションのプラットフォームとして使用します。その理由は、オンライン上で付箋が自由に使えたり、チャートやグラフの作成や修正が簡単にできたり、それを記録に残すなど、リアルで「スクラム」を行う時に必要なツールがアプリの機能として用意されているからです。

オンラインでの「朝会」と「バーンダウンチャート」

画像: オンラインでの「朝会」の画面

オンラインでの「朝会」の画面

チームのメンバーは、毎朝(毎夕の場合もあり)決まった時間にオンライン会議での「朝会」をこのようなアジェンダの画面を見ながら行います。司会は当番制になっていて、元気良く「おはようございます」で「朝会」をスタートし、「前日やったこと」「今日やること」「今の問題点」を各自が報告するのですが、このチームは「ふりかえり」でそれが十分できているので前日と本日の項目はもう報告をやめています。こういう改善が起きることも大事なことです。

in progressではto doの確認を行うとか、Q&Aでは顧客から上がってくる質問に答えているかを確認して、そのログをQ&A表で残すということもやっています。オンラインでもチームのやり方をどんどん改善しながら、「朝会」の精度と効率を上げていくことはできるのです。

画像: オンラインのバーンダウンチャート

オンラインのバーンダウンチャート

第9回では、朝会の最後に現在の進捗を手書きで記入するバーンダウンチャートの話をしましたが、手描きでの記入をオンライン上で再現することも可能です。

デジタルですから、ツールを使えば簡単にこのようなグラフが描けてしまいますが、オンラインでもみんなで進捗を数えてマニュアルで矢印を引いているのです。

チームの開発の進行速度

画像: 開発チームの進行速度を数値化したベロシティ

開発チームの進行速度を数値化したベロシティ

1回のスプリントで完了した作業の合計値をベロシティといいます。タスクごとにポイントをつけ、チームの開発がどれほど進んでいるかを可視化できるほか、スプリントの参考値や開発完了の時期の推測などにも活用することができます。過去のベロシティと比較することでスケジュールに対して過度な作業になっていないかを判断したり、ベロシティが安定か上昇傾向にある場合にはチームが成長しているバロメーターにもなります。

1週間のリズムの共有

画像: 1週間の予定表

1週間の予定表

このチームは、水曜日にスプリントイベントやプランニングがあり、「計画づくり」や「ふりかえり」といったみんなで顔を合わせてやるイベントはこの日にやるということになっています。その他のイベントや不在になる人が貼ってあり、これでチームの1週間のリズムを作っているのです。ほかにもメンバーのプロフィールをツリーや地層に見立ててアーカイブするなど、チームがそれぞれに工夫や改善を加えながらオンラインでの「スクラム」を進めています。

チームのメンバーが一か所に集まれないことは、日常の仕事でも珍しいことではありません。新しいツールを活用し、チームがやる気になればオンラインでも「スクラム」は十分可能ですから、ぜひトライしてみてください。

Hiranabe’s Point

「朝会」「タスクかんばん」「バーンダウンチャート」など、リアルの「スクラム」で使用するツールはオンラインでも全部揃っている。
オンラインでもアナログにこだわり、ふりかえりで改善を繰り返す。

「第12回:「スクラム」をスケールする方法」はこちら>

画像1: DXを加速するアジャイル ~変化を味方にしたチームづくり~
【第11回】 オンラインで行う 「スクラム」

平鍋 健児(ひらなべ けんじ)

株式会社 永和システムマネジメント 代表取締役社長、株式会社チェンジビジョン 代表取締役CTO、Scrum Inc.Japan 取締役。1989年東京大学工学部卒業後、UMLエディタastah*の開発などを経て、現在は、アジャイル開発の場、Agile Studio にて顧客と共創の環境づくりを実践する経営者。 初代アジャイルジャパン実行委員長、著書『アジャイル開発とスクラム 第2版』(野中郁次郎、及部敬雄と共著) 他に翻訳書多数。

画像2: DXを加速するアジャイル ~変化を味方にしたチームづくり~
【第11回】 オンラインで行う 「スクラム」

『アジャイル開発とスクラム 第2版』

著:平鍋健児 野中郁次郎 及部敬雄
発行:翔泳社(2021年)

This article is a sponsored article by
''.