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日立市と日立製作所は、2023年12月「デジタルを活用した次世代未来都市(スマートシティ)計画に向けた包括連携協定」を締結。翌年4月には、次世代未来都市共創プロジェクト(以下、共創プロジェクト)を始動しました。「グリーン産業都市の構築」「デジタル健康・医療・介護の推進」「公共交通のスマート化」という3つのテーマと並行して、実現したい未来の暮らしを市民とともに考える「スマート住宅エリア・市民参加の推進」。全5回のシリーズでお届けする本企画の第5回前編は、日立市 共創プロジェクト推進本部 課長 藤田 敦氏、主幹 赤津 瑠美氏、日立製作所 本谷 拓磨、中村 有沙に、その活動内容を聞きました。

このプロジェクトの役割

―― 「スマート住宅エリア・市民参加の推進」は、共創プロジェクトの3つのテーマ「グリーン産業都市の構築」「デジタル健康・医療・介護の推進」「公共交通のスマート化」とは役割が異なっているそうですが、まずこの取り組みが生まれた背景を教えてください。

本谷
共創プロジェクトは、環境、健康、交通というそれぞれのテーマを軸に、社会課題解決に向け検討を進めています。「スマート住宅エリア」は、これらの社会課題解決を通じ、日立市が将来どんなまちになって欲しいかを市民の皆さんとともに考え、描いていくテーマです。未来の暮らしを想像する時に、日立市と日立製作所で議論をしているだけでは、市民の想いとは違ったものになる可能性があります。この地域に住んでいる市民の皆さんや事業者など、できるだけ多くの方に参加していただきながら、未来のあるべき暮らしを探っていく。そういう役割のテーマになります。

画像1: このプロジェクトの役割

―― どういった経緯で、「市民参加の推進」の取り組みが始まったのですか。

中村
共創プロジェクトは、行政と民間企業が共同で始めたという点では大きな一歩です。そしてプロジェクトがめざしているのは、行政と民間企業で施策を講じて終わりではなく、市民一人ひとりがまちの主役となり、地域のステークホルダーと協力しながらまちをより良い方向に変えていくことだと思っています。そのためにも、デジタルの力も活用しながら、皆でともに考え、議論・実行・評価・改善のサイクルをつくっていく。それが「市民参加の推進」の役割だと考えています。今年度からはより一層注力して取り組んでいきたいと思っています。

画像2: このプロジェクトの役割

―― このテーマの目的は日立市の未来をデザインすることで、環境や健康、交通といった3つのテーマとは役割が違うということですか。

藤田氏
めざすべき未来を描くプロジェクトですから、社会課題の解決がテーマである3つのテーマとは確かに役割は異なりますが、市民参加という側面はこの3テーマを下支えする立場なのかなと認識しています。未来を考える場合、人口減少を課題としてとらえるのか、事象としてとらえるのかはそれぞれの考え方があると思いますが、いずれにしても人口減少が進んでいる状況でも市民生活をより快適にしていくことが重要であり、未来に向けて私たちに何ができるのかを広く探ることの方が先なのではないか。

私たちの共創プロジェクトでは、日立製作所のデジタルの力を活用しながら、3つのテーマをつなぎ、循環し、効率を高め、市民の皆さんが安心して暮らせるまちとはどういったものであるかを考え、実証し、実装したいと思っています。日立市の人口が減っていく中で、どういったインフラやサービスを提供すれば市民の皆さんが快適に暮らせるのかを、一緒に考えて進めていきたいです。

画像3: このプロジェクトの役割

「スマート住宅エリア」の取り組み

―― 「スマート住宅エリア」は、どんな活動をされているのですか。

赤津氏
現在、未来の日立市をどんなまちにしたいかという暮らしのコンセプトを定めることを目標に活動しています。市民の皆さんと共に未来のコンセプトを創るために、やるべきことは何か。私たちはアンケートやヒアリングのような一方的な意見収集では、本当のニーズをとらえることはできないし、市民の参加意識も生まれないと考えています。市民の皆さんが自分事として主体的に活動していただけるような状態を作るために、何がいいのかを手探りしているところです。

今私たちがひとつの有効な手段として考えているのが、ワークショップです。昨年大学生を中心に、日立市の未来を考えるワークショップを行いました。今年度に第2弾を開催予定で、次世代を担っていく大学生や、地域内企業や市民団体の若い世代など幅広い方々と共に進めていく事を考えています。ちょうど参加される方たちが結婚をしたり子育てをしたりと、ライフイベントが多くなる2040年の将来を想定して、15年後の日立市がどんなまちだったら嬉しいかをディスカッションする。それを、私たちの今年度のミッションである未来の日立市のコンセプト作りに生かしていきたいです。

画像: 「スマート住宅エリア」の取り組み

―― 第1弾のワークショップは、どんなテーマで開催されたのですか。

本谷
昨年のワークショップは、茨城大学工学部都市システム工学科をはじめとする学生を含め計25名で、「2040年のスマート住宅エリアにおける移動・交通のあり方」をテーマに、3回に渡って行いました。ワークショップ前に、テーマに関するまちの魅力や課題を知ってもらうために、参加者にはフィールドワークとして日立市内を散策してもらいました。そしてワークショップ1回目では、それぞれが感じたことを共有しながら、移動・交通の在り方を描く上でのキーワードについてアイディア出しをしました。一例として、車移動が多いこのまちは、子どもが一人でも安心・安全に活動できる環境を未来に向けて作ることが大切なのではないか、という意見が出され、「子ども目線のWalkable City」というキーワードが生まれました。

2回目は、このキーワードをもとにしつつ、これからの社会や技術の変化を想定した上で、現在から2040年にかけて未来洞察を行い、未来のまちの姿を具体化しました。3回目では、2040年のまちで暮らす人々の移動体験や生活の様子を、仮想のインタビュー記事という形式でまとめました。

画像: ※生成AIにより画像を生成しています。

※生成AIにより画像を生成しています。

本谷
ここに描かれている「子ども目線のWalkable City」は、通学路がグラウンドになっており、子どもたちは車を気にせず安心・安全に楽しく通学できる環境をイメージしました。ワークショップの中では、生成AIを活用してまちの姿を描きながら進めることで、参加者の目線を揃えられ、結果として参加者の強い共感を呼ぶ“未来の暮らしのコンセプト”を描くことができたと思います。

―― 参加者や関係者からは、どんな反響がありましたか。

本谷
学生からは、「自分たちが住みたいと思える暮らしの姿を具体的な絵にすることで、より鮮明に未来をイメージすることができた」といったコメントをもらいました。茨城大学の教授からは、日立製作所のファシリテーターによるワークショップのノウハウや手法を、授業にぜひ取り入れたいというお話をいただきました。またオブザーバーとして参加いただいた地域の企業からは、次はぜひワークショップに参加し、一緒に未来の暮らしについて議論したいというお話をいただきました。全体的に非常にポジティブな反応でした。

―― 中村さんは学生に近い年齢ですね。参加した学生たちの反応を見て、どのような印象をもちましたか。

中村
一緒に議論をして感じたのは、学生の皆さんは「この景色は、将来も残したいお気に入りの場所だ」とか、「季節ごとに香りが変化するこの道が好き」といったように、まちの良さを積極的に見つけ出すということです。社会人になってからの自分は、つい「課題起点」で物事を考えがちだったと気づかされました。このワークショップを通じて、生活者の視点と豊かな感性でまちの良さを起点に議論することは、シビックプライドや楽しみながら前向きにまちを作る機運の醸成にもつながり、とても重要な観点だと改めて感じました。

―― 今年度開催予定の第2弾ワークショップについて教えてください。

赤津氏
前回のワークショップは25名でしたが、第2弾は40名と規模も大きくなり、参加者も多様化する予定です。今回は茨城大学工学部の学生に加えて、茨城キリスト教大学の学生にも参加していただく予定ですし、前回オブザーバー参加だった地域企業の方は、今回は参加者として加わりたいという話をすでにいただいています。他にも市役所各課とつながりのある市民団体の若者世代へ声掛けを行っています。また、前回のように移動・交通に限定するのではなく、自分たちが望む2040年の暮らしといったテーマにしたいと思っています。

【第5回】2040年の日立市の暮らしを市民とともに考える「スマート住宅エリア・市民参加の推進」(後編)はこちら>

「日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト」の記事一覧はこちら>

画像1: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第5回】2040年の日立市の暮らしを市民とともに考える「スマート住宅エリア・市民参加の推進」(前編)

藤田 敦(ふじた あつし)
日立市
共創プロジェクト推進本部 課長(総務担当)

1998年に日立市役所(旧十王町役場)に入所。納税課、産業振興、財政課、企画部門に携わり、2024年より現職。

画像2: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第5回】2040年の日立市の暮らしを市民とともに考える「スマート住宅エリア・市民参加の推進」(前編)

赤津 瑠美(あかつ るみ)
日立市
共創プロジェクト推進本部 主幹

2015年に日立市役所に入所。成人祝や2019年茨城国体競技会等のイベント企画運営や、市民課での窓口業務に携わり、2025年より現職。

画像3: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第5回】2040年の日立市の暮らしを市民とともに考える「スマート住宅エリア・市民参加の推進」(前編)

本谷 拓磨(もとたに たくま)
株式会社 日立製作所
社会イノベーション事業統括本部
ウェルビーイングソサエティ事業創生本部 ウェルビーイングソサエティ第二部 技師
兼 ひたち協創プロジェクト推進本部 事業創生室 市役所常駐者

2018年日立製作所に入社。流通業や製造業のコンサルティング、地方創生に携わり、2024年より現職。

画像4: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第5回】2040年の日立市の暮らしを市民とともに考える「スマート住宅エリア・市民参加の推進」(前編)

中村 有沙(なかむら ありさ)

株式会社 日立製作所
社会イノベーション事業統括本部
ウェルビーイングソサエティ事業創生本部 ウェルビーイングソサエティ第三部 企画員
兼 ひたち協創プロジェクト推進本部 協創推進室 市役所常駐者

2022年日立製作所に入社。全国の支社と連携した産官学の新規事業創生に携わり、2024年より現職。

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