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日立製作所(以下、日立)では、営業部門の生成AI徹底活用に向け、「生成AI推進リーダー育成ワークショップ」をはじめとする多彩な施策が進行中です。これと連動し、公共システム営業統括本部(以下、公共営)は「生成AI活用ワーキンググループ」を設置。全社的な取り組みを生かしながら、独自の実践を進め、顕著な成果を挙げています。そのリーダーとして活動する公共営の石渡 充に、AIアンバサダーの大山 友和が話を聞きました。

生成AIから離れてしまった層を呼び戻す

大山
公共営では「生成AI活用ワーキンググループ」を立ち上げて、全社施策をうまく取り入れながら、業務の効率化にめざましい成果を上げています。まず、石渡さんがこのワーキンググループを立ち上げた経緯について教えてください。

石渡
おおよそ2年前のことです。日立全体で生成AIを利用できる環境が整いつつありました。私は、当時営業業務に関する生成AIの試行に携わり、普及に一定の手応えを感じていました。その後、正式な生成AI環境がリリースされましたが、今回改めて活用状況を調査したところ、リリース当初と比較し、利用の勢いがやや落ちていました。減速した理由をヒアリングなどで探った結果、当時は生成AIの性能がまだ十分でなく、「試してみたものの期待した結果が得られず離れてしまった」層が一定数いることが分かりました。このため、対策の必要性を上層部とも共有し、活用促進のため、今年の2月に各部からエバンジェリストを一人ずつ選出し、約20名から成る「生成AI活用ワーキンググループ」を立ち上げたのです。

大山
「離れてしまった層」にもう一度関心を持ってもらうために、どのような施策を実施しましたか。

石渡
生成AIの有用性を実感してもらうことに主眼を置き、まずエバンジェリストには、自部門業務に即したユースケースを作成・共有することをタスクとしました。また、ちょうどその頃、大山さんが主催する「生成AI推進リーダー育成ワークショップ*」の開催を知りました。ユースケース創出の実践的手法や、そのインプロセス化のためのアクションプラン策定法などを学べるとのことだったので、「これを活用しない手はない」と考え、エバンジェリストたちにも参加してもらいました。修了後にはワーキンググループで勉強会を開き、学びを共有し合ったことで、ユースケース創出スピードが一気に加速しました。

ユースケースをどのようにして活用促進につなげるか

大山
作ったユースケースを活用するための施策も必要ですね。

石渡
仰る通りです。ユースケースを作り、共有しただけではなかなか使ってもらえません。そこでエバンジェリストには、初心者だけのランチ会や気軽に集まれる勉強会、オンラインの体験セミナーなど、それぞれの部門に合ったスタイルで体験イベントを定期的に開いてもらいました。

社内には、エバンジェリストが作成したユースケースはもちろん、大山さんの部署が全社向けに整備した生成AIユースケースのテンプレート集や、目的に応じてプロンプト作成を支援してくれるエージェントなど、体験に活用できるリソースが豊富にありました。こうした環境のおかげで、各部門で多彩な取り組みを展開することができたと感じています。

さらに、現場での生成AI活用から生まれた気付きや発想を、互いに共有できるようなイベントも実施しました。
公共営独自に、Copilotのユースケースを40種類程度掲載したポータルサイトを立ち上げ、各部ごとにこのユースケースの活用数を競い合いました。この取り組みでは、ゲーム感覚で楽しみながら生成AIを利用しつつ、ユースケースを使って得た効果や学びを投稿できる仕組みを用いました。これにより、初心者層の活用定着を後押しする取り組みになったと思います。

画像: ユースケースをどのようにして活用促進につなげるか

大山
2025年2月に発足したワーキンググループですが、2025年9月時点ではどのような成果が得られていますか。

石渡
現在では、業務で生成AIを継続活用している人が全体の9割を超え、部門によっては100%の定着率を達成しています。ユースケース創出数は44件に達し、これらすべてを活用することで、業務時間を21.6%も削減できる余地があることが分かりました。

全社的な施策と公共営の活動が連動

石渡
この成果は、大山さんの展開する全社的な施策と、私たちの活動がうまく連動した結果だと思います。

大山
私はAIアンバサダーとして、生成AIの活用を広げるためのさまざまな施策を展開していますが、私のチームだけで日立全社へ浸透させるには限界があります。そうした中、皆さんが自発的に躍動感ある取り組みへと広げてくださっているのは、本当にありがたく思います。

公共営の推進プランは、口コミを生む仕組みがきめ細かく用意され、活動を拡大しやすくなっていると思います。まず、初期拡散を起こすエバンジェリストを各部に一人ずつ配置し、エバンジェリストは業務に即した、真似したくなるユースケースを、ランチ会などでメンバーと共有する。そして、メンバーがそこで得た気付きを誰かに伝えたくなったら、ゲーム要素を取り入れたイベントで、楽しみながら拡散する。とても戦略的に設計された仕掛けだと感じます。

また、エバンジェリストが自部門業務に寄り添ったユースケースを作り、それを浸透させるやり方も各部に任せていますが、このやり方も良いですね。自分の組織で作られていないものを受け入れたがらない心理を「NIH症候群*1」といいますが、その払しょくにもつながると思います。

*1 NIH症候群:Not Invented Here Syndrome

画像: 全社的な施策と公共営の活動が連動

石渡
実際に、各営業部門ごとで、担当するお客さまや業務の流れも異なります。そのため、一度生成AIから離れてしまった人たちに再び関心を持ってもらうには、それぞれの業務にぴったりのユースケースを、自部門のエバンジェリストが勧めることが不可欠だと考えていました。また、大山さんたちが全社向けに整理した汎用的なユースケースも、エバンジェリストが自部門の業務に合わせて咀嚼し直せば、新たな活用の動機になるはずだとも信じていました。

今回、エバンジェリストたちがそれぞれの部のメンバーと緊密に接してくれたことも、一定の成果を上げることができた大きな要因だと考えています。

能動的ユーザーをいっそう活性化させる

石渡
メンバーの熟練度が高まるにつれ、生成AIを自発的・能動的に活用する層が着実に増えてきています。今後はこの層をさらに広げるだけでなく、営業業務の生産性向上を実現するため、業務の中で特に時間を要している作業を5項目ほど洗い出し、それぞれに対応するユースケースを重点的に磨き上げていく方針です。能動的ユーザーがいっそう活性化することで、これまで生成AIに慎重だった層にも波及効果が生まれると考えています。

大山
能動的ユーザーをさらに活性化させるためには、一人ひとりが主体的に情報を発信できる仕組みを整えることも有効な手段だと思います。自ら発信する行動は、自分ごと化を促し、組織全体の学習スピードを高めるとともに、プロジェクトの熱量を持続させる効果もあります。さらに、その姿勢は周囲の慎重派ユーザーにも良い影響を与え、参加を後押しするきっかけになるでしょう。

石渡
以前、大山さんより、心理的ハードルの低い“遊び感覚”の企画がもっとあってもいいかもしれない、とのお話をいただいたことがあります。それを受け、一例として、生成AIを用いて自部門イメージを表現する企画「ゆるキャラ作成コンテスト」を立ち上げた本部もありました。このような取り組みが、カジュアルに生成AIを楽しんでもらうための第一歩になると考えています。

実は私も、はじめから生成AIに強い関心があったわけではありません。大山さんたちとかかわるなかで、社内外で硬軟さまざまな生成AIの情報に触れるようになり、気付けば自分も能動的なユーザーの一人になっていました。これからも多くの層に届くよう、さまざまなアプローチを展開していきます。

大山
次回は、公共営の「生成AI活用ワーキンググループ」において創出されたユースケースから、代表的なものを紹介したいと思います。

業務別!生成AI使いこなし術【第6回】公共システム営業統括本部編(後編)はこちら >

「業務別!生成AI使いこなし術」一覧はこちら >

画像1: 業務別!生成AI使いこなし術
【第6回】公共システム営業統括本部編(前編)

石渡 充(いしわたり みつる)

株式会社 日立製作所
公共システム営業統括本部 第二営業本部 第五営業部
部長

入社以来、公共システム営業統括本部にて公共分野のソリューション提案に従事。主に顧客内の事務処理系システムやテキスト検索系システムの提案を行う。2021年に水営業統括本部へ異動し、全国上下水道の顧客向けにIT技術やセンシングを用いて顧客業務DXを支援するための提案に従事。2023年に公共システム営業統括本部に戻り、同本部内に生成AI活用WGを立ち上げ、営業業務効率化に向けた生成AIの適用を検討する活動を推進中。

画像2: 業務別!生成AI使いこなし術
【第6回】公共システム営業統括本部編(前編)

大山 友和(おおやま ともかず)

株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit フロントサポートセンター チーフプランニングエキスパート
AIアンバサダー

コンサルティング部門にて、営業業務改革、新規事業の立上げなどに従事した後、日立コンサルティングにて、基幹業務システム構築などを担当。プロジェクトリーダーとして、システム企画・構築・運用全般を統括その後、営業バックオフィスを支える業務システム全般を統括。現在、営業部門の生成AI徹底活用プロジェクトの取りまとめとして、講演活動、ナレッジ蓄積、社内コミュニティ運営、人材育成などの取組みを推進中。

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