Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
日立市と日立製作所は、2023年12月「デジタルを活用した次世代未来都市(スマートシティ)計画に向けた包括連携協定」を締結。翌年4月には、次世代未来都市共創プロジェクト(以下、共創プロジェクト)を始動しました。3つのテーマの中の「公共交通のスマート化」は、現在どのような状況にあるのか。全5回のシリーズでお届けする本企画の第4回後編は、日立市 共創プロジェクト推進本部 課長 鈴木 大成氏、主幹 神永 悠司氏、日立製作所 高野 晴之に、デジタル活用やにぎわいのある日立市への思いを聞きました。

【第4回】活気ある日立市の再構築をめざす「公共交通のスマート化」の取り組み(前編)から読む >

デジタルの役割

―― 「公共交通のスマート化」において、データ活用などデジタルはどんな役割を担うのでしょうか。

高野
これから取り組もうと考えているのは、日立市の交通状況の見える化です。渋滞はいつどこで起こっているのか、まずは現実をしっかりと把握するところから始めようと思っています。その上で、ここの渋滞にはどういった対策を打てばいいかを具体化していく。現在はその準備段階です。

これまでは、「ここが渋滞している」「ここには対策が必要だ」という判断を肌感覚でやっていたところがありました。それはそれで地域のノウハウとして重要ですが、私たち日立製作所が加わることによって、データにもとづいた本当の状況を客観的に分析することから始めようと、動き出したところです。

画像1: デジタルの役割

―― 具体的にどんなデータを使って見える化をする予定ですか。

高野
まず、道路に設置されたセンサーで収集している交通量などの道路情報です。ほかにも携帯電話会社がお持ちの位置情報や、自動車メーカーがお持ちのカーナビのデータなども活用を検討しています。デジタルで道路状況が見える化できるようになれば、次のステップとしてシミュレーションが可能になってきます。施策を検討し、どういう効果があるのかを仮想で検証して、施策を導入する精度を高めていくといったサイクルを回せるようにしていきたいと思っています。

鈴木氏
将来的には、デジタルツインによる渋滞解消につながっていけばと考えています。現実世界の道路の状況をデータでリアルタイムに可視化し、仮想空間でシミュレーションして対策を現実空間にフィードバックする。そんなスマートシティの渋滞制御を実現していきたいです。

画像2: デジタルの役割

活気ある日立市の再構築

―― 統合アプリに関して、現在どんな構想をお持ちなのかを教えてください。

高野
現在は、誰に使ってもらいたいか、どういうシーンで使ってもらいたいかといったさまざまな思いや構想を、みんなで検討しているところです。この地域のこういう人たちを支援しましょうとか、キャッシュレスから始めてみましょうとか、チケットレスまで実装したいといったアイデアを、どこまで取り込んでいくのか。市民の方々が積極的に使いたくなるアプリをめざして、検討を繰り返しています。

―― それは、すでに世の中で使われている乗り換えアプリとは何が異なるのでしょうか。

神永氏
私たちのイメージは、既存の電車やバスの乗り換え情報だけではなく、日立市に根ざした新しい交通手段も含めたもっと動的なアプリです。例えば、行きたい場所に、行きたい時に行くために、検索はもちろん乗り物の予約もできるし、電動キックボードを使えばこのバスに間に合うので最短で行けますよ、といった提案までできるようにしたいと考えています。この地域の移動になくてはならない価値を持ったアプリにしたいと思っています。

画像: 活気ある日立市の再構築

高野
統合アプリによって、移動が楽になる、自家用車以外での移動を増やすといった狙いもありますが、私たちの最終的な目的は、まちのにぎわいを生み出すというところにあります。みんなが気軽に出かけられる環境を作ることによって、活気ある日立市を作りたい。統合アプリは、その目的のための手段なのです。

鈴木氏
私は日立市出身ですが、小学校の頃は銀座通りやまちなかに友達と毎週のように出かけていました。まちの活気やにぎわいに引き寄せられていた当時と比べると、今のシャッターが目立つ風景には強い危機感があります。統合アプリには、そんな思いをどう機能に落とし込むのか、みんなでしっかり考えたいです。

共創の意義

―― 日立製作所という企業が、日立市という自治体と共に社会課題の解決と取り組むメリットは何でしょうか。

高野
日立製作所の人間である私たちは、技術を提供することはできるのですが、実際にそれを実行する力は弱い。たとえばバスを走らせる実証を進めようとしても、それに対して認可を出す、あるいは制度としてそれを認めるといったことは行政でなければできません。お互いの強みを生かして補完し合える関係が、この共創プロジェクトの大きなメリットだと思います。

―― 自治体から見た時、日立製作所との共創のメリットは何でしょうか。

神永氏
高野さんの裏返しになってしまうのですが、日立製作所には私たちにない技術や知見があります。市役所は短いスパンでさまざまな部署に異動することが多いので、なかなか専門的な深い知見を身に付けることが難しいところがあります。そういう意味でも日立製作所の専門的な技術や知見は、私たちには大きな価値があります。個人的には、高野さんのような立場の方と一緒に仕事ができるということも、共創のメリットだと感じています。

鈴木氏
行政の宿命かもしれませんが、予算の使い方や施策の実行において柔軟にスピード感を持って動くことがあまり得意ではありません。しかし最近は、フルスペックでなくてもいいので、時機を逸しないうちに動かないと不確実性の高いこれからの時代に対応できない、という意識が高くなっています。そんな私たちが、日立製作所の技術やスピード感を共有できるということは、学ぶ点も多くありがたいことだと思っています。

お互いの存在

―― 日立市から見て、日立製作所はどういった存在ですか。

神永氏
ひとことで言うと、すごく大きな存在です。ここではまちのあらゆるところに日立というロゴや看板がありますし、日立製作所関係の工場が休みの日は、まちの雰囲気が変わる。それくらい大きな存在です。

鈴木氏
私は父が日立製作所で働いていたので、社宅で育ちました。周りの人たちも同じような環境で、まち全体が日立製作所で成り立っている。日立市の巨大な生態系を作っているのが、日立製作所だと思います。

―― 日立製作所から見て、日立市はどういった存在ですか。

高野
日立市は創業の地で、病院や鉄道、教育機関など社会の基盤を作り、従業員やOB・OGが暮らし、共に成長してきた存在だと思います。私自身、このプロジェクトが始まって1年以上暮らしてみて気づくところもあります。自動運転など先進的な挑戦も積極的に行っている場所なので、例えばそういったベンチャー企業が集まって新しい技術を追求したり、新しいビジネスが生まれるといいな、と思います。

「日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト」の記事一覧はこちら>

画像1: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第4回】活気ある日立市の再構築をめざす「公共交通のスマート化」の取り組み(後編)

鈴木 大成(すずき たいせい)
日立市
共創プロジェクト推進本部 課長(公共交通担当)

1992年に日立市役所に入所。固定資産税業務、下水道関連業務で県庁1年間出向、都市政策課、教育委員会、地域創生、都市政策課の後、2025年より現職。

画像2: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第4回】活気ある日立市の再構築をめざす「公共交通のスマート化」の取り組み(後編)

神永 悠司(かみなが ゆうじ)
日立市
共創プロジェクト推進本部 主幹

2015年に日立市役所に入所。税務、企画部門を経て、経済産業省に出向し、2024年より現職。

画像3: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第4回】活気ある日立市の再構築をめざす「公共交通のスマート化」の取り組み(後編)

高野 晴之(たかの はるゆき)

株式会社 日立製作所
社会イノベーション事業統括本部
ウェルビーイングソサエティ事業創生本部 本部長
兼 ひたち協創プロジェクト推進本部 事業創生室長
兼 スマート交通推進センタ センタ長 市役所常駐者

1997年日立製作所に入社。公共・社会システムやスマートシティ領域にかかる業務に従事しつつ、グループ会社や国土交通省への出向などを経験。入社以来、一貫して新事業創生・新規領域開拓につとめ、Society5.0の社会実装に向けた、将来価値基点にもとづく社会課題解決型事業の創生に取り組む。2024年より現職。

This article is a sponsored article by
''.