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高齢者の健康づくりをいかに日常の行動や社会参加と結び付け、持続的な施策として実装していくか――。財政制約や制度疲労といった課題も浮上するなか、札幌市は従来の枠組みを見直し、シニア層にも浸透しつつあるスマートフォンの健康アプリを軸とした新たな健康施策に踏み出した。日立との協創を通じて、運用や効果検証までを見据えた取り組みが動き始めている。

高齢者の社会参加を促す新たな健康施策へ

少子高齢化が急速に進むなかで、高齢期における健康づくりをどのように支えていくかは全国の自治体にとって共通の課題だ。人口減少が進む社会では、要介護状態に至る前の段階から高齢者の生活を支えていくことが、将来にわたって都市としての持続可能性を保つためには不可欠だと認識されている。

こうした認識のもと、約195万人の人口を擁する北海道の中枢都市・札幌市では、以前から健康寿命の延伸を重要なテーマのひとつとして位置づけ、関連する取り組みを進めてきた。その姿勢は、第2次札幌市まちづくり戦略ビジョンに掲げる「ユニバーサル」「ウェルネス」「スマート」という3つの重要概念とも重なり、市民一人ひとりが健康で生き生きと暮らし続けられる都市像に通じている。

札幌市は健康政策の推進にあたり、健康診断や運動といった個別の取り組みにとどまらず、日常生活のなかでの人との関わりや外出の機会といった社会参加の要素にも目を向けてきた。その具体策のひとつとして、同市では1975年から敬老優待乗車証制度(以下、敬老パス)を実施し、福祉施策の一環として高齢者の外出や交流を後押ししている。

しかし、近年になるとさまざまな課題も顕在化する。
「少子高齢化の進行にともなう財政面の制約に加え、敬老パスの利用も一部の方に偏りやすく、高齢者の健康や生活を漏れなく支えられているとは言い切れない状況が見えてきました」と説明するのは、札幌市保健福祉局で健康づくり施策の推進を担う横谷 大二郎氏だ。そこで2023年、札幌市では限られた予算のなかで、より多くの高齢者が自発的に関わり、健康づくりの行動変容につながり得る新たな健康施策の検討に着手した。

画像: 高齢者の社会参加を促す新たな健康施策へ

健康づくりを身近な行動と結び付ける

新たな施策の具体化にあたって札幌市が意図したのは、人々の日常的な行動のなかに自然に組み込まれる仕組みだった。これについて、施策の具体化を検討した札幌市保健福祉局の吉田 望氏は「歩くことや健康管理、人と会うことを、それぞれ別の行動としてではなく、日常のなかでのつながりとして連携させることを意識しました。そうした行動を無理なく後押しする手段として、健康アプリという形が最適ではないかと考えたのです」と語る。

画像: 健康づくりを身近な行動と結び付ける

札幌市が構想したスマートフォン向け健康アプリは、歩行や健康診断の受診、地域活動への参加など、日々の生活での健康づくりに関わる行動を可視化し、ポイントで評価する仕組みだ。ためたポイントの電子マネー等への交換といったインセンティブを通じて、健康づくりを「やらされる活動」ではなく、楽しみながら自発的に参加したくなる行動へと転換する契機となる。

また、健康施策は制度化されても、その利用が一部の人々に偏ったり、行政側の負担が過大になったりすると継続的な実施が難しくなる。そこで札幌市は構想段階から、参加のしやすさに加えて都市の規模に見合った運用の現実性や継続性も重視していた。

こうした構想の実効性を確かめるため、同市では検討過程で全国各地の自治体を視察。参加率や運用負荷、制度の持続性といった観点から先行事例を比較検討した。その結果、大都市でも無理なく運用でき、生活行動そのものを健康づくりにつなげる手段として、健康アプリが最も現実的な選択肢だという確信を強めていく。そしてその実現に向けて検討されたのが、開発パートナーの選定だった。

日常の行動を起点に将来まで見据えた提案

検討段階ですでに健康アプリの導入方針は固まっており、札幌市は開発パートナー選定にあたって、価格面と事業構想や実現プロセスを重視する一般入札総合評価を採用した。その選考の判断基準について横谷氏は「健康寿命の延伸は短期間で成果が出るものではなく、アプリや制度を作って終わりではありません。事業の方向性を理解したうえで、運用や検証まで含めて伴走してくれる姿勢を重視しました」と振り返る。

複数の提案のなかで札幌市が注目したのが日立の提案だった。日立は新たな健康アプリの制作から、その後の活用・検証までを一体でとらえた構想を提示。また、民間事業者と連携し、市民が普段立ち寄る店舗や施設といったリアルな場を活用しながら、健康づくりの行動を後押ししていく構想も盛り込まれていた。

さらに日立の提案には、自治体が保有する健康・医療データを活用し、施策の評価や効果測定を支援する構想も含まれていた。その意図について「アプリを通じた活動が将来どう健康につながったのかを測る指標を持つことが重要だと考えました。アプリ導入率のような表面的な数値だけでなく、健康・医療データを用いて中長期で事業を評価していく視点を盛り込んだ点が今回の提案のポイントです」とプロジェクトを担当した日立の谷地田 瞬は説明する。

画像: 日常の行動を起点に将来まで見据えた提案

こうした構想理解と、運用・検証までを見据えた姿勢が評価され、札幌市は日立を開発パートナーに選定。両者は実際の利用場面を意識しながら、健康アプリの開発に着手した。

「第2回 利用の場面を起点にした開発プロセス」はこちら >

画像1: 札幌健康アプリ“アルカサル”開発プロジェクト
第1回 健康づくりを“続く仕組み”に変える挑戦

横谷 大二郎(よこやだいじろう)
札幌市保健福祉局
高齢保健福祉部 調整担当課長

1995年入庁。区役所、保健福祉局、交通局、病院局などで、国民健康保険、介護保険、システム開発、人事労務などに携わり、2023年より現職。

画像2: 札幌健康アプリ“アルカサル”開発プロジェクト
第1回 健康づくりを“続く仕組み”に変える挑戦

吉田 望(よしだ のぞむ)
札幌市保健福祉局
高齢保健福祉部 調整担当課 調整担当係長

2007年入庁。区役所、教育委員会、保健福祉局で、生活保護や高齢者施設の整備、計画の策定、庶務などに携わり、2023年より現職。

画像3: 札幌健康アプリ“アルカサル”開発プロジェクト
第1回 健康づくりを“続く仕組み”に変える挑戦

谷地田 瞬(やちだ しゅん)
株式会社日立製作所
北海道支社 社会システム第二営業部 公共システムグループ 部長代理

北海道の自治体や警察、大学等の公共ITビジネスを牽引する営業マネージャー。構想策定から事業化まで一貫して推進し、データとデジタルを起点に健康やまちづくりの社会課題解決に尽力。官民連携による事業創出を強みとし、日立グループの総合力を生かしたウェルビーイング向上と持続可能な社会イノベーションを推進。地域に寄り添い、デジタルを通じた新たな価値創出と社会課題の解決に取り組んでいる。

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