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事業部の提案活動を支援する専門部隊、日立製作所のクリエイティブプロポーザルセンタ(以下、CPC)では、AIエージェントを活用した業務の高度化に取り組んでいます。今回は、CPCの榛葉 晃子と相馬 周一朗に、日々の業務における実際の活用ノウハウや生成AIを使う上で心得ておくべき点などを深掘りします。話を聞くのは、このAIエージェント開発からインプロセス化までをトータルに支援した日立製作所 AIアンバサダーの大山 友和です。

めざすのはコンシェルジュ的なAI

大山
日立のさまざまな事業部門の提案活動を支援するCPCでは、開発したAIエージェントを業務でどのように活用しているのでしょうか。

画像1: めざすのはコンシェルジュ的なAI

相馬
事業部から依頼が来たらすぐにAIエージェントの出番です。
AIエージェントのUIはシンプルなチャット形式となっていて、まず「A社に、日立のバリューを生かした提案を行いたい」などと入力します。AIはCPCが6つのフェーズと約50のアクションで構成された提案プロセスのフレームワーク([前編]に沿って活動を進めていることを理解していますので、私との会話のやりとりから、フレームワークのどのフェーズの手法を使えばいいかを判断し、レコメンドをしてきます。

例えば、お客さまとの長期的な信頼関係構築のためにお客さま分析などを行う「アカウントプラン」の支援であれば、現在のA社との関係性や、過去A社に提出した提案書や会議メモの内容をたずねてきます。そして同時に、AI自ら、A社の中期経営計画や直近の決算情報、最新のニュースリリースなどの基礎情報を収集します。
私との対話の中でAIエージェントは必要なアクションを積み重ね、集めた情報からA社の経営課題や競合状況、業界のトレンド予測、A社のホットボタンなど、アカウントプラン立案に必要な情報や洞察を出力します。それをアカウントプランのたたき台としてまとめ、事業部と戦略検討をする基礎材料とします。

アカウントプラン策定後も、お客さまの課題解決につながる最適な提案を決定するまで、全てのフェーズ、多様なアクションで私たちはAIエージェントを活用し、提案活動を支援します。

画像2: めざすのはコンシェルジュ的なAI

大山
私たちは、生成AIの適用が効果的なアクションをピックアップし、いくつものAIエージェントを開発しましたが、それら多数のツールの存在は、あえてユーザーから見えないようなUIにしています。

なぜかと言うと、仮に中途入社したばかりでCPC の標準フレームワークを理解できていない人であっても、「どうされましたか?」と始まる問いに答えていくだけで、自然に目的に向かって進める形が理想だからです。直観的に使えない——例えば、マニュアルを見ながらユーザーが自分がいるフェーズを判断してツールをその都度選ばなければいけないというようなUIでは、ストレスが多く、定着しないでしょう。
まだまだ完璧ではありませんが、めざすのは提案活動の困りごとにトータルに対応できるコンシェルジュ的なAIです。開発されたCPCのAIエージェントは社内イントラネットで公開されており、日立社員なら誰でも使うことができます。

画像: AIエージェントのUIのイメージ。対話の中でアクションを積み重ねていく。

AIエージェントのUIのイメージ。対話の中でアクションを積み重ねていく。

アウトプットの形式の重要性

大山
アカウントプランのフェーズで重要なアクションのひとつが、ホットボタン仮説の設定です。このアクションのアウトプットの形式については、議論を重ねました。

相馬
そうですね。お客さまのホットボタン——すなわち最優先関心事が何なのか、適切な仮説を設定することは、提案プロセスの中でとても重要なアクションです。
このアクションをAIに落とし込むとすると、AIに必要な情報を入力し、ホットボタン仮説を出力させる、というのがストレートなやり方ですが、これだとユーザーにはその回答の理由がブラックボックスとなってしまい、正誤の判断が難しくなる、という課題があります。

そこで、「お客さまの分身としてのAI」と「日立社員の視点を持つAI」、それぞれのペルソナを持つ2者のAI同士で議論させ、ホットボタン仮説をまとめさせる、というアウトプットを採用しました。これなら回答にたどり着くまでのストーリーが見えるから、ユーザーは回答が適切かどうか、容易に判断でき、方向修正の指示も的確に行えます。

大山
ホットボタン仮説の設定だけでなく、それぞれのアクションに応じたアウトプットを考え実現するのは、今回のプロジェクトで特に試行錯誤を重ねたポイントでした。

画像: ホットボタン仮説の設定でのアウトプットのイメージ。

ホットボタン仮説の設定でのアウトプットのイメージ。

変わりつつある業務のスタイル

大山
AIエージェントを活用してみて、どのような効果がありましたか。

相馬
まず、各アクションで初期分析や叩き台を瞬時に提示してくれるので、初期作業の効率化が実現でき、提案内容のブラッシュアップに注力できることで、提案の質や生産性向上につながっています。

また、AIエージェントを活用することで、提案プロジェクトごとに専門チームを立ち上げているような感覚で仕事ができています。A案件ではA案件用のAIエージェントを立ち上げ、議論とアウトプットを重ねていきます。AIエージェントはこれまでのコンテキストを全て覚えているため、都度状況を説明する必要はなく、まさにプロジェクトの一員として機能します。A案件用、B案件用、とAIエージェントを案件ごとに立ち上げることで、あたかもプロジェクトごとに専門チームと議論しているかのような生産性向上効果が得られます。

大山
AIエージェントは、心強いメンバーが新たに加わったイメージでしょうか。

相馬
提案のストーリーを考える専門メンバーをチームにアサインしているイメージです。AIエージェントと会話する際は、あまり悩まず、必要な情報や思いついたアイデアをチャットで入力すれば、その都度ストーリーをブラッシュアップしていってくれます。

また、提案活動が同時に複数走ることもよくあります。一つの案件で得た知見が別の案件にも役立つと気づいた時、すぐにエージェントを切り替えて、「この視点も加えて」と指示を出せば、瞬時に情報を更新してくれるので、迅速な横展開が可能です。さまざまな面でAIエージェントは変革をもたらしてくれています。

お客さまの価値を最大化する提案へ

大山
CPCのAIエージェントはさらなる進化の途中にありますが、今後どのような構想を描いていますか。

榛葉
CPCのフレームワークでは、フェーズごとにさまざまなドキュメントを成果物として作成しており、ドキュメントのテンプレートが多数あります。現在はそのテンプレートへの情報の入力は、AIエージェントが生成した回答を元に人が行っていますが、まずはそのプロセスを自動化し、さらなる効率化を進めたいと考えています。

一方で、AIエージェント活用の狙いは提案プロセスの自動化に留まらず、提案の質を高めることである、という点を強調したいと思います。AIエージェントはあくまで人を支援する存在であり、洞察を導くための情報をつかんでくるのも人ですし、最終的な意思決定を行うのも人です。今回のAIエージェントの導入によって業務効率化を進め、それによって生まれた時間を、お客さまをより深く理解する活動に充て、お客さまの価値を最大化する提案へとつなげていきたいと考えています。

画像: お客さまの価値を最大化する提案へ

大山
世界標準のベストプラクティスと日立の成功ナレッジが融合したCPCのフレームワークへのAIエージェントの適用。この取り組みはすべて、お客さまをより深く理解し、お客さまにとって価値の高い提案を行うことをめざすものです。
日立はこの取り組みを今後もさらに推進してまいります。ぜひ、ご期待ください。

「業務別!生成AI使いこなし術」一覧はこちら >

画像1: 業務別!生成AI使いこなし術 【第5回】提案活動支援部門編(後編)

榛葉 晃子(しんば あきこ)

株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit クリエイティブプロポーザルセンタ 部長代理

日立製作所に人社後、 IT関連の営業部門にて、公共分野向けAPP拡販および提案書作成業務に従事。 現在の部署に異動後は、特定案件の提案戦略を考えるプレ活動支援、価値を最大限伝えるための提案書作成支援などを提供。加えて、APMPのグローバル標準に基づいた提案活動のプロセス改革にむけ、提案プロセスやツール整備、社内向けセミナーなどの企画・運営を行う。

画像2: 業務別!生成AI使いこなし術 【第5回】提案活動支援部門編(後編)

相馬 周一朗(そうま しゅういちろう)

株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit クリエイティブプロポーザルセンタ 主任

日立製作所に人社後、IT関連の営業部門にて、産業分野の顧客を担当。OTからITまで幅広いソリューションの提案活動に従事。 現在の部署に異動後は、アカウントプラン作成時の新規オファリング検討支援から、特定案件の提案戦略を考えるプレ活動支援、価値を最大限伝えるための提案書作成支援などを提供。加えて、APMPのグローバル標準に基づいた提案活動のプロセス改革にむけ、社内向けセミナーなどの企画・運営を行う。

画像3: 業務別!生成AI使いこなし術 【第5回】提案活動支援部門編(後編)

大山 友和(おおやま ともかず)

株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit フロントサポートセンター チーフプランニングエキスパート
AIアンバサダー

コンサルティング部門にて、営業業務改革、新規事業の立上げなどに従事した後、日立コンサルティングにて、基幹業務システム構築などを担当。プロジェクトリーダーとして、システム企画・構築・運用全般を統括その後、営業バックオフィスを支える業務システム全般を統括。現在、営業部門の生成AI徹底活用プロジェクトの取りまとめとして、講演活動、ナレッジ蓄積、社内コミュニティ運営、人材育成などの取組みを推進中。

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