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再エネ導入拡大を支援する電気利用の適正化実証
株式会社 日立製作所
制御プラットフォーム統括本部
エネルギーソリューション本部
送変電制御システム設計部
主任技師
門前 知幸
利用時にCO2を排出せず、化石燃料などの枯渇性エネルギーに比べ発電設備の建設・廃棄などを含むライフサイクル全体でもCO2排出量を大幅に低減できる再生可能エネルギー(以下、再エネ)。その導入拡大は、カーボンニュートラルの達成をめざしていくうえで、今後さらに加速させていくべき最重要課題のひとつです。
脱炭素社会の実現をめざす「大みかグリーンネットワーク」でも、再エネのさらなる普及に向けて現在いくつかの実証を推進しています。その1つが、大みか事業所内の電力系統において発生するさまざまな電気現象をシミュレーションするための解析モデル作成です。この解析モデルを活用して可視化した電力潮流(電気の流れ)の状態を詳細に把握することで、電圧変動や発電機の出力、燃費などを適正化することができます。
「これまで電気現象のデータ解析・シミュレーションは主に電力会社さま向けに提供してきましたが、今後は一般の工場などに向けたサービス提供も拡大していく方針です。そこで大みか事業所を舞台にした本実証を1つのモデルケースと位置づけ、企業の製造拠点などに適した解析モデル作成ノウハウや技術の獲得をめざしました」と今回の実証の企図を説明するのは担当者の門前 知幸です。
設備機器導入時の事前検証やBCPなどに適用
本実証で活用する電力系統解析サービスには、大きく2つの適用ケースがあります。まず、施設の新設や設備機器の導入時における事前検証です。対象となる工場などの施設全体をモデル化し、導入される各機器に必要な電気容量などの詳細を確認することで、必要以上のオーバースペックを排除し、適切な機器選定や施工をサポートします。
そして、もう1つのケースはBCPの一環としての緊急時シミュレーションです。既存の電気設備が事故や災害など不測の事態に直面した際にどのような電気現象が起こりうるか、解析モデル上での精緻なシミュレーションによる事前検証で、緊急時における工場稼働や事業継続のために必要な対策の立案を支援します。
なお、本サービスでもキーとなるのは、ITとOTの融合です。「高度なITを駆使した電力系統のデータ解析には、施設の電気配線図や機器の性能値などの調査・収集と、状況に応じたデータ変換や調整が必要ですが、その複雑で緻密な作業には電気を取り扱う現場で長年蓄積してきたOTの知見が欠かせません」と門前は言います。
サービス対象拡大で一般企業の再エネ導入を後押し
脱炭素化へ向けた本実証のアプローチとしてまず挙げられるのは、再エネ利用の普及拡大に向けたサポートです。例えば、既存の電力系統に太陽光や風力といった再エネを追加導入する際には事前検証に多大な労力を要しますが、本サービスが提供するモデル化とシミュレーションはその負担を軽減し、より円滑な再エネ導入が可能になります。
「机上の計算だけでは困難な細部の把握もきめ細かいシミュレーションによって可能になります」と門前は本サービスの優位性を説明します。
従来の電力会社から一般の企業にもサービスの対象を広げることを見据えて実施された今回の実証。「電力会社の大規模系統に対して、大みか事業所のような規模の工場に対するサービス適用は実績が少なかったので、本実証を通じて得られた知見は大変貴重です」という門前の言葉どおり、実証の成果は今後の効果的なサービス展開に大いに役立てられる予定です。
なお、脱炭素という観点からは既存設備におけるむだな電力消費を可視化し、それを低減することにももちろん意義があります。電力消費を減らせれば、当然その発電にともなうCO2排出量も削減できるためです。
さまざまな取り組みをリンクさせながら脱炭素社会をめざす
現在、日立は大みか事業所を含む近隣の4事業所でガスコージェネレーションシステムによるマイクログリッド型エネルギー供給サービスの導入計画を推進中です。4事業所をカバーするエネルギー供給網を構築することで、事業所ごとにエネルギーを供給する場合よりも電力や熱エネルギーを効率的に利用でき、CO2排出量も全体の約15%にあたる年間約4,500トンを削減することが可能となります。
また、大みか事業所内に多数設置されている太陽光パネルの増設や、次世代エネルギーとして注目される水素の本格活用に向けた実証、風力発電の導入など、再エネのさらなる利用拡大を見据えた新たな試みの事前検証にも本サービスを活用していく予定です。さまざまな環境・エネルギー施策や実証をつなぎ、連携させながら、大きな枠組みのなかでめざす脱炭素社会の実現。大みかグリーンネットワークをはじめとするチャレンジを通じて、日立はこれからもさまざまな環境課題の解決を追求していきます。
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