新しい働き方を再設計する時代へ
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言を契機に、多くの企業が従業員を在宅で勤務させるテレワークへとかじを切りました。しかし今回は、感染症という外部要因によって強制的かつ早急に進められたケースが多いため、本来の「働き方改革」という観点でテレワークを準備していなかった企業では、数々の課題が浮き彫りになりました。
例えばIT環境面では、在宅勤務用のPCやネットワークリソースが不足し、業務やコミュニケーションに支障が生じることや、自宅回線のセキュリティに不安があったことなどです。
従業員も、当初は通勤時間がなくなり仕事に集中できるというメリットを感じていたのが、在宅が1か月、2か月と続くに従い、仕事用のスペースが確保できない、Web会議中に家族の声が気になる、働き過ぎや運動不足が心配、といった仕事を行う場所としての課題が顕在化してきました。
企業側も、テレワークの長期化による社員間コミュニケーションの希薄化、生産性を低下させるストレスや健康状態の把握などが難しくなり、人財マネジメントの先行きに不安を感じているケースが少なくありません。
これらの課題は、積極的にテレワークを推進していた企業にも、大人数が一斉に在宅勤務をすることが想定外だったため、さまざまな発想の転換を迫る内容を含んでいます。今後は、感染の第2波、第3波に備えるため、従業員全員がテレワークで業務を行うことを前提とした、ニューノーマルでの働き方を再設計することが求められます。
「人」を中心としたテレワークに向けて
日立は2016年から、多様な人財がイキイキと働き、持てる能力を最大限に発揮できるよう、先進的なITとサテライトオフィス、在宅勤務などを活用した働き方改革を推進してきました。2020年4月の緊急事態宣言後は、社会機能を維持するため出社せざるを得ない業務以外を「原則在宅勤務」とし、平均在宅勤務率は約7割となっています。
かつてない規模と期間でテレワークを実践し続ける中で見えてきたのは、コロナ禍の前に想定していたIT運用やセキュリティの課題だけでなく、安心して働ける場所の在り方や、生産性を高めるための従業員のパフォーマンスケアも含め、すべての環境を“Afterコロナ”を見据えたニューノーマルな働き方として再設計する必要があるということでした。
従来のオフィスを前提とした働き方ではなく、「人」を中心に幸福度や快適性、生産性を両立させながら、場所に依存しない柔軟なワークスタイルが求められます。そこで日立は、人を中心としたテレワークの“あるべき姿”を、次のような3つの観点で考え、お客さま企業の生産性向上と付加価値の最大化をめざし支援していきます。
(1) プロダクティビティ
(生産性を最大化する従業員のパフォーマンスケア)
(2) ワークスペース
(場所に依存せずストレスなく使えるIT)
(3) ワークプレース
(新しいオフィス像の実現)
ニューノーマルのプロダクティビティ
~生産性を最大化する従業員のパフォーマンスケア~
ホワイトカラーの生産性向上に向けた「意識の見える化」
働き方改革における重要な課題は、ホワイトカラーの生産性向上にあります。製造現場では生産設備の効率を上げ、時間当たりの工数を多くするといった、わかりやすい指標があります。しかし、ホワイトカラーの業務では可視化すべき指標がなかなか得られず、効果的な施策を展開するのが難しいとされていました。
そこで日立は、従業員一人ひとりの「生産性」や「配置配属」に対する意識をサーベイの分析結果から見える化し、個々に効果的な人事施策を打てる「日立人財データ分析ソリューション」を提供しています。一人ひとりが適切に配置された環境で価値創造に向けた働き方を実現すれば、おのずと生産性や満足度は上がり、離職率の低下につながります。
今回のコロナ禍で在宅勤務が長期化する中、日立は従業員の意識の変化が生産性にどのような影響を与えているかを可視化するため、5月中旬に社内向けのサーベイを試行。対面の機会が減っても、従業員の気持ちを定期的に把握し、効果的なケアにつなげられることを確認しました。今後はお客さまにも、働く場所を問わず日常的に従業員の意識に寄り添った施策の立案を支援するソリューションを提供していきます。
テレワークでの健康ケアをトータルサポート
在宅勤務が長期化すると、運動不足や睡眠不足、食事の栄養バランスの偏りなど、フィジカルな生活習慣にも乱れが生じてきます。そこで日立は、従業員のスマートフォンやウエアラブルセンサーなどから得られる日々の活動量や気分のデータと、既存の健診結果、ストレスチェック、サーベイなどのデータを掛け合わせて分析することで、従業員が安全・安心・健康に働ける環境を可視化し、改善していく「コンディショニングマネジメント」を施行中です。今後は日立グループの幅広いリソースも活用しながら、メンタルヘルスに対する予防、疾病予防、プレゼンティーイズムの改善などを図り、業績向上につなげるサービスを提供していきます。
ニューノーマルのワークスペース
~場所に依存せずストレスなく使えるIT~
ニューノーマルでは、オフィスに毎日通勤するような働き方は過去のものとなり、自宅を中心に、従業員が業務や都合に合わせて働く場所を選択することが当たり前となっていきます。PCの利用場所もオフィスから自宅へと変わり、スマートデバイスの活用も進むことで、インターネット経由でのクラウドサービス利用が急増し、新たなセキュリティリスクの増大につながっていきます。
こうしたリスクを最小化するため、企業は従業員の自宅内でも最低限のセキュリティ対策を促す教育支援や補助、あらゆるデバイスからの業務アプリケーションアクセスを監視するゼロトラストセキュリティの導入が必須となっていきます。
また、自社データセンターでVDI(*2)を活用している企業でも、テレワーク常態化によるVDIリソースの不足や、リモートアクセスの高負荷が顕在化しており、今後はクライアントと基盤システムそれぞれをテレワークに最適化した次世代モデルへと再設計し、どこでもノンストレスで使える環境を提供することが求められます。
*2 Virtual Desktop Infrastructure:仮想デスクトップ環境
さまざまなサービスで安全・安心・柔軟なワークスペースを実現
こうしたニューノーマルでのIT戦略を推進するためには、情報システム部門の大きな負担となる在宅に配置するデバイスの管理運用(初期設定、アプリケーション配布、アップデートなど)やヘルプデスク、故障対応などをアウトソーシングすることが効果的です。
日立は社内テレワークの実践から得た知見を生かした「統合クライアントサービス」で、場所を問わないデバイス管理運用と在宅勤務者のトータルケア、VDI基盤の導入・運用などをワンストップで支援。さらに、テレワークでのチームコラボレーションに欠かせない「Microsoft Teams®」を中心とした「Office 365®」の利用者向けの活用支援サービスも提供し、従業員一人ひとりが場所を問わずに実力を発揮できる安全・安心・柔軟なワークスペースを実現していきます。
ニューノーマルのワークプレース
~新しいオフィス像の実現~
働き方の激変によって、「オフィス」の意味が大きく問い直されています。テレワークを核としたニューノーマルな働き方が普及すれば、従業員は密閉・密集・密接の「3密」を避けることが難しい首都圏や都市部に住む必要がなくなり、企業にとってもオフィスコストの削減につながるなど、さまざまなメリットが見えてきます。
将来的にマザーオフィスは、Face to Faceによるイノベーションを創造する場所としての機能にシフトし、在宅での仕事に集中できない人向けには、職住近接となるようなサテライトオフィスの需要が増えていきます。また、テレワークエリアが地方へ拡大していくことで、郊外や地方に住環境を移す動きも予想され、政府が提言する「Society5.0 デジタル田園都市国家構想」の流れにも合流するものとなります。
こうしたワークプレースの分散化は、サテライトオフィスに転用できる企業内の余剰スペースや地方の住環境などを、利用者とマッチングさせる新たな市場を創造します。日立は今後、業界の垣根を越えた企業間のデータ連携を推進するコンソーシアム「NEXCHAIN !」を活用し、テレワーク利用者と場所提供者のマッチングビジネスを推進していきます。
テレワークが常態化するニューノーマルでの働き方は、今後の企業経営に大きなインパクトをもたらします。日立はこれからも、従業員の安心・安全と生産性を高める革新的なソリューションを提供し、お客さま企業の働き方改革を支援していきます。
他社登録商標
Microsoft、Windows、Office 365、Outlook、SharePoint、OneDrive、OneNote、Skype、 Microsoft Teams、Excel、Active Directoryは米国 Microsoft Corporationの米国およびその他の国における登録商標または商標です。
本誌記載の会社名、商品名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。