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日立製作所(以下、日立)のデジタルマーケティング統括本部 DC営業本部では、オペレーショナルエクセレンスAI推進室(以下、OEA推)の支援のもと、AIエージェント開発を推進。その目的は、営業パイプライン管理の高度化の他に、将来的にDC営業本部が必要なAI開発を自らが行えるようになることがありました。後編では、プロジェクトで実践された自走化への取り組みについて、AIアンバサダーの大山友和が聞いていきます。

「【第2回】マーケティング部門のパイプライン管理編(前編)」から読む >

チューニングのプロセスを事業部門と子細に共有

大山
開発段階では、どのような試行錯誤があったのでしょうか。

画像1: チューニングのプロセスを事業部門と子細に共有

田中
最も時間をかけたのは、回答精度を高めるためのチューニングです。AI開発では、DC営業本部の皆さんがどのような観点で判断しているのかをヒアリングし、その考えをプロンプトに落とし込んでいきますが、結果が人と同じにならないことも少なくありません。そこで、出力結果の正否と判断根拠を再度確認後、プロンプトを改善し、テストする——これを繰り返し行いました。週に1回ミーティングを開き、そこで新たな観点をもらうとすぐに改善版を提案し、翌週にそのフィードバックをもらうというサイクルです。

短いサイクルでプロジェクトを回した背景には、開発の早期化の他に、AIの精度を高めていくプロセスを子細に事業部門と共有するという目的もありました。というのも、今回の取り組みは、AIエージェントの開発だけが狙いではなく、将来、DC営業本部の皆さんが必要なAIエージェントを自ら作れるようになることも見据えていました。そのため、私たちOEA推が持つ知見をできるだけ移転できるよう努めました。

画像2: チューニングのプロセスを事業部門と子細に共有

梅﨑
私たちにとっても、日ごろ無意識に行っている判断——「どの情報を見て、何を根拠にしているのか」を一つひとつ分解し、言語化する作業は難しく、想像以上に時間がかかりました。

しかしその過程で、これまでなんとなく負担に感じていた業務のどこに工数がかかっていて、何が課題なのかを明確にすることができました。この整理は、今後新たな改善やAI活用を検討する際に大きな財産になると感じています。

また田中さんは、私たちの要望に対して常に複数の選択肢を提示してくれました。例えば、AIに読み込ませる情報量によって精度がどう変わるのか、M365 CopilotとGemini Enterpriseでは回答にどんな違いが生じるのか、さらにGeminiEnterpriseのモデルごとの正解率や応答速度はどうなのか、など、さまざまな観点からともに最適解を探ってくれました。

これにより私たちのAIへの知見が深まったことはもちろんですが、それ以上にAIの業務実装の進め方を実践的に学べたことは大きな収穫だったと感じています。

画像3: チューニングのプロセスを事業部門と子細に共有

大山
これはまさに「AIを育てる」プロセスです。「AIを育てる」とは、業務固有のロジックや判断基準をAIに落とし込んでいく作業です。

きれいにまとめられた要件定義書だけを見て開発するのではなく、開発者が事業部門に入り込み、そこで行われている判断や工夫まで深く理解する。そうした泥臭い擦り合わせのうえに、本当に使えるAIエージェントは育っていきます。そしてこのような「ともに悩む」取り組みこそが、事業部門によるAI活用の自走化にもつながっていくのだと思います。

新たなインサイトの提供へ

大山
今回の取り組みでは、業務効率化にとどまらず、その先の「新たなインサイトの提供」もDC営業本部の狙いだったと伺っています。この点ではどのような進捗がありましたか。

相田
現在、構想の一つとして、案件の分布やボリュームを日本地図上で可視化したいと考えています。データセンターの地方分散が進む中、どの地域で案件が活発化しているのかを一目で把握できる資料には価値があると以前から感じていました。ただ、これまでの人手による地域判定は精度にばらつきがあり、さらにBIツールで集計結果を地図に落とし込む作業にも相応の工数がかかるため、実現には至っていませんでした。

今回、地域判定AIエージェントによって判定精度が向上したことに加え、田中さんとの検証を通してGemini Enterpriseを使えば集計結果の地図化も比較的容易だと分かり、実現の見通しが付きました。

また現在、AIを活用して営業インテリジェンスを強化する計画も進めています。検討中のものをいくつか挙げると、構想前段階の相談・引き合いのリスク分析や有望度のスコアリングを行い、どの案件に注力すべきかを判断できるようにする。また、提案から見積、受注へと至る各フェーズの推移や、提案内容/商材構成と受注率の関係を分析し、優良な案件の特徴や失注リスクの兆候を可視化する、など営業活動の高度化に向けて新たなインサイトを提供したいと構想しています。

画像: 地域判定の集計結果を地図にプロットする作業もAIを活用して効率化

地域判定の集計結果を地図にプロットする作業もAIを活用して効率化

田中
現在は、案件の有望性をどのような観点で評価すべきか、またどのようなスコアリングが実態に即しているのかなどについて、AIからの示唆も取り入れながら仮説検証を進めている段階です。

変化の時代、AI活用の自走化は必須

大山
AI活用の自走化について、DC営業本部の皆さんは手ごたえを感じていますか。

画像1: 変化の時代、AI活用の自走化は必須

相田
はい。十分な手ごたえを感じていますし、必ず実現しなければならないと考えています。

いま市場環境は、かつてない速さで変化しています。特にデータセンター市場は、生成AI需要の拡大に加え、電力確保や立地制約、政策動向などさまざまな要因が複雑に絡み合いながら日々変化を続けています。

実際、日々の会議でも、「こういう観点で分析できないか」「こういうレポートが欲しい」といった新たな要望が次々に出てきます。その情報は、今まさに求められているもので、タイムリーに対応する必要があります。そうしたときに、システム部門へ依頼し、要件定義を行い、開発を待つという従来の進め方では間に合いません。私たち自身が必要なAIエージェントを形にして、迅速に分析を行う。このスピード自体が競争力になると考えています。

これまで生成AIに触れる中で、こんなAIエージェントが「できるかも」とアイデアは多く持っていましたが、それを「できる」につなぐ道筋がわからず手探り状態で試行錯誤を繰り返していました。今回、OEA推の田中さんの伴走のもと、私たちは「できるかも」から「できる」への道筋を学ぶことができました。これは今後、自分たちでAI活用を広げていくうえで大きな土台になると思っています。

大山
従来、システム部門は要件定義書をもとに完成度高くAIを作り込み、事業部門はその評価のみを行う分業的な進め方が主流でした。しかしその結果、二者間に距離が生じ、AIが業務になじまず、形骸化してしまうケースも少なくなかったと思います。

一方、今回のアプローチは異なります。未完成のAIをシステム部門と事業部門でシェアし、ともに悩み、育てていく——試行錯誤のプロセスをオープンに共有することを大切にしました。その結果、事業部門では「AIは与えられるものではなく、自分たちで育てるものだ」というパラダイムシフトが起きました。一方でシステム部門でも、「AIを作る」から「AIを作る人を増やす」へと役割が変化するパラダイムシフトが起きています。

画像2: 変化の時代、AI活用の自走化は必須

そして、このパラダイムシフトにより業務で確かな成果をあげるAIが生まれると同時に、事業部門によるAI活用の自走化が動き始めました。

業務に根付くAIを生み出すためには、システム部門と事業部門が未完成のAIを真ん中に据えて、ともに悩みながらAIに知見を蓄積していくことが大切なのです。

「業務別!AIの育て方」一覧はこちら >

画像1: 業務別!AIの育て方
【第2回】マーケティング部門のパイプライン管理編(後編)

相田 真季子(あいだ まきこ)
株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部
DC営業本部 DC営業第一部 企画G 部長代理

入社後は情報通信部門にて金融機関のアカウント営業を担当したのち、営業企画としてパートナー販売の戦略立案やマーケティングなどに従事。2年間総合商社に出向し、社内イノベーションの仕組みづくりや新規ビジネスインキュベーションを担当。その後、製造業のアカウント営業を経て、コーポレート営業企画部門にて各種施策を推進。現在、パイプラインマネジメント、日立グループ横断での拡販戦略会議運営を通じて、日立のDCビジネス拡大を推進中。

画像2: 業務別!AIの育て方
【第2回】マーケティング部門のパイプライン管理編(後編)

梅﨑 紫乃(うめざき しの)
株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部
DC営業本部 DC営業第一部 企画G

通信会社のデータ利活用部門にて、法人顧客のデータ可視化や基盤構築案件を担当。その後海外現地法人に出向し、グローバルeSIM事業の不正利用分析を経験する。帰国後はデータセンター事業でCRM導入や営業データ分析を担当。日立に入社後はデータセンターの営業パイプラインの集約・可視化・分析を行うとともに、マーケティング情報を集約したポータルの運営や拡販戦略会議の事務局を担当。グループ横断でのデータドリブンな営業推進に取り組んでいる。

画像3: 業務別!AIの育て方
【第2回】マーケティング部門のパイプライン管理編(後編)

田中 猛(たなか たけし)
株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部
オペレーショナルエクセレンスAI推進室 社内AI企画部 部長

新規ネットビジネスの企画・推進や製薬卸企業とのジョイントベンチャー設立支援を担当後、大手自動車メーカーにおけるITサービスマネジメントや出向先でのグループ会社向けプライベートクラウドサービスの設計・展開など多岐にわたるプロジェクトをリーダーとして牽引。現在はこれまでの経験を活かし、生成AIなどを活用した社内業務改善を推進している。

画像4: 業務別!AIの育て方
【第2回】マーケティング部門のパイプライン管理編(後編)

大山 友和(おおやま ともかず)
株式会社日立製作所
デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit フロントサポートセンター チーフプランニングエキスパート
AIアンバサダー

コンサルティング部門にて、営業業務改革、新規事業の立ち上げなどに従事した後、日立コンサルティングにて、基幹業務システム構築などを担当。プロジェクトリーダーとして、システム企画・構築・運用全般を統括。その後、営業バックオフィスを支える業務システム全般を統括。現在、営業部門の生成AI徹底活用プロジェクトの取りまとめとして、講演活動、ナレッジ蓄積、社内コミュニティ運営、人材育成などの取り組みを推進中。

※本記事に記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。

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