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見えない地中の埋設物を立体的に可視化して、重要な社会インフラの整備を高度化・効率化する共同研究が完了。政令指定都市・仙台市と日立による2期にわたる綿密な取り組みは確かな成果を上げ、そこに芽吹いた発想は、社会インフラの未来を支える新たな情報プラットフォームの実現を引き寄せる価値ある一歩を踏み出しました。

下水道工事の遅延やコスト増大が課題に

画像1: 仙台市「地中可視化サービス」共同研究
第1回 下水道事業の課題解決を支援するデジタルの力

仙台市
建設局下水道建設部 管路建設課
主幹
小野寺氏

東北最大の都市である宮城県仙台市では現在、管路施設の計画的な保全や地震対策の実施、コスト縮減といったテーマを盛り込んだ下水道事業中期経営計画を推進しています。近年、各種施設の老朽化などを背景に同市の下水道事業費は増加傾向にあり、その抑制に向けて下水道工事を効率化する必要がありました。

一般に下水道管の開削工法による新設や更新の際は、他の地中埋設物であるガスや電気、通信といった各事業者からその情報を取得したうえで工事計画を立案します。しかし、各事業者が管理する情報の収集や図面の統合などが、仙台市でも工事担当者の大きな負担となっていました。さらに、実際の状況と食い違う図面が長年放置されているといったことも少なくありませんでした。

「地中の情報が不正確だったことで、管路の設計変更を余儀なくされて工期が延びることもあります。また、掘削時に水道管を傷つけて、現場の道路を通行止めにしてしまったこともありました」と下水道工事の難しさについて語るのは、同市管路建設課の小野寺氏です。こうしたアクシデントの結果、下水道工事だけでなく、その後に予定されていたガス管などその他の地中埋設物の工事が連鎖的に遅れ、さらなる工期の長期化やコスト増大につながっていたと言います。

デジタル技術で業務効率化を図る共同研究が始動

画像2: 仙台市「地中可視化サービス」共同研究
第1回 下水道事業の課題解決を支援するデジタルの力

仙台市
建設局下水道建設部 下水道計画課
係長
加藤氏

2021年7月、日立は仙台市が抱える課題への解決策として「地中可視化サービス」を紹介しました。このサービスは、Amazon Web Servicesを活用し、応用地質株式会社による地中レーダー探査と日立のAI解析技術を組み合わせることで、地中の埋設物の位置や寸法を3次元で可視化するものです。図面と比較してより高精度に、試掘では確認しきれない範囲まで面的に地下埋設物情報を提供。Webアプリ上で直感的に操作・確認・共有が可能で、管路施設の配置検討や関係者との円滑な協議・調整を支援します。

提案内容を伝えられた仙台市下水道計画課では、工事の手戻り防止や業務量削減につながるのではと、このサービスに期待を寄せたと言います。同課の加藤氏は「この技術を使えば、業務遅延の原因の1つである工事の設計変更を減らせるかもしれません。それに、人員も予算も限られるなかで業務効率化をめざすのであれば、こうしたデジタル技術の活用が不可欠だと考えていました」と言います。

同市に長年下水道電気設備などを納入してきた日立も、サービスの提供を通じて下水道事業の管路業務に関する知見を獲得できる貴重な機会と認識。さらに、仙台市は政令指定都市としては珍しく、水道に加えて都市ガスも公営で運用していることから、本サービスを起点にした統合的な埋設インフラ保全事業への発展的展開も期待できます。こうした展望のもと、日立と仙台市建設局下水道建設部が地中可視化サービスの共同研究に乗り出したのは2021年11月のことでした。

技術検証での確かな手応えを得て、運用性などの検証へ

今回の共同研究は、まず計測精度など主に技術的な側面を精査するフェーズ1からスタート。仙台市側は下水道計画課が中心となり、従来の空洞調査にも利用していたレーダー探査技術に加え、取得データをもとにAIで埋設物を立体的に可視化する3次元化などについて細やかな検証を重ねました。

計測精度の確認に際しては、実際に道路を試掘して確認した地中の状況と、本サービスで計測・可視化したデータを比較検証。その結果を受けて加藤氏は、「検証を通じて想定した一定の精度を確認できました。また、埋設物の3Dデータの取得により、急に工事の必要が生じた際にも、短時間で準備を整えられることもわかりました」とサービスの有用性を評価します。

技術に関するフェーズ1を通じて確かな手応えを得られたことから、実際の管路施工に本サービスを適用した場合の運用性などを検証する共同研究フェーズ2への移行が決定。これにともない、仙台市側の対応部門は、下水道計画課から現場での工事を担う管路建設課へシフトしました。

小野寺氏は、「レーダー探査に関してはすでに確立されていた技術ですから、フェーズ1ではどの程度の精度でAIによる3次元化を実現できるかが焦点でした。検証の結果、共同研究はより実践的な段階へ前進したのです」と説明。こうして2022年7月、仙台市の下水道事業における地中可視化サービスの本格導入を見据えた共同研究フェーズ2がスタートしました。

「第2回 社会インフラ保守プラットフォームの実現に向けて」はこちら>

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