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2023年3月より、DX(デジタルトランスフォーメーション)を深掘りする連載企画第2弾がスタートします。テーマは、「DXを加速するアジャイル」。講師は、『アジャイル開発とスクラム』の著者であり、20年以上も日本にアジャイル開発を広める活動をされてきた平鍋健児氏です。連載開始前のプロローグとして、平鍋氏はこの連載で読者に何を伝えたいか。その思いを伺いました。

2010年以降、Webサービス企業はアジャイル開発で競争力を磨いてきましたが、日本のITユーザー企業とよばれる事業会社は、自社でエンジニアを雇用してアジャイルでソフトウェアを開発することよりも、まだベンダーへ発注するという従来のやり方から抜けられないケースが多く見られました。

しかしここにきて、デジタルの力でビジネスの新しい価値を作り出すDXという大きな動きが出てきたことで、ユーザー企業も自分たちのビジネスインフラでありビジネス資産であるソフトウェア開発はエンジニアを雇用して自分たちで行う必要がある、ということをようやく理解するようになりました。仕様を決めてベンダーに発注してという従来のやり方では、スピードが遅い上に自分たちのコアコンピタンスを外注することになるからです。ユーザー企業とベンダーの受発注というやり方ではなく、有効だと思ったサービスは一部だけでもすぐに自分たちで作り、市場のニーズやマッチングを検証しながら徐々に改善してビジネスを育てていくべきなのです。そのためにアジャイルが有効であることが再認識された、という新しい流れがあると思います。

それに加えて、DXやイノベーションを実現するための組織づくりやチームビルディングという側面からも、アジャイルは注目されています。「2001年のアジャイルソフトウェア開発宣言」のときから、アジャイルはソフトウェア開発の手法であると同時に、職業人一人ひとりが生き生きと能力を発揮するための組織づくりの手法としても注目されています。あるビジネス目標を達成するために、いろいろなスキルを持った人たちがワンチームとなって向かっていく。内発的な動機に裏付けられた力を集約することで、組織やチームをボトムアップする仕組みがアジャイルですから、それはそのまま組織づくりにつながっています。

DXやイノベーションというのは、理論や手法だけで生み出すことは難しく、プロジェクトの中に強いパッションを持った人がいて、それに共感するメンバーがいて、全員が自分事としてその仕事に関わること。そういうエモーショナルな要素が絶対に必要であり、そのための組織づくりやチームづくりの要素がアジャイルには含まれています。

従来からある上意下達的で階層的なマネジメント、役割分担と作業分担、締め切り、納期で縛って予定と実績の差を見て管理するというマネジメントでは、DXやイノベーションなど到底望むことはできません。プロジェクトなり新事業に参加した人たちが、自律的に自分たちのやるべき仕事を自分たちで宣言し、最終ゴールに向けてみんなで力を合わせるというモチベーションづくりが重要であり、それを可能にするのがアジャイルの大きな特長です。アジャイルというのはソフトウェア開発プロセスの手法であると同時に、チームづくりの話なのです。

DXやイノベーションを考えると、新しい事業開発にソフトウェアの力を必要としないことはもうありえないといってもいいでしょう。今回の連載では、アジャイルという俊敏なソフトウェア開発とそれを実現する組織やチームづくりを通して、ビジネスの最前線で働く皆さんが生き生きと働ける環境作りに役立てていただける、そんな実践的な話ができればと思っています。ぜひ、最後までお付き合いください。

第1回「平鍋健児氏とアジャイル」はこちら>

画像1: DXを加速するアジャイル ~変化を味方にしたチームづくり~
プロローグ2 --- DXとアジャイル

平鍋 健児(ひらなべ けんじ)

株式会社 永和システムマネジメント 代表取締役社長、株式会社チェンジビジョン 代表取締役CTO、Scrum Inc.Japan 取締役。1989年東京大学工学部卒業後、UMLエディタastah*の開発などを経て、現在は、アジャイル開発の場、Agile Studio にて顧客と共創の環境づくりを実践する経営者。 初代アジャイルジャパン実行委員長、著書『アジャイル開発とスクラム 第2版』(野中郁次郎、及部敬雄と共著) 他に翻訳書多数。

画像2: DXを加速するアジャイル ~変化を味方にしたチームづくり~
プロローグ2 --- DXとアジャイル

『アジャイル開発とスクラム 第2版』

著:平鍋健児 野中郁次郎 及部敬雄
発行:翔泳社(2021年)

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