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2022年4月、日立製作所(以下、日立)と東京大学生産技術研究所によるプロジェクト「ビッグデータ価値協創プラットフォーム工学 社会連携研究部門」が発足しました。データ処理を飛躍的に高速化する技術「非順序型実行原理に基づく超高速データベースエンジン(以下、OoODE:ウード」の開発と実用化に長年取り組んできた両者がめざす、社会と産業界を巻き込んだビッグデータ活用の可能性とは何か。2023年1月27日、東京大学駒場リサーチキャンパスにて開催された第1回シンポジウムの講演の内容を4回にわたってお届けします。初回にご紹介するのは、東京大学生産技術研究所 新野俊樹副所長の開会挨拶に引き続いて行われた、本プロジェクトを率いる合田和生 東京大学生産技術研究所 准教授による「研究部門の設立趣旨説明」です。
※ 所属、役職は2023年1月時点のものです。

データ基盤技術による社会課題解決の、ロールモデルを創る

冒頭、合田准教授は自らの専門領域と研究の狙いを次のように紹介しました。「わたしの専門領域はデータ基盤技術、いわゆるITインフラです。ハードウェアとアプリケーションソフトウェアの中間に位置するシステムソフトウェアを対象に、大きな変化をコンピュータシステムと社会に起こすべく研究に取り組んでいます。ここで言う『大きな変化』とは、データ処理を従来よりも2桁~4桁高速化する――例えば、1時間かかっていた処理を1秒に短縮することを意味します」

画像: 東京大学 合田和生准教授

東京大学 合田和生准教授

さらに、社会連携研究部門(※1)の設立趣旨を「東大生研が開発したOoODE(※2)といった最先端の情報技術により、社会にどのような価値を生み出すことができるか? その探求のために日立と立ち上げた」と説明しました。

※1 活動期間は2022年4月~2025年3月を予定。
※2 Out-of-order Database Execution Engine:決められた処理順序に従ってデータ処理命令を実行する従前のデータベースソフトウェア実行方式に対し、実行時にデータ処理命令の処理順序を変化させることにより飛躍的な高速化を可能にする方式。

日立と東大は2005年頃から「非順序型実行原理に基づく超高速データベースエンジン」の開発に着手。2012年に、この技術を実装した超高速データベースエンジンHitachi Advanced Data Binderの販売を日立が開始しています。

さらに合田准教授は、社会連携研究部門の設立に合わせ、ビッグデータ価値協創実験基盤(愛称:Lumada東大生研ビッグデータラボ)という実験拠点を東大の駒場リサーチキャンパスに構築し、データ基盤技術の研究・開発・検証の拠点とするとともに、技術の社会実装に向けた実証、人材育成に活用していくことにも言及。この活動を通じて技術が社会にもたらす波及効果の探究や整備すべき法制度の提言なども行っていくとのことです。

早くたくさん失敗し、正解にたどり着くための「実験場」

画像1: 早くたくさん失敗し、正解にたどり着くための「実験場」

合田准教授はLumada東大生研ビッグデータラボを「データに自由闊達(かったつ)に触れられる実験プラットフォーム」と表現。この「実験場」の活用イメージを次のように語っています。

「企業の方々が実際のビジネスのフィールドで解決したい課題が、データ分析によって得られる結果だけで直ちに解決できるわけではありません。データ分析の結果がどうビジネス課題の解決に使えるのかは、事前にはわからないことも多いでしょう。課題解決のために、『そもそもどういうデータをどう分析をすればよいのか』から検討し、確認する必要があります。これはとても労力を伴うプロセスです。

分析の試行錯誤を繰り返し、なるべく早い段階でたくさん失敗した末に最終的に正解にたどり着く。それができる場所が、Lumada東大生研ビッグデータラボなのです。大学という場所は、いわば『失敗できる実験場」です。さまざまな社会、産業界の方々とチャレンジングな試みができる場所として、ぜひ生かしていただければと考えております」

画像2: 早くたくさん失敗し、正解にたどり着くための「実験場」

最後に合田准教授は、社会連携研究部門の活動の主眼を「産業界の方々に社会課題を解決していただき、競争力を強化していただく。さらに、社会課題から学術的な課題を我々が抽出し、次の研究に生かしていく。革新的技術とデータを掛け合わせることで、社会課題解決を図る仕組みのロールモデルを創ることである」として、設立趣旨説明を終えました。

以上に引き続き、日立 執行役専務の阿部淳から、本社会連携研究部門がもたらす成果への期待が表明されました。日立と東大の今後の活動から、ますます目が離せません。

次回は、日立と東大がLumada東大生研ビッグデータラボを活用して取り組もうとしているデータ分析事例をご紹介します。

『第2回 新たな価値創出に向けた、革新的技術活用のケース紹介』はこちら>

画像: 革新的技術とデータで社会課題を解く。日立と東大の挑戦
【その1】「Lumada東大生研ビッグデータラボ」は“失敗できる実験場”

合田和生(ごうだ かずお)

東京大学生産技術研究所准教授。博士(情報理工学)。2005年、東京大学大学院情報理工学系研究科電子情報学専攻博士課程単位取得満期退学。日本学術振興会特別研究員、東京大学生産技術研究所産学官連携研究員、同特任助教などを経て現職。大規模データを対象とするシステムソフトウェア(特にデータベースシステム、ストレージシステム)の研究に従事。電子情報通信学会、情報処理学会、日本データベース学会、ACM、IEEE、USENIX各会員。

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