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駅空間のさらなる価値向上を追求する西日本鉄道株式会社(以下、西鉄)と、顧客接点の再構築を模索する西鉄旅行株式会社(以下、西鉄旅行)。この両社の挑戦に一つの可能性を提示したのが、対面と同等の安心感とオンラインの利便性を兼ね備えた日立の「汎用デジタル窓口」だ。駅という場での新たなサービス創出とリモートによる窓口対応を実現するこの新たな仕組みの可能性を、西鉄久留米駅に設置した実証ブースで検証した。

人々が集う「駅」に、さらなる利便性と収益性を

高度な都市機能が集積した九州経済圏の中心地・福岡市に本社を置く西鉄は、グループ経営を通じて福岡県内をはじめ九州各地で、鉄道やバス、不動産、流通、旅行など幅広い事業を展開している。その中核的な経営資源こそ、従来の交通拠点としての役割にとどまらず、沿線価値を高めるサービス拠点としての機能も期待されている「駅」だ。利用者の利便性と事業収益性をいかに両立させるかという駅のあり方は、同社の重要な経営テーマとなっている。

こうした課題意識のもと、近年西鉄では駅空間の新たな活用可能性を模索してきた。その方針について「駅が便利になってお客さまに選んでいただく中で、私たちは駅構内の設置物による付帯収入を得られて、事業者の方も利用者がいることで収益につながり、さらに利用者も移動以外のサービスを受けられる、という“三方よし”がめざす方向です」と説明するのは、同社鉄道事業本部の清海 圭一朗氏だ。

一方、長年にわたり鉄道やIT分野を中心に西鉄との関係を築いてきた日立が新たな駅空間の活用アイデアとして提案したのが、オンラインと対面の特長を組み合わせた「汎用デジタル窓口」だった。駅など利用者の生活圏に身近な場所に設置し、利用者と遠隔地の担当者が画面越しに相談・手続き対応できるこの仕組みは、駅という空間に新たなサービス機能を付与する強力なツールとなる。

失われていく高付加価値な対面接客の場

日立から提案を受けた西鉄は、汎用デジタル窓口の活用方法を探るべく、グループ内外の業務への適用検討に着手した。交通インフラを中心に多岐にわたる事業を展開する同社の顧客との接点は、駅や商業施設をはじめ広範に存在する。こうしたリアルな場とリモート窓口機能をどのように組み合わせ、新たな価値として具体化できるかという観点から、実際の業務内容に沿って適用先の検討が進められていった。

そのなかで浮上したのが、西鉄グループの一員である西鉄旅行だ。長年、対面接客を付加価値の高い営業基盤と位置づけてきた同社では、近年の消費者ニーズや市場環境の変化を背景にオンラインでのサービス提供も拡充。その一方で、固定費のかさむ店舗運営や人員配置のあり方にはなお課題が残っていた。

画像: 失われていく高付加価値な対面接客の場

西鉄旅行で旅行商品の企画販売やインバウンド事業などに携わる安部 稔氏は「OTA※1の台頭で来店されるお客さまの数も減り、リアル店舗は固定費の負担もあって厳しい状況です。一方で、高付加価値の商品やホスピタリティを求めるお客さまには、対面での対応が必要な場面もあります」と現状のジレンマを示唆する。実際、西鉄旅行ではリアル店舗の見直しが進められており、70年以上の歴史を持つ最後の一店、天神支店も2026年3月末に営業を終了した。

西鉄旅行が直面していた課題は、遠隔での接客を可能とする汎用デジタル窓口のコンセプトと親和性が高い。リアル店舗における「対面接客」の強みをリモートで再現し、従来とは異なる顧客接点を再構築する汎用デジタル窓口の可能性を精査するうえで、同社のビジネスはその検証の場として適していた。

そこで西鉄は、協議を通じて西鉄旅行を汎用デジタル窓口の適用先に選定し、同サービスの実証に向けた検討を本格化。対面での接客が付加価値を生む窓口業務を対象に、新たな顧客接点の可能性を検証する試みが始まった。

*1 Online Travel Agent(実店舗を持たずインターネット上で旅行商品の予約・販売を完結させる旅行会社)

さまざまな条件を見極めて、実証本番へ

汎用デジタル窓口の実証に向けて、まず検討されたのが設置場所だ。遠く離れた場所にも窓口機能を提供できるという本サービスの特性から、周辺に商業施設や営業所が少ない駅への設置も考慮されていた。一方で、乗降客が極端に少なければ実証が成立しないリスクもある。このバランスを踏まえ、一定の利用が見込めると同時に設置条件も満たせる駅として選ばれたのが、福岡県久留米市の中心部に位置する西鉄久留米駅だ。実証ブースの設置スペースは特に人流の多い中央改札口前で、駅利用者の動線が集中するエスカレーターの近くに確保できた。

また、実証期間についても関係者間で協議を重ねて入念に検討。短期間では認知が進まず、十分な検証に至らない可能性もあるため、土日祝日を含めた72日間に設定した。一定の期間を確保することで、サービスの存在が徐々に認知され、利用が広がっていく過程も含めて利用状況の推移を見極めるためだ。

こうした条件整理を踏まえ、ブース利用者にリモート対応する西鉄旅行では運用体制の設計を進めるが、最大の課題は接客要員の確保だった。「本来ならいつでも対応できる体制が望ましいのですが、専任スタッフの配置は難しかったので、予約に合わせて対応する運用としました」と安部氏は説明する。

その後も細やかな調整と準備を重ね、2025年11月、西鉄久留米駅を舞台にいよいよ汎用デジタル窓口の実証がスタート。約2か月に及ぶ綿密な実証を通じて、対面とオンラインの特性を兼ね備えたこの新たな接客スタイルは、どのような可能性と課題を明らかにするのか――。

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画像1: 西日本鉄道株式会社・西鉄旅行株式会社「汎用デジタル窓口」実証事業
【前編】人とつながるオンライン時代の新たな顧客接点

清海 圭一朗

西日本鉄道株式会社

鉄道事業本部 営業部 営業課 課長

画像2: 西日本鉄道株式会社・西鉄旅行株式会社「汎用デジタル窓口」実証事業
【前編】人とつながるオンライン時代の新たな顧客接点

安部 稔

西鉄旅行株式会社 取締役

九州営業本部 副本部長 兼 ソリューション営業部 部長

西日本鉄道株式会社

[所在地] 福岡県福岡市中央区天神1-11-1
[設立] 1908年12月17日
[従業員数] 約4,586名(2025年5月30日現在)
[事業内容] 中核事業である鉄道・バスなどの運輸業のほか、不動産、流通、物流、レジャー・サービスなど多角的に事業を展開

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西鉄旅行株式会社

[所在地] 福岡県福岡市中央区薬院3-16-26 西鉄薬院ビル
[創立] 1954年11月17日
[従業員数] 291名(2026年4月1日現在)
[事業内容] 国内・海外旅行の企画・販売、法人向け出張手配、運送・貨物代理業、スポーツ・イベント関連ツアーの企画運営など

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