共創による観光DX実証が香川・小豆島でスタート
近年多様化している旅行ニーズへの対応や地域経済の活性化などに向けて、デジタル技術で旅行体験や観光産業のあり方を変革していく観光DXが注目を集めています。こうしたなか、「交流創造事業」を事業ドメインに掲げるJTBと日立は、瀬戸内海に浮かぶ自然豊かな香川・小豆島を舞台に、デジタルチケッティングシステムによる観光DX実証事業を開始しました。
2025年8月から10月末までの92日間にわたって実施されるこの実証は、小豆島内に点在する複数の観光スポットとフェリー、路線バス、タクシーなどの交通機関を対象とする周遊企画券サービス「tebu-Ride PASS(テブライドパス)」の有効性や運用性などを検証する試み。舞台となる小豆島は、JTBが推進している20年先を見据えたエリア開発事業の対象地で、船舶やバス、タクシーといった2次交通*¹の重要性が高い「島」という地理的特性などから実証の地に選定されました。

日立が設計・開発・実装を担ったデジタルチケッティングシステムは、専用アプリに利用者の顔写真とクレジットカードなどのユーザー情報を登録したスマートフォン*²で、各種交通機関への乗降や、観光施設への入場、買い物などを完結できる仕組み。移動履歴をもとにバス運賃や施設利用料を算出し、顔認証による決済情報と合わせて事業者向け入金データと利用者向け請求データを生成できるほか、利用料金や利用施設に応じて割引なども適用可能です。紙のチケットやバウチャーなどを持ち歩く必要がなく、日常的に携帯するスマートフォン1つで旅をシームレスに楽しむことができます。
*1 空港や鉄道駅といった交通の拠点から、観光地などの最終的な目的地を結ぶ交通手段
*2 実証段階ではiOS端末のみ(Android端末等非対応)
ビーコン技術で乗車券購入や運賃支払いの手間を軽減
実証初日となる2025年8月1日、報道関係者向けのサービス体験会が現地で実施されました。真夏の日ざしが降り注ぐ体験会当日、体験会参加者たちは小豆島の土庄港に集合。その後、まず参加者一行は事前登録を済ませたスマートフォンアプリによる路線バス「小豆島オリーブバス」への乗車を体験しました。このバス乗降時のキーデバイスとなるのが、GPS*³と異なり屋内や地下での利用に強く、高精度で近距離の位置を特定できるビーコン(無線装置)です。参加者のスマートフォンアプリがビーコンからの電波を受信することで、対象者の位置をリアルタイムで取得できます。

今回の実証では、対象路線のすべてのバス停とバスの車内にビーコンを設置。参加者がバス停に近づくとビーコンを受信したスマートフォンに見せ券が表示されます。この日も体験会参加者がバス停に近づくと、スマートフォンの見せ券の画面には「土庄港」というバス停名が表示されました。さらに、この画面上でバスに乗車する人数を選択して、アプリを起動した状態でバスに乗車。移動中、バス車内に設置されたビーコンからの電波を受信したスマートフォンの見せ券の画面には「オリーブバス車両」と参加者の位置情報が表示されました。
*3 Global Positioning System
セキュアな決済サービスを支える日立独自の生体認証技術
体験会参加者が最初にバスで向かったのは、約2,000本のオリーブを栽培する「小豆島オリーブ園」。1908年の試験栽培以来、日本のオリーブ栽培発祥の地として知られる小豆島の南に位置する同園には、樹齢100年になろうかというオリーブの原木が残っており、オリーブ加工場やギャラリー、レストランやショップも併設されています。
バスが最寄りのバス停に到着すると、参加者はスマートフォン画面の見せ券を運転士に提示して降車。この時、バス停に設置されたビーコンが発信する電波をスマートフォンが受信し、乗降したバス停間の運賃が確定します。
続いて小豆島オリーブ園で参加者が体験したのが、園内の物販店「オリーブショップ」でのキャッシュレス決済による買い物です。まず、参加者から「tebu-Ride PASS」利用の旨を伝えられた店舗スタッフが、店のタブレット端末の画面に表示された支払いボタンをタップ。次にタブレットで利用者の顔を認証し、参加者がタブレット画面に4桁のPINコードを入力し、スタッフが金額を入力して確定ボタンをタップすると買い物が完了しました。


このキャッシュレス決済に利用されている顔認証を実現するのが、日立独自の生体認証技術です。日立が開発した公開型生体認証基盤(PBI*⁴)技術は顔の特徴など生体情報を復元できないデータに変換することで、データの漏えいや偽造、悪用などを未然に防ぎます。
*4 Public Biometric Infrastructure
なお、島北西部の山腹に立つ「小豆島大観音」も今回の実証に参加。観音様の内部最上階から小豆島と瀬戸内海を一望できる人気のスポットで、ここでも顔認証とPINコード入力で拝観料を確定し、入観できます。
「第2回 デジタル技術とデータ活用で進化する旅のかたち」はこちら>
株式会社JTB
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