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静岡県におけるポリファーマシー対策支援で、日立は、データ分析だけで終わらない、地域の実情に寄り添った提案を行っている。得られたデータを県や市町に還元し、関係者への丁寧な情報共有を通じて、地域での実運用に至るまでを支援している。第6回では、事業の実行にあたって、分析項目の設定や報告・研修の設計を、有識者とともに戦略的に進めた手法を探る。前編に引き続き、静岡県病院薬剤師会会長 渡邉 学氏、ひたちなか総合病院 TQM統括室経営支援センター長 関 利一氏、本件を推進する日立製作所 田浦 善弘、大崎 高伸の4名に話を聞いた。

「第5回 静岡県のポリファーマシー対策支援、日立のノウハウに現場の知見を掛け合わせることで地域に即した支援を実現」から読む >

投薬の現場の視点を追加 初期段階で論点・視点をすり合わせ

今回の静岡県におけるポリファーマシー支援事業は、日立にとって全国で3例目となる。本取り組みでは、日立が他県での取り組みで培ったノウハウや、関氏の知見をベースとしつつ、投薬の現場を知る渡邉氏の助言を取り入れた。これにより、新たな調査項目の追加など、より実態に即した効果的な分析・調査が可能になったという。

渡邉氏の助言により新たに調査項目に加わった薬剤の一つが、抗菌薬だ。
抗菌薬はさまざまな疾病の治療のために処方されるため、意図せず重複しやすい傾向にある。渡邉氏は「多くの種類を併用することは本来望ましくなく、幅広くさまざまな菌に効く薬よりも病気の原因となる菌にピンポイントで効く薬を的確に選択すべきものです。また、下痢や風邪など、抗菌薬を使わない方が望ましい場合もあります」と指摘する。

画像1: 投薬の現場の視点を追加 初期段階で論点・視点をすり合わせ

日立の大崎は、「渡邉先生の薬剤師としての助言により、『抗菌薬は国から適正使用が求められているものの、実際の医療現場では複数の病院や薬局が関わるため、不適切な処方を防ぐことが難しいケースもある』という実情を、明確に認識することができました」と述べる。

画像2: 投薬の現場の視点を追加 初期段階で論点・視点をすり合わせ

さらに、日立の田浦は、「データ分析の前の収集の段階から、どの疾患、どの薬剤、どの地域差に焦点を当てるべきか、渡邉先生や関先生と綿密に議論を行いました。問題の本質と着目点を初期段階で明確にできたことで、調査自体も非常に有意義なものにできたと考えています」と説明する。

地域の実情を加味した精緻なデータ分析により、より具体的な施策が可能に

渡邉氏の助言を踏まえた調査項目を設定し、実際に投薬、患者数などのデータの収集・分析を行ったところ、特に興味深い結果が得られたという。「静岡県ですでに実施されているさまざまな先行施策について、実施している地域と実施していない地域とで、はっきり異なるデータが出たのです」と関氏は指摘する。

中でも特徴的な結果が出たのが腎機能に関する分析結果だという。
CKDシール*1を活用する取り組みが実施されている地域では、腎機能低下時に避けるべき薬剤が正しくコントロールされている感触があったが、実際に数値としても差があった。
他にも、バイオシミラー(バイオ後続品)*2の置換率について「0%の地域がある一方で数十%置換している地域がある」という大きなばらつきがあることが判明した。
この背景には、病院の運用、薬局チェーンの方針、地域連携の差などの複合的な要因が考えられる。

重要なのは、こういった差が可視化されることで、「どのステークホルダーに働きかけるべきか」が明確になる点だという。
この結果をもとに、「実際に取得したデータの分析結果と、それに対する先生方の解釈、効果的だと思われる施策をまとめることができました。将来的に県民の健康を守るための具体的な施策を静岡県にご提案できたことは、とても有意義だったと考えています」と大崎は述べる。

*1 CKDシール 医療機関や薬局での迅速な情報共有と適切な医療の提供を支援する目的で、患者さんの腎機能の情報を示すシール。
*2 バイオ医薬品の特許が切れた後に、他の製薬会社から発売される薬で、特許が切れた薬と同じように使うことができる医薬品。

多角的な支援を実施―保健師向けワークショップなどを開催

さらに本事業では、住民に身近な市町の保健師を対象としたワークショップも実施している。
ワークショップでは、「ポリファーマシーとは?」の説明から始まり、残薬整理の進め方、腎機能に応じた注意薬剤などのほか、経済的な観点からも、地域との協働で患者さんに良質な療法を提供すること(地域フォーミュラリ)が重要である点を共有した。
ワークショップの事後アンケートでは「県内の課題を具体的に知ることができた」といった前向きな反応を多く得られたという。

また、保健指導時に患者さんやその家族に対して、具体的になぜ該当する薬にリスクがあるのかをわかりやすく説明できるような説明資料も作成中で、今後、実際の活用方法を県・市町と議論していくという。

関氏は「今回の分析結果を根拠として、静岡県としても、県全体、病院、薬剤師会、医師会などにさまざまな働きかけを行っていただけるようになるのではないかと思います。多くのステークホルダーを巻き込むことにより、問題解決に向けたさらなる多角的アプローチが可能になるのではないでしょうか」と期待を寄せる。

CKD関連の課題に対しては、「啓発・対面指導に使える説明資料も整備した」と田浦も続ける。

田浦
「服薬指導時に、患者本人やそのご家族に対して、その薬に具体的にどういったリスクがあるのかを、健康状態や服薬状況なども踏まえてわかりやすく説明できるよう、わかりやすさを重視した一枚ものの説明資料を作成しました。実際の活用方法は今後、県、市町との議論で決めていく方針となっています」

画像: 多角的な支援を実施―保健師向けワークショップなどを開催

さらに、医療費削減の面からも、ポリファーマシー対策への期待は大きい。
例えば、腎機能の低下により、特定の医薬品投与で病状が悪化する恐れのある患者に対し、適切な対応ができた場合は、100億円規模の医療費の削減につながる試算もあるという。

今後の展開

今後の展望として、関氏は、医療データに健診データを掛け合わせた分析について期待を寄せる。

関氏
「医療データだけでなく、健診データも含めて継続的に追っていくことで、非常に有益な知見が得られると見込んでいます。データを長期的に連動させて分析することで、将来的に特定の病気を発症する可能性の高い人を、事前に把握できる時代が来るかもしれません。特定の兆候を捉え、適切な薬剤投与や介入を行うことで、その病気の進行を抑えられることが理想的です。
そのためには、健診データを安定的に取得・蓄積できる基盤と、それを医療データと組み合わせて分析する仕組みが不可欠です。こうした「予測医療」の可能性をこれからも追究していきたいと考えています」

画像: 今後の展開

日立は、ポリファーマシー対策支援事業を他の都道府県にも広げ、全国の健康増進や医療費削減に貢献していく考えだ。

「国保ヘルスアップソリューション」記事一覧はこちら >

画像1: 国保ヘルスアップソリューション:ポリファーマシー対策
第6回 データと現場の知見を掛け合わせより深い支援を実施

渡邉 学(わたなべ まなぶ)

静岡県病院薬剤師会 会長 兼 社会医療法人駿甲会法人本部 医療技術部部長、薬剤師、第一種衛生管理者、博士(薬学)

2001年コミュニティーホスピタル甲賀病院 薬剤科長に就任。2023年 静岡県病院薬剤師会 会長に就任。静岡県薬事審議会 委員、一般社団法人日本病院薬剤師会 理事、医療法人好生会 理事、社会医療法人駿甲会 社員なども兼任。

画像2: 国保ヘルスアップソリューション:ポリファーマシー対策
第6回 データと現場の知見を掛け合わせより深い支援を実施

関 利一(せき としいち)

株式会社日立製作所
病院統括本部 経営企画部 担当部長 兼 ひたちなか総合病院 TQM統括室 経営支援センター長兼 公益社団法人茨城県薬剤師会 副会長

日立製作所入社後、病院薬剤師として勤務。薬局長を約18年勤める中で、病院データを集約するデータ管理センター長に就任。電子カルテからの病院データを利活用する中で、ひたちなか総合病院の経営分野に関与、現在、病院統括本部経営企画部で活動している。

画像3: 国保ヘルスアップソリューション:ポリファーマシー対策
第6回 データと現場の知見を掛け合わせより深い支援を実施

田浦 善弘(たうら よしひろ)

株式会社日立製作所
公共システム事業部 公共ソリューション推進第二本部 公共ソリューション推進第七部 主任技師

日立製作所入社後、システムエンジニアとして勤務。国や自治体の基幹系システム開発や導入、データとデジタル技術を活用したデータヘルス分野のソリューション開発等に従事。現在は主任技師として、プロジェクトを取り纏めつつ、デジタルの力で医療・健康分野の価値創出に貢献することをめざしている。

画像4: 国保ヘルスアップソリューション:ポリファーマシー対策
第6回 データと現場の知見を掛け合わせより深い支援を実施

大崎 高伸(おおさき たかのぶ)

株式会社日立製作所
研究開発グループ SUSTAINABILITY INNOVATION R&D ヘルスケアイノベーションセンタ デジタルヘルスケア研究部 主任研究員
博士(工学)

日立製作所に入社後、研究部門にてヘルスケア情報システム、ヘルスケア情報の分析・利活用に関する研究開発に従事。健診・レセプトデータを活用し、主に生活習慣病を対象としたリスク分析、予防プログラム、介入施策の効果分析のための技術開発とともに、保険者・自治体における疾病予防、健康づくりの支援を行っている。

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