「【第1回】お客さまの課題に触れ、日立のクラウド&DXオファリングを育てる」はこちら>
「【第2回】お客さまに寄り添い、アプリケーションとインフラの両面からサポートする日立のモダナイゼーションコンサルティング」はこちら>
「【第3回 前編】アプリケーション開発のアジリティを高めるアジャイル開発と、マイクロサービスを最前線で支援」はこちら>
お客さまを最前線で支援するコンサルティングと、レガシーシステムのモダナイズの共通課題を解決する技術開発
杉原
日立のアジャイル開発コンサルティングサービスは、コーチングと、メソドロジーコンサルティング、そして協創メンバー提供という3つのアプローチを基本としています。コーチングでは、「認定スクラムマスター(CSM)※1」資格保持者をはじめとする日立の経験豊富な技術者がコーチとしてチームに加わり、実際のプロジェクトを進めながら、メンバーがアジャイルに関する知識や技術などを習得するためのサポートを行います。メソドロジーコンサルティングでは、企業や組織の役員や社員の皆さまにアジャイル開発の重要性を理解していただき、マインドセットの変革を促し、標準化に向けた規約策定の支援、DX拡大に向けて進捗度・課題の可視化から課題解決の支援などを行います。そして協創メンバー提供では、スクラムチーム※2に必要な「プロダクトオーナー補佐」「スクラムマスター」「開発者」を、お客さまのニーズに合わせて、要員を提供します。これらによって、よりスムーズなアジャイル開発の導入・定着を実現します。
西谷
Paxos Commitは、日立が長年培ってきたトランザクションの基礎技術に、分断耐性技術(Paxosアルゴリズムなど)として応用されている分散合意と呼ばれるテクノロジーを応用したものです。この世界でも類を見ないユニークな技術の開発を進めています。構造としては業務アプリケーション層から、例えば入出金などを扱うトランザクション制御層を分離し、トランザクション制御層には強い整合性を持たせるアルゴリズムを搭載しています。これによって、マイクロサービスを導入した場合でもリソース更新処理時に不整合が発生するほとんどのケースを防ぎ、これまで複雑になっていたトランザクション制御を、特別な知識や操作を用いずに簡単に扱うことができます。高い可用性、信頼性を発揮することで、従来のレガシーからよりアジリティの高いモダンなシステムへの刷新をめざしています。開発のねらいは2つあります。1つはレガシーシステムの刷新を促すことで、レガシー領域の保守費を低減させ、お客さまのDX推進を加速することです。もう1つはDX領域でも難しいとされる分散トランザクションをより簡単に扱えるようにすることで、分散トランザクションが必要な更新系システム(SoR型/準基幹系など)においても、変化に即応できるアジリティを実現できることです。
※1 スクラム関連の認定資格や研修プログラムを提供する国際組織Scrum Allianceが認定している資格。CSMは、Certified ScrumMasterの略
※2 短期間の開発周期で開発を進めるアジャイル開発手法のひとつである「スクラム」を実行するための数人から10人程度のチーム
最良の支援・本質的な課題を解決するというミッションに込める思い
杉原
私たち自身も、日立という組織の中でアプリケーション開発をウォーターフォールからアジャイル型に変えていくときに、とても苦労した経験があります。ですから、お客さまがどのようなことで悩み、どこで立ち止まってしまうのかといったことがよく分かります。その上で、さらにお客さまに寄り添い、お客さまの話をしっかり聞いて、現状を理解することを大切にしています。そこから私たちの持つケイパビリティーの中で提供できる最良の支援は何かという答えを探っていきます。単に、私たちにはこれができます、こういったこともできますよ、という提示ではなく、まずお客さまの立場になって直面している課題を明確にし、解決方法を模索し、自らの改革を進めるお客さまの組織の一員として、伴走し続けることを強く意識しています。
西谷
理論を突き詰め、汎用システムを開発することが私の仕事ですので、お客さまやほかの部署、社外の人たちとの接点は少ない傾向にあります。理論を突き詰めることによって、たとえば、アジャイル推進を妨げる本質的な課題を見つけ出すことができる可能性もあります。今回の分散トランザクションの課題がまさにそれでした。しかし、それはあくまでわれわれが導き出した仮説にすぎません。だからこそ私は、外を向こう、外に出ようと意識しています。今回の開発では最初、レガシーに関する社内の技術シードをマイクロサービスに応用できるのではという仮説を上司とともに立てました。それを自分たちだけで検証するのではなく、社外の有識者に意見を求めたり、お客さまの話も伺ったりしながら「それはいいんじゃないか」という手応えを得つつ仮説の検証と開発を進めてきました。不確実性が増している時代、課題や問題点も見えづらくなっています。私は、特にお客さまの中にある潜在的な課題を仮説に基づいて顕在化させて共有し、同じ方向を向いて開発に取り組むことが大切だと考えています。また、Paxos Commitは、今までにない理論によるものです。まだ知られていない、しかしこれからの主流になりうるプラットフォームを世の中に広げていくために、さまざまな学会やカンファレンスなどに積極的に参加し、その価値を広めていきたいと思っています。
今後の展望やめざす方向について
杉原
現在、GlobalLogic Japan※3のビジネスを推進するメンバーとして顧客協創にも携わっています。これは、お客さまとのワークショップを通じて、潜在的なユーザーニーズを見いだし、そこから新しいサービスやビジネスを創出するというもので、エンドユーザーを中心にした、デザイン思考、人間中心設計とも呼ばれています。私は、協創を通じてお客さまと一体になって得られた経験をもとに、日立のアプリケーション開発に携わる人財の中に、お客さまの新しい体験をデザインできるスキルを持った人たちを増やしていきたいと考えています。それを私たちの新たなケイパビリティーとして、アジリティを高めていこうとするお客さまに提供できるようになればと考えています。
西谷
これまでの開発から実感したことは、日立には、さまざまな分野で豊富な経験や知見をもった人財がいる、ということです。多様な人財と連携し、それらを新しい理論や技術要素と融合することで、変化の激しい時代に求められるイノベーションが起こせるのではないかと考えています。日立の中に埋もれている宝物を見つけるというか、知見の再発掘をやってみたいですね。私だけでつくり出せるものには限界があると思っています。一方で、これまで先輩たちが取り組み、積み上げてきた知見は大きな強みです。それらを新しい技術と結びつけ、次世代に生かせる新しい価値を加えていくことが、お客さまへの大きな貢献につながっていくのだと思います。
※3 日立の米国グループ会社GlobalLogicの日本法人(2022年4月設立)
「【第4回 前編】システム運用の自動化・標準化を推進するSRE。そのノウハウとプラットフォームを日本のお客さまへ」はこちら>
杉原 優子
株式会社 日立製作所
デジタルエンジニアリングビジネスユニット
アプリケーションサービス事業部
GLJapanビジネス推進本部 プロジェクト推進部 主任技師
●山口県生まれ ●大学では社会学を専攻●2008年 日立製作所入社、生産技術本部に配属 ●2009年までプログラム自動生成ツールの開発に従事 ●2009年から2018年まで日立の開発方法論HIPACEの整備を手がける ●2013年に日立の米国子会社の開発方法論調査のため渡米 ●2019年から2021年にかけてアジャイル関連サービスの企画と立ち上げに取り組み、アジャイル教育講師・コーチとして活動するとともに、アジャイル導入に合わせた社内制度整備のコンサルティングも手がける ●2022年よりGLJapanビジネス推進本部に席を置き、GlobalLogic※3とともに組織の立ち上げや顧客協創活動に従事、現在に至る
※3 2021年に日立グループに参入した、世界規模で先進的なデジタルエンジニアリングサービスを展開する企業
◎配偶者、二人のお子さんと暮らす、共働きのワーキングマザー。趣味は語学、幼児英語教育、キャンプ、読書、お子さんのポートレート撮影。最近の興味はDE&I(多様性を受け入れ、公平性を確保し、インクルーシブな思考を促進する活動)で、これに基づく社内活動にも参加している
西谷 淳平
株式会社 日立製作所
クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット
デジタルプラットフォーム事業部
ミドルウェア本部 技師
●秋田県生まれ東京育ち ●学生時代は情報工学を専攻 ●2007年に日立製作所入社、アプリケーションサーバーのCosminexusを担当 ●2018年 クラウドネイティブの先行調査のためクラウドビジネス推進センターに異動、クラウドマイグレーションの企画も手がける ●2021年マイクロサービストランザクションの検討・システム開発に着手、現在に至る
◎趣味は、学生時代からのテニス、そのほかにウエイトリフティング、マラソンを続けている。家族との時間を大切にするために趣味は早朝か夜に楽しんでいる。家族構成は、配偶者、お子さん二人とご両親。自分に性格が似ている長男が「このまま行くと、将来は日立に入社するかも」という妄想を抱き、ひそかな楽しみに。お客さまのため、開発チームのために、志向や意見の多様性を意識し、あえて“あまのじゃく”になることを自分に課している
他社登録商標
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