Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
日立の他事業所に先駆けて、2024年度のカーボンニュートラル達成を掲げた大みか事業所。脱炭素社会の実現をめざす「大みかグリーンネットワーク」でも、この目標達成に貢献する実証試験がスタートしました。カーボンニュートラル電源を含む多様な電力の調達システムと、再エネ・蓄電池などの分散電源の最適制御を担う製品を連携させてITとOTの力を高度に組み合わせ、より早期のカーボンニュートラル達成をめざします。

第3回 「CO2排出量データ収集基盤構築」はこちら>>
第4回 「サステナブルファイナンスプラットフォーム開発」はこちら>>
第5回 「電力系統解析サービス」はこちら>>

カーボンニュートラル達成に不可欠な電源構成

画像1: 大みかグリーンネットワーク
第6回:電源調達・制御の最適化でめざす再エネ導入促進と
大みか事業所のカーボンニュートラル(分散電源協調運用サービス)

株式会社 日立製作所
制御プラットフォーム統括本部
エネルギーソリューション本部
送変電制御システム設計部 主任技師
今野 博充

日立はその環境長期目標「日立環境イノベーション2050」において、2030年度までの全事業所におけるカーボンニュートラル達成を掲げています。一方で、旗艦工場として全社をリードする大みか事業所は、カーボンニュートラル達成の期限を他の事業所より6年も前倒しした2024年度とより高い目標を掲げました。

現在、大みか事業所は使用する電力の大部分を電力会社から購入しています。それらは基本的に化石燃料由来の電力のため、大みか事業所が他に先駆けてカーボンニュートラルを達成するためには、太陽光などの再生可能エネルギー(以下、再エネ)への着実な転換が必要です。しかし、大みか事業所の電力需要は膨大で、そのすべてを再エネだけでまかなうのは容易ではありません。

実証を担当する今野 博充は「例えば太陽光による発電量をさらに増やそうとする場合、ネックとなるのはパネル設置面積の制約です。となれば、大みか事業所のカーボンニュートラル達成には、事業所内の再エネに加えてカーボンニュートラル電力(以下、CN電力)を外部から調達する必要があります。この場合、従来の電源運用に加えて、外部調達したCN電力も含む分散電源の協調運用が欠かせません」と電源運用の高度化の必要性を説明します。また、同じく実証に携わる笹 朝博は「経済性の観点からは、CN電力を必要な量だけ可能な限り低コストで調達すること、そして調達した電力を過不足なく確実に消費することが重要です」とCN電力調達にともなうコスト・運用両面の課題を指摘します。

「調達」と「制御」の2つのフェーズでCNを最適化

画像2: 大みかグリーンネットワーク
第6回:電源調達・制御の最適化でめざす再エネ導入促進と
大みか事業所のカーボンニュートラル(分散電源協調運用サービス)

株式会社 日立製作所
社会システム事業部
エネルギーソリューション本部
デジタルソリューション部 技師
笹 朝博

こうした状況を踏まえて、大みかグリーンネットワークではCN電力の「調達」、そして分散電源の「制御」のそれぞれを最適に運用するための実証に着手しました。この実証では、経済的かつ効率的なCN電力調達を支援する「分散電源協調運用サービス」と、再エネと蓄電池などに加えCN電力を調達することによって複雑化した分散電源を最適に制御する日立エナジーの「グリッドエッジソリューションe-meshTM」(以下、e-mesh)を連携。カーボンニュートラル達成に不可欠なCN電力調達と分散電源管理の両方を組み込んだ統合ソリューションの確立に向けて技術やノウハウを検証します。

まず「調達」フェーズでは、分散電源協調運用サービスが日々変化する事業所の需要計画・太陽光設備の発電予測・オンサイトPPA(※1)運用制約・電力市場価格予測といった多岐にわたるデータをインプットに、シミュレーションを実施。JEPX(※2)やオフサイトPPAなどを介して調達するCN電力量の算出とそのコスト最適化を支援します。さらに「制御」フェーズでは、e-meshが購入したCN電力を正確に消費しつつ、事業所内の太陽光設備・蓄電池・オンサイトPPAなどの分散電源設備を最適なバランスでリアルタイム制御するシミュレーションを実施します。

※1 Power Purchase Agreement:電力販売契約。オフサイトPPAはPPA事業者が、電力を消費する需要家から離れた土地に再エネの発電所を設置し、発電した電力を需要家が所有する遠隔の需要場所に供給する契約形態。オンサイトPPAはPPA事業者が、電力を消費する需要家の施設と同一敷地内に再エネの発電設備を設置し、発電した電力を需要家に供給する契約形態。
※2 Japan Electric Power Exchange(一般社団法人日本卸電力取引所)

多様化する電源とこれからの電力運用

今後、大みか事業所では太陽光パネルの増設などに加えて、水素発電などの再エネ電源設備も積極的に導入していく方針です。これら多種多様な電源を対象としたシミュレーションと群管理を検証する今回の実証では、データに基づいて電源運用をシミュレーションするITと、そのシミュレーション結果に基づいて電源を制御するOTのシナジーが、新たな価値創出のキーファクターと言えます。

カーボンニュートラル社会の実現に向けて分散電源の導入がさらに加速していくなかで求められるのは、電源の種別や制約条件、日々変化するデータを常に意識しながら、状況に応じて電源を適正に運用することです。「つまりこれまで以上に、データやデジタル技術、そして電源制御の技術や知見が必要になる。電力運用の領域でも、ITとOTの連携はますます重要になっていくのではないでしょうか」と今野は言います。

画像: カーボンニュートラル電源利活用最適化シミュレーションの概要

カーボンニュートラル電源利活用最適化シミュレーションの概要

価値の輪を、地域、そしてバリューチェーンに広げる

今回の実証では、電力市場と大みか事業所の間に分散電源協調運用サービスが介在する「1対1」の関係でシステムを構築していますが、本サービスは「1対n」の関係での運用に対応したプラットフォームサービスです。笹は「例えば、一般的にVPP事業者は、自らが管理する複数のリソースや企業、事業所のデータを集約して市場から電力を一括調達し、それらを再配分することもできます」と、より広域・広範囲な適用に向けた分散電源協調運用サービスの拡張性を説明します。さらに、各自のFEMSと組み合わせて、分散電源協調運用サービスというプラットフォーム上に効率的な再エネ供給網を整備したり、取引先企業それぞれの複数電源化をサポートしたりする―。あたかも大みかグリーンネットワークがその輪を地域やバリューチェーンに広げるように、実証の発展的な将来ビジョンも見えてきます。

事業所の電力需要は、生産活動や気候変化によって大きく変化し、再エネ出力も季節や天気の影響を受けることから、今後も四季を通して本実証の有効性を検証していく予定です。その確かな成果を糧に、大みか事業所は2024年度のカーボンニュートラル達成というチャレンジングな目標に向けてまい進していきます。

第7回 「次世代EV充電器規格『CHAdeMO3』実証サイト構築」はこちら>>

関連記事

他社登録商標
本記事に記載の会社名、商品名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。

お問い合わせ先

株式会社 日立製作所 制御プラットフォーム統括本部

お問い合わせは、こちらから

This article is a sponsored article by
''.