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日立市と日立製作所は、2023年12月「デジタルを活用した次世代未来都市(スマートシティ)計画に向けた包括連携協定」を締結。翌年4月には、次世代未来都市共創プロジェクト(以下、共創プロジェクト)を始動しました。3つのテーマの中の「公共交通のスマート化」は、現在どのような状況にあるのか。全5回のシリーズでお届けする本企画の第4回前編は、日立市 共創プロジェクト推進本部 課長 鈴木 大成氏、主幹 神永 悠司氏、日立製作所 高野 晴之に、プロジェクトの現状と進捗について話を聞きました。

日立市の公共交通が抱える課題

―― 「公共交通のスマート化」というテーマに取り組むことになった背景について教えてください。

高野
この共創プロジェクトを始める時に、日立市役所と日立製作所のメンバーでテーマに関する議論を行いました。「グリーン産業都市の構築」と「デジタル健康・医療・介護の推進」は双方がスムーズに合意になりましたが、「公共交通のスマート化」というテーマは、日立市の皆さまからぜひ取り組みたいというご要望が強くあり、それだけ切迫した課題なのだと感じました。

日立製作所は事業として、スマホを使ったチケットレス・アプリの商用サービスやグリーンスローモビリティの実証など、国内外でさまざまな交通に関する取り組みを進めています。そういった技術や知見を生かすことで何かお役に立てるのではないかと考え、ご一緒させていただくことになりました。

画像1: 日立市の公共交通が抱える課題

鈴木氏
高野さんのお話のように、日立市は交通に関する2つの大きな課題を抱えています。ひとつは路線バスの利用者の減少と運転手不足です。それが原因で路線の廃止や減便が進み、さらに不便になって利用者が減っていくという負のスパイラルに陥っています。

もうひとつの課題は、交通渋滞です。市内の幹線道路として、国道6号と国道245号が市の南北に伸びているのですが、通勤時間帯には慢性的に交通渋滞が発生します。一番ひどいところでは、移動距離を移動時間で割った指標である旅行速度が12.9km/h(一般道路の平均旅行速度は約34km/h)と県内最低の数値になっていまして、市民の方々にとっても行政にとっても改善すべき切実な課題です。

画像2: 日立市の公共交通が抱える課題

神永氏
日立市の山側住宅団地では、急な坂が多く日常の移動に困る高齢者が増えています。今後、高齢化率がさらに高まり、運転が難しい方が増えてくる中で、バス路線の廃止や減便は生活に直接影響します。こうした課題の対応について、今回のプロジェクトでぜひとも行っていきたいと思っています。

画像3: 日立市の公共交通が抱える課題

プロジェクトの現況

―― このプロジェクトの概要を教えてください。

高野
私たちは特に高齢者支援と交通渋滞の解消に着目し、3つの施策を定めました。1つ目は高齢者向けの次世代モビリティです。自家用車に代わる新しい交通手段として、高齢者向けの次世代モビリティを提供できないか検討しています。2つ目は、通勤者向けの次世代モビリティです。通勤時の渋滞を緩和するために、自宅や会社から、駅やバス停など 交通結節点までの新たな移動手段を提供できないかと考えています。3つ目がスマホを使った統合アプリケーション・サービスです。公共交通を乗り継いで外出する時に、どうやって行くのが最適かを検索し、利用する交通手段の予約や決済までできるような統合アプリを提供したいと考えています。

これらの施策を中心にプロジェクトを進めるにあたって、私たちや市民の皆さまがビジョンを共有できるよう、2035年の「日立市の公共交通の将来像」というグランドデザインを描きました。これをベースに、何からどう取り組んでいくのかを現在計画しています。

画像1: プロジェクトの現況

―― グランドデザインなどでプロジェクトの取り組みを発信して、市民からの反応はいかがですか?

鈴木氏
市民の方からホームページに送られてくるご意見では、高齢者が移動しやすい次世代モビリティへの期待が非常に高くなっています。2024年12月に「ひたち次世代モビリティフェス」というイベントを開催しまして、自動運転車や次世代モビリティ、電動キックボードなどを実際に体験していただきましたが、そこでも新しいモビリティへの関心の高さを実感しました。

神永氏
今年度は、山側にお住まいの高齢者へのヒアリングやアンケートを通して、どういう移動ニーズがあるか、どういうところに行きたいのかといった生の声を分析し、最適な移動手段を検討したいと思っています。

高野
「次世代モビリティフェス」では、研究開発中のベンチ型モビリティも体験していただきました。これは時速2~3kmという歩く程度の速度で決められたルートを移動するもので、自宅から最寄りのバス停などの交通結節点までのひとつの移動手段としてこれから検証していきます。しかしこれだけでは買い物や病院に行きたいというニーズに応えることは難しいので、そういったシーンでは何人かで相乗りして循環するライドシェアのような、オンデマンドの交通手段の方が適していると考えています。

画像2: プロジェクトの現況

鈴木氏
公共版ライドシェアは、日立の中里地区という中山間地の高齢者が多いエリアで、地域の足としてかなり早くから始めています。

高野
通勤者向けの移動手段としては、電動キックボードを考えています。通勤に自家用車ではなくバスを使いたいが、家からバス停までが遠い。あるいはバスを降りてから会社までが遠いという人が、天気が良い日は電動キックボードとバスで通勤するという運用もあると想定しています。

日本の公共交通の最前線

―― 共創プロジェクトとは異なりますが、日立市ではBRT *1 自動運転バスが営業運行を開始したと話題になりました。

神永氏
日立市では、国(経済産業省及び国土交通省)が進める「自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト」 *2 として、2025年2月3日よりひたちBRTで国内初の中型バス車両でのレベル4自動運転として、営業運行が始まっています。廃止になった日立電鉄線の路線をバス専用道として整備した6.1kmの区間を、1日8便4往復で運行しています。

大甕(おおみか)駅の周辺では、一般道での自動運転の実証も行われており、そのような意味では、公共交通に関して言うと、日立市は先進的なモデルケースが多いと自負しています。

*1 Bus Rapid Transit:連節バス、PTPS(公共車両優先システム)、バス専用道、バスレーン等を組み合わせることで、速達性・定時性の確保や輸送能力の増大が可能となる高次の機能を備えたバスシステム。
*2 自動運転レベル4等先進モビリティサービス研究開発・社会実装プロジェクト

【第4回】活気ある日立市の再構築をめざす「公共交通のスマート化」の取り組み(後編)はこちら>

「日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト」の記事一覧はこちら>

画像1: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第4回】活気ある日立市の再構築をめざす「公共交通のスマート化」の取り組み(前編)

鈴木 大成(すずき たいせい)
日立市
共創プロジェクト推進本部 課長(公共交通担当)

1992年に日立市役所に入所。固定資産税業務、下水道関連業務で県庁1年間出向、都市政策課、教育委員会、地域創生、都市政策課の後、2025年より現職。

画像2: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第4回】活気ある日立市の再構築をめざす「公共交通のスマート化」の取り組み(前編)

神永 悠司(かみなが ゆうじ)
日立市
共創プロジェクト推進本部 主幹

2015年に日立市役所に入所。納税課、企画部門を経て経済産業省に出向し、2024年より現職。

画像3: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第4回】活気ある日立市の再構築をめざす「公共交通のスマート化」の取り組み(前編)

高野 晴之(たかの はるゆき)

株式会社 日立製作所
社会イノベーション事業統括本部
ウェルビーイングソサエティ事業創生本部 本部長
兼 ひたち協創プロジェクト推進本部 事業創生室長
兼 スマート交通推進センタ センタ長 市役所常駐者

1997年日立製作所に入社。公共・社会システムやスマートシティ領域にかかる業務に従事しつつ、グループ会社や国土交通省への出向などを経験。入社以来、一貫して新事業創生・新規領域開拓につとめ、Society5.0の社会実装に向けた、将来価値基点にもとづく社会課題解決型事業の創生に取り組む。2024年より現職。

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