メンバーそれぞれの背景文化が異なる横断プロジェクト
——今回のソリューション開発において、ハードルになったポイントはどこですか。
坂本
クラウドAIの分野では、コンポーネントの高度化が着実に進み、それらの組み合わせによって実現できることが日々広がり続けています。一方で、実際の業務への適用はまだ途上であり、各コンポーネントをどのようにチューニングすれば最適に連携できるのか、ベストプラクティスがまだ確立されていないのが現状です。
今回私たちが開発を進める中でもさまざまな課題が浮上しましたが、その一つひとつに対して日立の各部門の専門家や、藤原さんをはじめとするNetAppのエキスパートの知見、さらにAWSの支援を得ながら一つひとつ解決してきました。
お客さまには「オンプレミスデータ利活用ソリューション for Hybrid Cloud」を適用いただくことで、こうした複雑な調整を伴わずに、クラウドAIを迅速に安心して活用いただけます。
——今回はNetAppと日立共同のソリューション開発です。実際にはさまざまな調整があったのではないでしょうか。
飯塚
オンプレミスデータをクラウドAIにつなぐ仕組みづくりについては、NetAppと日立それぞれの強みを掛け合わせればより良いものをお客さまに提供できると、当初から確信はありました。
ただこのプロジェクトは、企業間の横断はもちろんAI、クラウド、ストレージなど複数の領域も横断する取り組みです。日立の中でも、私はクラウドSI、坂本さんはストレージSI*¹と、それぞれ異なる専門部署から参画しており、そして藤原さんはNetAppに所属するプロダクトサイドの方です。そのため、メンバー間では視点や知識の違いはもちろんのこと、開発スタイルや業務文化、使用する用語にも差異があり、お互いの領域について知らないことも多くありました。それらをすり合わせて、ひとつのものを作り上げていくという点では、やはり苦労はありました。
*¹ 企業のデータ特性や業務要件に応じて、適切なストレージ基盤を設計・構築し、データの保存・保護・活用の高度化を支援するシステムインテグレーション。
——領域ごとに異なる知識や文化の違いを、どのようにすり合わせていったのですか。
藤原氏
プロジェクトの立ち上げで、飯塚さんが「『こんなことを聞いていいのかな』と思わずに何でも話し合って進めていきましょう」と呼び掛けてくれて、それでコミュニケーションの敷居がグッと下がったように思います。私はJapan AWS User Group*²でストレージ専門支部(Storage-JAWS)の運営メンバーを務めていますので、そこで得た知識を、今回の取り組みに直接関係がないように思えても、参考になるかもしれないと積極的に発信していきました。
日立の皆さんは、技術力の確かさはもちろんのこと、一つのことを協力し合って粘り強く高品質な形に仕上げる力に秀でていて、今回まさにその強みが発揮されたと感じています。
*² Japan AWS User Group(JAWS-UG):AWSのユーザーが自主的に運営する、日本最大級のクラウドコミュニティ。
飯塚
私は入社2年目で、知識も経験もまだ浅い中、技術検証のリーダーを務めました。「こんなことを聞いていいのかな」と思ったのはきっと私が一番だったと思います。ストレージSIを取りまとめてくれた坂本さんも入社4年目で、今回のプロジェクトは若手中心の体制でした。若手主体であることによる難しさもありましたが、一番若手の私が臆せず発言していくことで、発言しやすいフラットな雰囲気も生まれたと感じています。メンバーの技術力の高さはわかっていたので、私としては、それぞれの専門的な知見をひとつのテーブルに集め、議論できる環境を整えることに注力しました。
今回は企業・組織横断型のプロジェクトではありますが、それぞれの強みと想いが明確なため、場とゴールを用意することで、自然と新しいアプローチにも取り組むことができました。クラウドAIという未知の領域に挑む今回のプロジェクトにとって、結果的にとても良い環境を整えられたと思います。
AI活用のすそ野を広げるきっかけに
——このソリューションによって、お客さまのビジネスはどのように変わるでしょうか。
藤原氏
金融、公共、医療、製造、研究など、さまざまな分野の企業・組織が、契約データや技術資料、研究成果、さらには制御装置の運用記録といった機微な非構造データをオンプレミス環境で厳重に管理しています。その中で、これらのデータを活用するためにオンプレミス上にAI基盤の構築を検討するも、多大なコストと労力が伴うため踏み出せずにいる企業が少なくありません。これは結果として、データが「埋もれている」状況です。
その時に本ソリューションを使えば、これらのデータを安全かつ簡便にクラウドへ連携でき、組織はAIが生み出す新たな価値をすぐに活用することができます。オンプレミスやクラウド環境において、安全性や使いやすさよりも最新モデルや先端技術の追求を優先して作り込んだAI基盤を「パリコレ(パリ・コレクション)」に例えるなら、慣れ親しんだ手法で手軽に導入できるこのソリューションは、「ファストファッション」のような存在かもしれません。
坂本
今回の取り組みを通じて、参画したメンバーそれぞれが新たな知見を得て、技術の幅を一段と広げることができました。今回は主に4領域──AI、クラウドSI、ストレージSI、データインフラ──の強みを持ったメンバーの掛け合わせでしたが、日立は他にも多くの強みを持っています。これからもお客さまの課題に応じて、人や技術を掛け合わせ、より自由で柔軟なデータやAIの活用を提案してまいります。
飯塚
今回のソリューションが、AI活用のすそ野をさらに広げる一歩になればと考えています。いま社会では、労働力不足や熟練者の知識継承の難しさ、社会インフラを支える現場の負荷増大など、さまざまな課題が表面化しています。AIは、こうした問題に真正面から応える確かな手段であり、その活用が広がれば、多くの人々が煩雑な作業から解放され、自分らしさを発揮できる創造的な仕事に力を注げるようになると確信しています。
今回のソリューションにとどまらず、私たちは、そうした未来の実現に向けて、組織の垣根を越え、さらにNetAppをはじめとする幅広いパートナーの皆さまと協力し合いながら、データやAI活用のユースケースを幅広い業種・業務で生み出していきたいと考えています。

飯塚 彩(いいづか あや)
株式会社 日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット
マネージド&プラットフォームサービス事業部
クラウドエンジニアリング本部 クラウドデリバリプラットフォーム部
2024年入社以降、公共顧客向けのクラウドSIに従事。本プロジェクト(NetAppと共同開発をしたオンプレミスデータ利活用ソリューション for Hybrid Cloud)では技術検証のリーダーとして推進。

坂本 翔 (さかもと しょう)
株式会社 日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット
マネージド&プラットフォームサービス事業部
クラウドエンジニアリング本部 クラウドデリバリサービス部
マイクロサービス基盤向け分散トランザクション管理ミドルウェアの開発や某官公庁向け次世代基盤更改案件の推進などに従事。2024年からはNetApp製品をはじめとした社外製品を活用したプラットフォームSI事業を担当。

藤原 善基 (ふじわら よしき)
ネットアップ合同会社 AWS SE Support シニアクラウドソリューションアーキテクト
ネットアップ合同会社のSr. Cloud Solutions ArchitectとしてAWS SE Supportを担当。AWS Community Builder 2023(Storage)および2024-2025(Cloud Operations)に選ばれ、2024-2025 Japan AWS Top Engineers(Software)にも認定。生成AIでのデータ活用、ランサムウェア対策、仮想化環境のAWS移行/拡張に注力。過去には物流業の営業、コールセンターオペレーター、SIerのインフラエンジニアなど多岐にわたる経験を持つ。ギリシャで幼少期を過ごし、国際的な視野を持つ。
本記事に記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。
関連リンク
オンプレミスの非構造データをクラウドAIで活用するための「オンプレミスデータ利活用ソリューション for Hybrid Cloud」について、入社2年目で技術検証リーダーを務める飯塚彩さんに伺いました。








