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日立製作所(以下、日立)と東京大学生産技術研究所による「ビッグデータ価値協創プラットフォーム工学 社会連携研究部門」の第1回シンポジウムで実現した、データベース工学の権威、喜連川優 東京大学特別教授と合田和生 東京大学准教授、日立の阿部淳、西澤格によるパネルディスカッションの後篇。「非順序型実行原理に基づく超高速データベースエンジン(以下、OoODE:ウード)」開発の経緯からサイバー空間の高度化に資する高速データ処理の可能性まで、議論は多岐にわたりました。
※ 所属、役職は2023年1月時点のものです。

『第1回「Lumada東大生研ビッグデータラボ」は“失敗できる実験場”』はこちら>
『第2回 新たな価値創出に向けた、革新的技術活用のケース紹介』はこちら>
『第3回 データの確保と人材の育成』はこちら>

いろいろな挑戦を「やってみる」ことに期待

合田准教授は本社会連携研究部門の活動にどのような期待をしているか、登壇者に問いました。日立の阿部は、HADB(※)開発の経緯を引き合いに、いろいろな挑戦を「やってみる」ことが大事だと強調しました。

※ 超高速データベースエンジンHitachi Advanced Data Binder

「わたしがHADBの基になる共同研究のお話を東京大学からいただいたのは15年以上前、当時は主任技師という役職でした。OoODEなら、従来の技術より1,000倍も速いデータ処理が可能になると聞いて「面白そうだな、ぜひお受けしたいな」とワクワクしながらも、上司はOKを出さないのではないか……という不安もありました。ところが話してみると一言『やってみなさい』との回答で、現在に至っています。実際に取り組んでみて、失敗してもそこから学べるものがあるし、成功すれば自信を付けることができる。もし何か面白い挑戦に取り組もうとしている部下がいたら、それをどんどん後押ししていけるよう、わたし自身も努めていきたいです」

画像: 日立 阿部淳

日立 阿部淳

さらに、阿部はこう続けます。

「当社でデータ基盤技術の開発に携わっている従業員はみんな嬉々として業務に取り組んでいます。アプリケーションの開発の面白さとはまた違う、システムのより深層に入り込んでいく面白さを感じているようです。近年人材の流動性が高いIT業界ですが、当社のそのセクションの従業員はだれも辞めていませんし、若いメンバーも加わっています」

合田准教授も、データ基盤技術はITの根幹をなす技術であり、コンピュータそのものを自分で操っているという感覚が大変魅力的な面白い分野だと語りました。

画像: 東京大学 合田和生准教授

東京大学 合田和生准教授

コンピュータそのものを操ることに関しては、本シンポジウム後に開催された新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の2022年度NEDO先導研究プログラム報告会において、「革新的な省エネルギー型データベース問合せコンパイラの研究開発~データ基盤もエネルギー競争の時代へ~」と題し、合田准教授が講演されています。経済の発展と持続可能な社会の実現の両立に向けた研究開発を進めているとのことです。

画像: いろいろな挑戦を「やってみる」ことに期待

「OoODEはもともと、データベースの高速化のために開発した技術ですが、その基本原理には、データベースの省エネルギー化にも大いに貢献できる可能性が秘められていることが徐々にわかってきました。今現在のビジネスの現場では、エネルギーを指標としてITソリューションを選択するということはまだほとんどないでしょう。しかしながら、多くの産業は成熟するにつれて、エネルギーの効率性を追求するようになって来ています。ITもエネルギーの効率性を競うフェーズにいずれ突入するのは確実と言えるため、そういった未来を先取りした研究も進めています」(合田准教授)

喜連川特別教授もさらなる期待を語りました。

「OoODEをさまざまな分野の方々に活用いただき、もっともっと洗練して行ければと思います。」

画像: 東京大学 喜連川優特別教授

東京大学 喜連川優特別教授

サイバー空間に見る、高速データ処理の可能性

その後4名は、OoODEの高速データ処理が効果を発揮すると期待される、これからの社会の姿について議論しました。

メタバースに象徴されるサイバー空間にリアル空間のさまざまな活動がシフトしつつある中で、サイバー空間で生じるであろうさまざまなデータ処理の壁は、OoODEを活用すれば軽やかに飛び越えられるのではないか。サイバー空間の安全・安心を確保するという面でも、OoODEが貢献できるのではないか――こういった意見に加え、それらを実現するための人材育成の重要性など、幅広い議論が繰り広げられました。

画像: 日立 西澤格

日立 西澤格

最後に、合田准教授が次のように述べ、パネルディカッションを終了しました。

「大学と企業は組織としての方向性や特性は異なりますが、連携しながら共通の課題の解決をめざしていく社会的意義は非常に大きいと思います。今回ご紹介した『ビッグデータ価値協創プラットフォーム工学 社会連携研究部門」を、ぜひ、さまざまな業種、社会における課題解決に役立てていただければと思います。本日はありがとうございました」

「ビッグデータ価値協創プラットフォーム工学 社会連携研究部門」の今後の成果が大いに期待されます。

画像1: 革新的技術とデータで社会課題を解く。日立と東大の挑戦
【その4】データ基盤技術の魅力

喜連川優(きつれがわ まさる)

国立情報学研究所所長、東京大学特別教授。1983年、東京大学大学院工学系研究科情報工学専攻博士課程修了。情報処理学会会長、日本学術会議情報学委員長を歴任。長年にわたり、日本のデータベース工学をリードしてきた。2013年より国立情報学研究所所長。東京大学教授を経て、2021年より特別教授。ACM SIGMODエドガー・F・コッド革新賞、電子情報通信学会功績賞、情報処理学会功績賞、日本学士院賞など受賞多数。

画像2: 革新的技術とデータで社会課題を解く。日立と東大の挑戦
【その4】データ基盤技術の魅力

合田和生(ごうだ かずお)

東京大学生産技術研究所准教授。博士(情報理工学)。2005年、東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程単位取得満期退学。日本学術振興会特別研究員、東京大学生産技術研究所産学官連携研究員、同特任助教などを経て現職。大規模データを対象とするシステムソフトウェア(特にデータベースシステム、ストレージシステム)の研究に従事。電子情報通信学会、情報処理学会、日本データベース学会、ACM、IEEE、USENIX各会員。

画像3: 革新的技術とデータで社会課題を解く。日立と東大の挑戦
【その4】データ基盤技術の魅力

阿部淳(あべ じゅん)

株式会社日立製作所 執行役専務。1984年、日立製作所入社。ソフトウェア事業部DB設計部長、日立データシステムズ社シニアバイスプレジデント、ソフトウェア事業部長、社会イノベーション・プロジェクト本部・ソリューション推進本部長、制御プラットフォーム統括本部長(大みか事業所長)、執行役常務、産業・流通ビジネスユニットCEOを経て2021年より現職。サービス&プラットフォームビジネスユニットCEO、日立ヴァンタラ社取締役会長を兼務。

画像4: 革新的技術とデータで社会課題を解く。日立と東大の挑戦
【その4】データ基盤技術の魅力

西澤格(にしざわ いたる)

株式会社日立製作所 研究開発グループ デジタルサービス研究統括本部 統括本部長。工学博士(東京大学)、技術士(情報工学部門)。日立製作所に入社後、中央研究所にてミドルウェアシステムの研究開発に従事。金融分野の顧客協創プロジェクト、AIやデータサイエンスなどの研究を牽引し、2022年より現職。2002~2003年、スタンフォード大学コンピューターサイエンス専攻 客員研究員。2018年、ハーバードビジネススクールAdvanced Management Program修了。ACM、情報処理学会、電子情報通信学会各会員。

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