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利用者視点で画面や操作性を検証しながら、試作と改良を繰り返した札幌市と日立による健康アプリ開発。そしてプロジェクトは、アプリの愛称命名やモニター調査といった市民との共同作業を経て、いよいよ大きな節目となる本稼働に向けて進んでいく。

「第1回 健康づくりを“続く仕組み”に変える挑戦」から読む >

ネーミングから始まった市民参加

今回の健康アプリという取り組みは、単に完成したサービスを市民に届けるものではなく、構想の段階から市民と一緒に作っていくものとして位置付けられていた。その考え方を最初に体現したのが、アプリのネーミングだ。札幌市はこの健康アプリの愛称を、行政サイドで決めるのではなく、市民から広く案を募るという形を選んだ。これには、サービス提供前から市民にもこのプロジェクトと関わってもらいたいという札幌市の姿勢が反映されている。

公募に対して寄せられたネーミング案は合計550件。20~30件程度という札幌市の当初の想定を大きく上回る市民からのこの大きな反響は、行政からの一方通行の発信となりがちな健康施策にあって、市民がこの健康アプリを自分たちのものとしてとらえ始めた兆しとして受け止められた。

最終的に選ばれた“アルカサル”という名称は「つい歩いてしまう」といった意味の北海道の方言に由来する言葉だ。誰かに強制されるのではなく、気づくと自然にそうしてしまう状態を表す。このネーミングについて、札幌市保健福祉局で本事業を所管した横谷 大二郎氏は「歩行を前面に出した愛称にして、“歩くこと”を強制されるアプリだと受け取られるのは避けたいと思っていました。そういう意味でも良い名前になったと思いますし、市民の皆さまからの評判も上々です」と胸を張る。こうした取り組みを経て、札幌市は実際の利用場面を見据えた検証へと歩みを進めていった。

画像: ネーミングから始まった市民参加

想定を大きく超えた市民からの反応

アプリの開発が一定の段階に達した時点で、札幌市は単なるデモや説明会ではなく、日常生活のなかで実際にアプリを利用してもらい、その操作性や体験を検証する市民モニターを実施。そこで得られたのは、プロジェクトチームを驚かせるような、市民からの想定以上の反応だった。

アプリの利用対象を、高齢者も含めた40歳以上に設定してモニター参加者を募ったところ、当初予定の100人を大きく上回り、幅広い年齢層から3,000件近い応募が寄せられた。最終的には世代や属性のバランスを考慮し、550人の市民がモニターとして参加。実際にアプリを使った高齢者の声から、「操作が難しいのではないか」という行政側の先入観が必ずしも当てはまらないことも明らかになる。

市民モニターのこうした反応について、「こちらの想定以上に高い評価をいただけました。世代を問わず、分かりやすい、使いやすいという声が多く、9割の方が本番リリース後も使いたいと回答されています。まずは、スタートとして及第点を取れたという手応えを感じました」と振り返るのは、札幌市保健福祉局でサービスの運用検討を担った吉田 望氏だ。

画像1: 想定を大きく超えた市民からの反応

一方、アプリ開発をとりまとめた日立の谷地田 瞬は「市民モニターからの反応は開発側にとって大きなインパクトがありました。実際に使われる環境やデバイスが想定以上に多様で、幅広い利用を前提にした設計の難しさや、アプリの精度をもう一段高めていく必要性を強く感じています」と開発パートナーの立場から市民の声を受け止める。

画像2: 想定を大きく超えた市民からの反応

こうした操作性などの評価にとどまらず、市民モニターは健康アプリが実際に対象者に行動を促すことも明らかにした。モニター期間中の歩行量が有意に増加するなど、その実効性まで確認できたことは大きな収穫だったという。

データの力で、施策を育て続ける

2026年4月、「札幌健康アプリ“アルカサル”」は本稼働を迎える。だがそれは完成したサービスの提供を意味するのではない。市民モニターで寄せられた声を起点に、運用を通じて見えてくる課題や改善点を丁寧に拾い上げながら、育てていく取り組みとして位置付けられている。

行政施策として重要なのは一時的な話題性や短期的な効果の追求ではなく、市民の日常という長期的な時間軸のなかで無理なく使われ続けることだ。市民の利用状況や反応を継続的に把握・確認しながら、必要に応じて施策を見直していくその積み重ねこそが、健康づくりを“続く仕組み”として定着させる鍵になる。

さらに将来的には、アプリに蓄積される利用データや、健康・医療データとの連携を通じて、施策の成果をより客観的にとらえていくことも視野に入る。こうした考え方について、「アプリのいいところは、取り組みの結果をデータとして蓄積してエビデンスとして活用できる点にあります。それなら、効果的な施策を見極めながら取捨選択し、優先順位をつけて進めていける。市民と一緒に育てていくなかで、時間をかけて徐々に広がっていく形をめざしていきます」と横谷氏は語る。同氏はまた、個人の幸福を対人関係のなかでとらえるウェルビーイングに対する日立の考え方に、このアプリがめざす姿と通じるものを感じていたとか。高齢者と地域のさまざまな人々をつなぐ接点として、“アルカサル”が人と人との関係性を広げる役割を果たしていくことに期待を寄せる。

プロジェクトが一貫して重視してきたのは、単に完成度の高いサービスを作ることではなく、市民の日常のなかで使われ続けるかどうかという一点だった。その目標に向けて試行錯誤と創意工夫を重ねた末に、間もなくサービスインの日を迎える札幌健康アプリ“アルカサル”。健康づくりのその先に市民のウェルビーイングまでも見据えた札幌市と日立の協創は、ここからが本番だ。

画像1: 札幌健康アプリ“アルカサル”開発プロジェクト
第3回 協創が導くウェルビーイングへ

横谷 大二郎(よこやだいじろう)
札幌市保健福祉局
高齢保健福祉部 調整担当課長

1995年入庁。区役所、保健福祉局、交通局、病院局などで、国民健康保険、介護保険、システム開発、人事労務などに携わり、2023年より現職。

画像2: 札幌健康アプリ“アルカサル”開発プロジェクト
第3回 協創が導くウェルビーイングへ

吉田 望(よしだ のぞむ)
札幌市保健福祉局
高齢保健福祉部 調整担当課 調整担当係長

2007年入庁。区役所、教育委員会、保健福祉局で、生活保護や高齢者施設の整備、計画の策定、庶務などに携わり、2023年より現職。

画像3: 札幌健康アプリ“アルカサル”開発プロジェクト
第3回 協創が導くウェルビーイングへ

谷地田 瞬(やちだ しゅん)
株式会社日立製作所
北海道支社 社会システム第二営業部 公共システムグループ 部長代理

北海道の自治体や警察、大学等の公共ITビジネスを牽引する営業マネージャー。構想策定から事業化まで一貫して推進し、データとデジタルを起点に健康やまちづくりの社会課題解決に尽力。官民連携による事業創出を強みとし、日立グループの総合力を生かしたウェルビーイング向上と持続可能な社会イノベーションを推進。地域に寄り添い、デジタルを通じた新たな価値創出と社会課題の解決に取り組んでいる。

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