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CO2排出量や消費エネルギーなど取り組み成果を“見せる化”
株式会社 日立製作所
制御プラットフォーム統括本部
サービス・制御プラットフォームシステム本部
デジタルソリューション事業開発部
担当部長
井川 尚紀
企業がカーボンニュートラルをめざす場合、省エネや再生可能エネルギーの活用、各種環境証書によるカーボンオフセットなどに取り組むのが一般的です。一方でその目標達成のためには、進捗(しんちょく)状況に応じたPDCAなどによる細やかな目標管理が欠かせません。
大みか事業所では以前から消費電力データの取得・可視化や目標管理などに「EcoAssist-Enterprise」を活用してきましたが、今回「大みかグリーンネットワーク」の一環として進められる実証は、従来の取り組みをさらに高度化させた試みです。
「消費電力だけでなくガス使用量など収集データの種類を広げCO2排出量を算出したり、従来の棟単位からその建物内で製造されている製造ライン・工程単位、さらには製品単位というように収集データの粒度を高めたりするなど、これまで以上に緻密な実証を進めています」と今回の取り組みのポイントを解説するのは本実証に携わる井川 尚紀です。
一般に可視化することを“見える化”と言いますが、今回の実証ではあえてそれを“見せる化”と表現。その意図について、本実証に携わる山田 崇弘は、「ESG投資などを念頭に、CO2削減に向けた取り組みや成果を外部に向けてより強くアピールしていこう、という私たちの決意を込めました」と説明します。
「EcoAssist-Enterprise」を活用した4件の実証
株式会社 日立製作所
制御プラットフォーム統括本部
サービス・制御プラットフォームシステム本部
デジタルソリューション事業開発部
グループリーダ主任技師
山田 崇弘
大みか事業所では現在、クラウド版の「EcoAssist-Enterprise」を活用した以下の4件の実証に取り組んでいます。
まず、「脱炭素シミュレーション」は建物ごとに1時間単位で電力消費量、ガス消費量、CO2排出量のデータを取得・可視化したうえで、CO2削減計画に沿った実績管理機能を提供する実証です。目標未達の場合は省エネや再エネ利用といった補完施策を複数リストアップして提案するとともに、それにともなうCO2削減量や費用を提示する投資対効果のシミュレーション機能も提供します。
「アナログ計器値自動収集」は従来目視で確認していた都市ガスのアナログメーターの値を自動読み取りシステムで収集する実証で、デジタルなスマートメーターがなくても、事業者が自ら排出するScope1の温室効果ガス排出量をデータ化できます。
また、「Scope3対応システム間連携」は自社の燃料使用や工場プロセスからの直接排出であるScope1と他社から供給された電気や熱、蒸気の使用にともなう温室効果ガスScope2以外の間接的な温室効果ガスScope3に関する情報をデジタル化する実証です。購買・廃棄物データやERPなど各種システムリソースとの連携機能で人手を介さずに各カテゴリーの活動量データを抽出し、複雑な算出処理を必要とするScope3データを容易に集計できます。
そして「工程別排出量可視化」では、電力・ガス使用量などのリアルタイム情報を基に、製造工程における製品CO2排出量を算出。製品ロット単位のトレーサビリティ情報(生産履歴データ)に電力データや4M(※)情報を組み合わせることで、生産ライン・設備・製品ロット単位でのCO2排出量管理と生産工程の最適化を可能にします。
このほかにも「CO2排出量可視化」をテーマにした実証が複数計画されており、今後順次進めていく予定です。
※ huMan/Machine/Material/Method(人・機械・材料・方法)
知見や気づきをカーボンニュートラル達成につなげる
日立ではこれらの実証の成果を大みかグリーンネットワークに参加する地域やバリューチェーンのステークホルダーにも横展開しながら、EcoAssist-Enterpriseの改良や進化、さらには今後の新たな製品化・サービス化にもつなげていく考えです。
「例えばガスのアナログメーター読み取りが差し込む光の具合でうまくいかなかったり、工程別排出量可視化では計測したい箇所に電力量計が設置されていなかったりと、当初の想定とは違う事態にも直面しましたが、その解決や克服を通じて方法論をさらに洗練させられるのも実証の1つの効能だと思います」と山田は言います。もちろん、こうして得られた成果を積み上げ、今後それぞれの現場に本格導入していくことで、まずは大みか事業所のカーボンニュートラル、さらには日立とバリューチェーン全体でのカーボンニュートラル達成をめざしていきます。
目標達成に不可欠な“細やかさ”というキーファクター
見せる化にもさまざまな粒度での見せ方がありますが、緻密なCO2削減計画を立案して細やかな粒度でCO2を可視化していかなければ、計画どおりにCO2を削減しながら、目標期限までのカーボンニュートラル達成に向けたPDCAを回すことはできません。こうした認識を踏まえて井川は「本気で脱炭素社会の実現をめざすのであれば、漠然とした大ざっぱな取り組みではなく、細部に至るデータ収集や見せる化、そして細やかな目標管理など、より精緻なアプローチが不可欠なのです」と、さらに一歩細やかさを高めた今回の各実証の意義を説明します。
精緻な目標設定が促す実行性、そして小さな目標達成の積み重ねによる実効性の観点からも、今回の実証は大きな収穫を期待できる見込みです。まずは事業所でのカーボンニュートラル達成に向けて、大みか事業所では日々さまざまな試行錯誤を繰り返しながら、細やかなCO2見せる化実証を継続していきます。
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