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日立は「AIトランスフォーメーションプロジェクト」の名のもと、グループ全社で生成AIの徹底活用を推進。その目的は、グループの生産性向上のみならず、プロジェクトで生まれたミッションクリティカル領域も含めたさまざまな生成AIユースケースを、社会へ提供すること。そして、徹底活用のためのグループ共通のプラットフォームが「生成AI共通基盤」です。この「生成AI共通基盤」の全社展開を推進する日立製作所 生成AIアプリケーション&共通基盤室の滝川絵里と川邊雄介に話を聞きました。

日立グループが一丸となって生成AIを業務で徹底活用

——「AIトランスフォーメーションプロジェクト」とはどのようなプロジェクトでしょうか。

画像: 日立グループが一丸となって生成AIを業務で徹底活用

滝川
日立グループ全社で生成AIを徹底活用していこう、それも個人業務の生産性向上というレベルを超えて、さまざまな業務に生成AIを組み込んでビジネスに新しい価値を生み出していこう、というものです。

——議事録作成やアイデアの壁打ちなどのレベルではなく、業務に組み込むのですね。

滝川
はい。そのために日立グループは、このプロジェクトの中核プラットフォームとして全社が共通で活用できる「生成AI共通基盤」を構築しました。

生成AIの業務への適用には多くのハードルが存在します。例えば、生成AIアプリケーションの開発環境を実現するための投資や、その環境を構築・運用するための人財獲得などが高いハードルとなります。やはり日立グループ全社で生成AIを業務に活用するためには、誰もが快適に生成AIアプリケーションを開発、実行できる共通のプラットフォームが必要なのです。

——この基盤があるなら、誰もがすぐに生成AI活用へ動き出せますね。

滝川
この共通基盤は、効果を見定めてから投資をするのか、投資をしてから効果の最大化を図るのかといった鶏卵問題を断ち切ってくれます。ただ、今の共通基盤はローンチして間もないため、まだまだ利用者の要望に応えきれていない状況です。私のタスクは、この「生成AI共通基盤」を誰もが快適に使えるよう、グループ内のニーズを集約して技術的要件を整理し、開発チームにフィードバックすること——いわばプレSE 的な役割です。

基盤の成長は急がれます。私はこれまでAI開発部門などの技術分野にも、お客さまと接するプレSEとしてフロント分野にも携わってきました。その両方のノウハウを生かして、日立グループ全社に共通基盤が最大の価値を提供できるようしっかりと貢献していきたいと考えています。

グループでナレッジを共有し開発を効率化する「生成AI共通基盤」

——「生成AI共通基盤」の特長について詳しく教えてください。

画像1: グループでナレッジを共有し開発を効率化する「生成AI共通基盤」

川邊
「生成AI共通基盤」は大きく3つの層で構成されていて、まず生成AIアプリケーションの開発支援を行う「ナレッジ・支援ツール」。次に、生成AIが推論を行うインフラとしての「生成AI実行環境」。そして、LLM*を構築する膨大なコンピュートリソースが用意された「生成AIモデル学習環境」です。

冒頭で滝川さんが言ったように、この共通基盤は日立製作所に限らずグループ全社の生成AIプロジェクトでの活用を前提に構築されていて、各プロジェクトには専用環境が提供されますがカスタマイズ開発も自由ですし、もちろんセキュリティも確保されています。そして、各プロジェクトで開発されたナレッジやツールアセットは「ナレッジ・支援ツール」として共通基盤に蓄積され、グループ内で循環利用されます。

* LLM:Large language Models。大量のデータとディープラーニング(深層学習)技術によって構築された言語モデルのこと。

画像2: グループでナレッジを共有し開発を効率化する「生成AI共通基盤」

——グループでナレッジやツールアセットを循環して利用できれば、開発を加速させられますね。

川邊
例えばコールセンター向けに生成AIアプリケーションを開発する場合、開発者は、「ナレッジ・支援ツール」にあるすでに実証済みのコールセンター向けモジュールなどを使って効率的にアプリケーションを開発し、今度はその過程で生まれた新しいナレッジやツールアセットを「ナレッジ・支援ツール」に登録します。この基盤を活用するプロジェクトが増えれば、それだけまた再利用できるナレッジとツールアセットが増え、グループとしてのアプリケーション開発はさらに効率化されます。

——この基盤は、利用者が増えればさらに成長するのですね。

川邊
この価値やメリットを日立グループ全体に知ってもらえるよう、私はいま共通基盤の紹介活動に力を入れています。私はこれまで金融機関向けITサービス(システム)の営業や基盤サービスの企画に携わってきましたが、そこでの経験を生かして利用者と共通基盤の開発・運用チームとのかけ橋になれればと考えています。生成AIという新技術が世の中を変えていく最前線に関わることができて、いま大きなやりがいを感じています。

「生成AI共通基盤」では現在、アプリケーション開発への導入、各種業務の効率化に向けたユースケースの検証など50を超えるプロジェクトが進行していて、日立グループが生成AIの業務活用を進展させるエンジンとなっています。

日立グループが効果を実証した生成AIユースケースを社会へ

——日立グループが一丸となって取り組むこのプロジェクトのねらいはどこにあるのですか。

滝川
めざすところが2つあります。まず、1つは日立グループ全社の生産性を向上すること。そしてもう1つが、このプロジェクトでさまざまな業務における生成AIのユースケースを蓄積して、日立グループ内だけでなく、社会へ提供していくことです。

いま多くの企業で生成AIを試行的に使い始めていると思います。ただその先の、例えばシステム開発におけるソースコードの生成やコールセンターにおける高度な回答の生成など本格的な業務活用に進むためには、いくつもの壁を超える必要があります。

例えば、生成AIが誤った情報を出すハルシネーションをどのように対策するか、あるいは業務プロセスに生成AIを組み込む際、現場にあるさまざまな有形/無形のノウハウをどのように活用していくか、といった課題です。日立グループはお客さまがこの壁を超えられるよう、ミッションクリティカル領域の業務も含め、「生成AI共通基盤」で生成AIを徹底的に使いこなしていきます。

川邊
日立グループは、お客さまのDXを支援する「デジタルシステム&サービス」、エネルギーや鉄道で脱炭素社会の実現に貢献する「グリーンエナジー&モビリティ」、幅広い産業でプロダクトをデジタルでつなぎソリューションを提供する 「コネクティブインダストリーズ」という3セクターの事業体制のもと、ITやOT(制御・運用技術)、プロダクトを活用してお客さまや社会の課題を解決しています。

さらに、この日立グループならではの幅広い事業領域で生成AIの活用やユースケースの創造を推進しており、これらのユースケースや実績は多くの社会課題へ適用できると考えています。

滝川
私たち共通基盤を管理する側も生成AIをツールとして使いながら、業務で使える「生成AI共通基盤」とはどのような仕組みであるべきか、つねに追求していきます。そして課題への最適解を落とし込んだ効果実証済みのユースケースを社会へ提供していきます。

「【第2回】モノづくりの変革を自分の目で見るために」はこちら>

画像1: 生成AI活用のフロントランナー
【第1回】「生成AI共通基盤」の日立グループ全社展開へ

滝川 絵里(たきがわ えり)

株式会社 日立製作所 クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット
生成AIアプリケーション&共通基盤室 PJ推進部 担当部長

官公庁向けプラットフォームなどのSEやクラウドサービスの立上げに参画し、拡販およびプレSEとしてニーズ分析や要望分析などを担当した後、自然言語を中心としたデータ分析/AIソリューションの開発に従事。2023年より現部署において生成AI共通基盤の日立グループ全社への展開を推進中。

画像2: 生成AI活用のフロントランナー
【第1回】「生成AI共通基盤」の日立グループ全社展開へ

川邊 雄介(かわなべ ゆうすけ)

株式会社 日立製作所 クラウドサービスプラットフォームビジネスユニット
生成AIアプリケーション&共通基盤室 PJ推進部 主任技師

金融機関向けITシステムの営業やDX関連、クラウドサービス、インフラ更改などの案件を担当した後、日立のインフラ事業やビジネスモデルの企画立案などを担当。2023年より現部署において生成AI共通基盤の日立グループ全社への展開と外販サービスの立ち上げを推進中。

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