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GlobalLogicの「ラボモデル」によるトライアルプロジェクトで確かな手応えを得たIIJ。同社は全てのサービスで首尾一貫したユーザー体験の提供をめざし、複数の開発テーマが同時並行するクラウド事業の本格的な変革へとかじを切った。後編では、機動的なプロジェクト運営を可能にする同手法の本格運用の詳細や、国境を越えた協創体制の舞台裏を明かす。

(前編) 「わずか2週間でプロトタイプが」 IIJを驚かせた、仕様書に頼らないGlobalLogic“攻め”のアプローチ

 前編では、インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)がクラウド事業を変革するに当たり課題に直面して、その解決のためにGlobalLogicとの協創に乗り出した経緯を紹介した。

 後編では、本格的にスタートした変革の取り組み内容や成果、今後の展望などについて、前編に引き続きIIJの常務執行役員である染谷直氏とクラウド本部で副本部長を務める渡井康行氏、そして日立の協創拠点「Lumada Innovation Hub Tokyo」の責任者(Director)を務める福島真一郎氏に聞いた。

IIJ GIOのユーザー体験の高度化・平準化をめざす

 前編で触れた「ラボモデル」のトライアルプロジェクトを経て、GlobalLogicの提案力や開発力、モチベーションの高さを評価したIIJは、同手法の本格的な適用によるクラウド事業の変革へ向けて動き出した。

 まずは、同社の法人向けクラウドサービス「IIJ GIO」のユーザー体験を洗練させ、多様なサービスで首尾一貫した使い勝手を提供するための開発に着手したという。

 「当社はもともと、エンジニアの自由な発想の下でサービスを開発しながら成長した会社なのですが、急速な企業成長に伴ってユーザー体験がサービスごとに個別最適化され、一貫性の面で課題が生じていました。こうした点を改善して、全てのサービスにわたって共通のユーザー体験を提供できる仕組みをGlobalLogicと共に作り上げることにしました」(染谷氏)

 IAM(ID・アクセス管理)やログ管理、UI/UXなど、これまでサービスごとに個別に実装されていた機能を標準化して、IIJ GIO全体にわたって一貫したユーザー体験や開発体験を提供することをめざした。そのためGlobalLogicと共に進める開発では、機能ごとに分かれた複数のプロジェクトが同時並行で進められた。GlobalLogicのラボモデルの活用は、これらを円滑に運営する上で大きな成果を上げたという。

画像: 染谷直氏(インターネットイニシアティブ 常務執行役員 ネットワークサービス事業本部 副事業本部長、同クラウド本部長)

染谷直氏(インターネットイニシアティブ 常務執行役員 ネットワークサービス事業本部 副事業本部長、同クラウド本部長)

プロジェクトの優先順位の変更に柔軟に対応 ラボモデルの効果

 ラボモデルは、複数の開発テーマのプロジェクトが同時並行する中で、都度、優先順位を調整しながら人的リソースを動的に入れ替えて柔軟に対応する。渡井氏によれば、これによって開発の自由度がかなり高まったという。

 「チーム内の限られた人的リソースをうまく融通させながら、複数の案件を同時並行で回す手法は、これまで当社でも実施してきました。一方これを外部パートナーに適用するのは、契約や開発スコープの制約があって難しかったのですが、GlobalLogicのラボモデルにはそうした制約がないので機動的なプロジェクト運営が可能でした」

 プロジェクト間の優先順位を変更したい場合、新たに優先度を上げるプロジェクトに必要なメンバーをGlobalLogicがすぐにアサインして、その代わり優先度を下げたプロジェクトをホールド。優先度を下げたプロジェクトは完全にストップするわけではなく、限られたリソースの中でスピードを落として継続する、といった具合だ。

 「このように非常に柔軟にメンバーをアサインしてもらえるので、『新しく思い付いたアイデアを試したい』といったチャレンジにも気軽にトライできるようになりました」(渡井氏)

 福島氏によると、このラボモデルという独自のプロジェクト運営手法はGlobalLogicが持つ大きな強みの一つで、準委任やSESといった従来型の開発スタイルの契約に付き物の制約を解き放ってくれる可能性を秘めているという。

 「契約スコープを厳密に定義し過ぎると、状況に応じた突発的な変更への対応が難しくなりがちです。かといってスコープを曖昧にすれば、要件の抜け漏れや成果物のミスマッチを招きかねません。その点、GlobalLogicのラボモデルは、同一契約内でリソースをやりくりしながら、ビジネスの状況変化に伴うスコープや優先順位の変更に柔軟に対応できます」

CEE地域と日本の両拠点でプロジェクトマネージャーが連携

 今回のプロジェクトにGlobalLogic側から参加したのは、同社のウクライナ(GlobalLogic Ukraine)を中心とするCEE(Central and Eastern Europe:中東欧)地域のメンバーたちだった。現地のメンバーは日本語が話せず、IIJ側のメンバーも決して英語が堪能なわけではなかったため、まずは互いに言葉の壁を乗り越える必要があった。

 ここで大きな役割を果たしたのが、GlobalLogicの中での日本とCEE地域の体制だ。オフショア開発では往々にして、言語の壁だけではなく文化の違いが原因でコミュニケーションに行き違いが生まれ、結果的にプロジェクト全体のスムーズな運営が損なわれてしまう。しかし今回のプロジェクトでは、CEE側にGlobalLogicの現地チームを束ねる日本語が堪能なバイリンガルのプロジェクトマネージャーを置き、現地のメンバーと密接にコミュニケーションを取っている。

 これに加えて、GlobalLogic JapanのプロジェクトマネージャーがIIJのステークホルダーに対する窓口となり、顧客の意図と現地側の認識のズレを最小限に抑えた。GlobalLogic Japanのプロジェクトマネージャーは、IIJのそばで密にコミュニケーションをとることで、定例会議での発言などからくみ取りきれないIIJのニーズや期待を確認。そこで引き出した潜在的なニーズをCEEのプロジェクトマネージャーと連携することで、IIJと現地チームの間の期待値にギャップが出ないようにサポートしている。

 渡井氏はこの体制について、「GlobalLogic の日本とCEE側の双方に、日本の商習慣のコンテクストが分かるプロジェクトマネージャーが入ったことで、プロジェクト全体の進捗(しんちょく)スピードを向上させられました」と語る。

年数回行われている対面での打合せの様子

 さらには、GlobalLogic側から投げかけられる活発な提案や質問に素早く対応するために、IIJ側のキーパーソンである渡井氏自身が週2回のGlobalLogicとの打ち合わせに毎回出席。意思決定者として、その場でタイムリーに“即断即決”しているという。

 「特に案件の立ち上げフェーズは方向性を適切に見定める必要があるので、毎回必ず出席します。プロジェクトのアジリティーを損なわないためではありますが、GlobalLogicが非常にレベルの高いメンバーを毎回そろえてくれるので、これに応えるために当社側も相応の体制を整えるべきだと判断しました」(渡井氏)

画像: 渡井康行氏(インターネットイニシアティブ ネットワークサービス事業本部 クラウド本部 副本部長 クラウドサービス部長)

渡井康行氏(インターネットイニシアティブ ネットワークサービス事業本部 クラウド本部 副本部長 クラウドサービス部長)

協創を通じて学んだ「GlobalLogic Way」が社内に新たな風を呼び込む

 GlobalLogicとの協創の成果は、早くもさまざまな領域で花開きつつある。すでにIAMやログ管理の新機能は正式リリースまでこぎ着けており、現在もIIJ GIOの多様な機能を強化するプロジェクトが進行している。

 「GlobalLogicと共に開発したこれらの新機能を、IIJ GIOのサービス全般に適用することで、共通のユーザー体験を提供したいと考えています。また今後、新たなテクノロジーが台頭してきた際も今回のようにUXを共通化しておけば、背後のテクノロジースタックを入れ替えても同じユーザー体験を担保できるはずです」(渡井氏)

 こうした顧客向けの成果以上に同社が実感しているのが、GlobalLogicとの協創が社内にもたらしたインパクトだ。エンドユーザーのUXを向上させるだけでなく、サービス横断で同じ仕組み(共通基盤)が利用可能になれば、開発者体験の改善につながる。その一例として渡井氏は、テスト(QA)工程における自動化の取り組みを挙げる。これまで手動で行っていた処理を自動化してコードに落とし込むことで、リリースサイクルの短縮につなげる狙いだ。サービス開発での効率化と品質向上、双方でシナジーが生まれようとしている。

 人財育成の面でも成果が表れつつある。IIJ側のプロジェクトメンバーがGlobalLogicとの協創を通じて、これまで経験したことがなかった高いモチベーションや課題意識、スピード感に触れる機会に恵まれて急速に成長を遂げていると渡井氏は語る。

 「当社の若手メンバーをラボモデルのチームに参画させることで、GlobalLogicの先進的な開発手法を直接学んでもらっています。今後は、そこで培ったスキル、知識、ノウハウを当社の他のチームに横展開しながら、社内へ良い影響を波及させてほしいと考えています」

AIを活用してサービス開発、運用の高度化をめざす

 なおIIJのクラウド事業変革はまだ途上にあり、現在もIIJ GIOの機能強化プロジェクトが複数、同時並行で稼働している。今後もそれらを推進すると同時に、染谷氏は「これからはAIを用いた企業力の強化に、より一層力を入れたい」と抱負を述べる。

 「当社には優れた技術力を持つエンジニアが多数在籍しており、これまでは彼らの生み出す優れたサービスが事業の成長を支えてきました。これからは、そうした『個の力』を『企業の総合力』に転換して、さらなる成長をめざします。その鍵として、AIの有効活用も加速させたいと考えています」
 渡井氏も、今後人財不足が深刻化すると予想される中、限られたリソースでサービスの安定稼働を担保するためにもAIの力が欠かせないと語る。

 「インフラ運用に失敗すると、お客さまのビジネスに多大な損失を与えてしまう可能性があるので、AIのような先端技術の適用には慎重にならざるを得ません。しかし、もしAIをうまく活用できれば、人財不足の課題を解決する切り札にもなり得ます。その点、日立さんは社会インフラの分野で豊富な実績をお持ちですから、アイデアやノウハウの共有に期待しています」

 こうしたIIJの期待に対して、福島氏は「IIJ GIOのようなミッションクリティカルなサービスに対するAIの適用は、安全性を担保するためのセーフティーネットと、AIの先進機能で得られるメリットとのバランスを適切に見極めることが大切です。まさにこの点で、日立とGlobalLogicはこれまで培ってきた経験を生かしながら、安全かつ利便性の高いAIソリューションを提供できます」と答え、来るべきAI時代においてもGlobalLogicがこれまでと同様に顧客に高い価値を提供できることを強調した。

画像: 福島真一郎氏(日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部 経営戦略統括本部 Lumada & AI戦略本部 Lumada Collaboration LIHT Director 日立認定デザインシンキング・イニシアティブ(プラチナ))

福島真一郎氏(日立製作所 デジタルシステム&サービス統括本部 経営戦略統括本部 Lumada & AI戦略本部 Lumada Collaboration LIHT Director 日立認定デザインシンキング・イニシアティブ(プラチナ))

 システム開発にとどまらず、IIJの企業カルチャーをも変革して「個の力」を「企業の総合力」に転換する契機となったGlobalLogicとの協創プロジェクト。日立とGlobalLogicがもたらした先進的な開発手法とマインドは、同社の未来を開く大きな原動力になるだろう。

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