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プロトタイプ完成を経て、日立とオカムラの共創は次のステージへ。オフィスから病院、学校へと広がる「ありがとう」の輪は、社会のインフラとなり得るのか。キーパーソンたちが描く未来構想に迫る。

日立製作所(以下、日立)が開発した「CO-URIBA」は、もともと無人店舗ソリューションだった。しかし、感謝のメッセージとともにクーポンを贈り合える「ありがとう機能」が実装されたことで、組織のウェルビーイングや従業員エンゲージメントを高めるユニークな仕組みとして注目を集めている。現在、日立はオフィス家具開発やオフィス空間づくりを手掛けるオカムラとタッグを組み、CO-URIBAを中心とした共創事業を推進中だ。

前編では、両社が共創に至るまでのドラマと、異業種タッグならではの困難を乗り越え、「オカムラ版CO-URIBA」ともいえるプロトタイプを完成させるまでを追った。後編では、その核心である「ありがとう機能」がもたらす本当の価値、そして両社が見据える“ウェルビーイングの未来”について、キーパーソンたちが語り合う。

幸福度97% 数字が証明した「ありがとう」の効果

西本:前編では、CO-URIBAの「ありがとう機能」および「ありがとうクーポン」が偶然の産物から生まれた、という話をしました。じゃあ実際に、これら機能を備えたCO-URIBAにどういう効果があるのか? ここについてはオカムラさんにもPoC(前編参照)で実感してもらえたと思いますが、従業員間で自然と「ありがとう」が循環するようになるんですよね。結果的に従業員の自己肯定感や心理的安全性が高まって企業全体のウェルビーイングを高める効果が生まれます。

画像: 小貫絢子さん(オカムラ 開発創造本部 フューチャービジネス企画部 クリエイティブディレクター)

小貫絢子さん(オカムラ 開発創造本部 フューチャービジネス企画部 クリエイティブディレクター)

小貫:CO-URIBAを自社に導入する場合、クーポンを福利厚生として従業員に配布するという施策が検討できると思います。通常であれば、このような施策は従業員がそれを受け取った時点で完結しますよね。でもCO-URIBAは、支給されたありがとうクーポンを社内で贈り合う仕掛け――つまり前編で西本さんがお話ししていたように「贈った側にもインセンティブがある」ことで感謝の気持ちが組織内で循環し、人の気持ちをつなぎ合わせる。これはオラムラで実際に体験して「とても斬新だな」と感じた部分でした。

西本:CO-URIBAが、企業や組織のウェルビーイングを高める効果があることは日立社内のアンケート結果でも確認済みです。具体的には、CO-URIBAの設置後に約5000人を対象にアンケートを実施しました。その結果、96%が「コミュニケーションが活性化された」と回答し、さらに97%が「幸福度が上がった」と答えてくれたんです。過去、これほどの成果を挙げた福利厚生施策はなかったので驚きましたね。

佐藤:従業員同士が感謝の気持ちを伝え合うことは、ウェルビーイングを高める上でとても重要です。でも、日々の仕事に追われていると、ついつい感謝の気持ちを伝えるのを忘れてしまう。CO-URIBAの「感謝を伝える」というコンセプトは、そういった誰もが「大事だ」と分かっているのに、つい見過ごしてしまう部分を、うまくすくい取るものだと思いますね。

会社の垣根を越える 日本文化に根差した新しい贈り物のカタチ

小貫:オカムラ社内でCO-URIBAを試用した際も、ありがとうクーポンを従業員同士が贈り合うことで「相手との関係性が深まった」というポジティブな声が多く寄せられました。個人的には「ありがとう」以外にも、「お疲れさま」「応援しているよ」「ごめんね」といったように、いろいろな気持ちを伝え合えるようになるとさらに面白いツールになるのではないかと思っています。

西本:それは面白いアイデアですね! 「ありがとう」はウェルビーイングを高める効果がありますが、一方で「応援しているよ」というメッセージを従業員が受け取ることで、企業に対する愛着やエンゲージメントが高まる効果が期待できるかもしれません。

画像: 砂口和紀さん(オカムラ 開発創造本部 フューチャービジネス企画部 クリエイティブディレクター)

砂口和紀さん(オカムラ 開発創造本部 フューチャービジネス企画部 クリエイティブディレクター)

砂口:そうやって「ありがとう」だけでなく、さまざまなコミュニケーションや“つながり”に関する課題が出てきたときに、「それならCO-URIBAがありますよ」と、すぐに提案できるソリューションにしていきたいですよね。

西本:今や「ウェルビーイングやエンゲージメントを高めることは企業にとって大事だ」というメッセージは、さまざまな場面で言及されています。しかし、残念ながら「ポーズ」に見えてしまっている例も散見されます。僕らはDXを推進する専門家として、そうした「感謝の効果」をきちんとデータで分析し、企業の成長につなげていきたい。単なるポーズで終わらせるつもりはありません!

小貫:そういえば以前、西本さんから私たちオカムラの従業員宛てにありがとうクーポンを贈ってもらったことがありましたね。まさか企業の垣根を越えてクーポンを贈ってもらえるとは思っていなかったので、あれにはオカムラ一同、(感動で)震えました(笑)。

西本:そうなんです。CO-URIBAは同じ企業、組織内だけではなくて企業間でも感謝を送り合えるんです。違う企業の人同士だと、いくら付き合いが長くても面と向かって感謝の気持ちを伝え合う機会ってあまりないですよね。双方の企業がCO-URIBAを導入していれば、ありがとうクーポンを介してカジュアルに感謝の気持ちを伝え合うことができます。

これって日本の贈り物の文化にも似ているし、日本企業と非常に相性がいい機能だと思うんですよ。この感謝の循環が何万人、何十万人と広がっていけば、社会全体の幸福度も上がるんじゃないかと本気で思っています。

CO-URIBAのシンボルの下でさまざまな出会いをプロデュースしていく

小貫:今後は、オフィスだけでなく、町や公民館といった人々の生活に近い場所にも展開したい、という野望を持っています! 従業員同士から企業同士へ、そして最終的には社会全体へと「ありがとうの輪」が広がる。CO-URIBAには、それだけの力があると思います。

画像: 西本友樹(日立製作所 金融システム営業統括本部 事業企画本部 One Hitachi事業推進部 部長)

西本友樹(日立製作所 金融システム営業統括本部 事業企画本部 One Hitachi事業推進部 部長)

西本:実は、CO-URIBAは既に病院や学校にも導入してもらっているんですよね。病院では、過酷な環境の中で奮闘する医療従事者の皆さんに対して、病院側からありがとうクーポンを贈るようなことが実際に行われています。また、ある高校では先生と生徒の間でありがとうクーポンを贈り合ったり、デジタル学習の一環として生徒が自らCO-URIBAの運営をしていたりする例もあるんですよ。

砂口:僕ら作り手側としても、夢が広がりますね。

画像: 佐藤直史さん(オカムラ オフィス環境事業本部 開発創造本部 副本部長)

佐藤直史さん(オカムラ オフィス環境事業本部 開発創造本部 副本部長)

佐藤:最近は、企業同士がコミュニティーを通じて共創して新たな価値を生み出そうとする活動が活発化しています。今後はそこからさらに進んで、コミュニティー同士をつなげてスケールの大きな共創を志向する動きも加速すると思います。そうなったとき、「コミュニティー同士をつなぐ機能って何だ?」と問われれば、CO-URIBAがドンピシャだと思っていて。さまざまな共創をつなぎ、後押しする「ハブ」としての役割を担えると期待しています。

西本:まさにそうありたいですね。将来的にはCO-URIBAが人や組織同士をつなぐ「シンボル」のような存在になれれば最高です。分かりやすい例が某エナジードリンク企業です。彼らはドリンクを売っていますが、エクストリームスポーツというカルチャーの象徴にもなっています。同じように、CO-URIBAを軸にウェルビーイングに関心のある企業さんとイベントやコンソーシアムを作っていきたい。

そのための第一歩として、実は既に高校ではそういうことをやろうとしています。CO-URIBAを設置した高校同士で交流を図ったり、CO-URIBAのサイネージで流す動画コンテンツのコンテストをSNSで開催したりといったことを企画しているんです。このようにCO-URIBAを「遊び場」にして、ここに集まる人々のコミュニケーションや出会いをどんどん作りたいと考えています。こういった未来構想は、オカムラと日立という信頼ある企業が描くからこそ現実味がありますし、また意味があると思っています。

成功のイメージは「クリアに見えている」本格事業化へ

砂口:「ウェルビーイングといえばCO-URIBA!」と、誰もが即答するようなサービスに育てたいですね。今、世の中ではウェルビーイングという言葉が独り歩きし、実践が伴っていないケースも多いと感じています。だからこそ、このサービスで確かな価値を届けていきたいなと。

西本:そうですね。まずはウェルビーイングや人的資本経営などに関心が高い企業にどんどんCO-URIBAを提案していこうと考えています。当面は1000社への導入をめざしたいですね。

画像: 成功のイメージは「クリアに見えている」本格事業化へ

小貫:オフィスの中での新しいCO-URIBAの可能性や使い方については、私たちも常に模索しています。日立の従業員の方々から「ありがとうクーポン」のアイデアが生まれたように、この記事を通し、読者の皆さんからも「こんな使い方をしたら面白いんじゃないか」といったご意見をいただけたらとてもうれしいです。

佐藤:本格的な事業化に向けてこれから越えなければいけないハードルは多いですけど、「うまくいくだろうな」と楽観もしているんです。CO-URIBAが世に広まったときのイメージは既にクリアに見えているので、後はその実現に向けてどんな手を打っていけばいいのか、日立さんと一緒にこれから検討したいと考えています。

西本:僕も不思議と、「CO-URIBAはきっとビジネスとして成功するだろう」という確信めいたものを感じています。なぜそう言えるかというと、今、この事業に関わっているメンバーの中に、手を抜いている人が一人もいないからです。僕の持論は「成功するか否かは、どこまで本気でやるかで決まる」なので、これだけ本気の人たちが集まっているCO-URIBAは、きっと成功して世の中を変えるサービスになるはずだと信じています!

もちろん、これからがいよいよ本番です。両社での役割分担やビジネスモデルの構築など、クリアすべき課題はまだたくさんあります。ですが、それらを一つ一つ乗り越え、2026年にはCO-URIBAの展開を本格化させていきたいと考えています。今後のCO-URIBAの動向にご期待ください。

【前編】「ありがとう」がオフィスを変える 日立のDXとオカムラの空間デザインが仕掛けるウェルビーイング革命」はこちら>

株式会社オカムラ
[所在地] 神奈川県横浜市西区北幸1丁目4番1号 天理ビル19階
[創 立] 1945年10月
[従業員数] 5,687名(連結)※2025年3月末現在
株式会社オカムラのWebサイトへ

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