
安定したCSV活動を実現する「長期的なパートナーシップ」
——シスメックスさまはCSVaaSの実務検証を開始します。そのパートナーに日立を選んだ理由は、CSVとITシステムの双方に通じているからでしょうか。

内藤 貴道氏(ないとう たかみち)
シスメックス株式会社 DX戦略推進本部 デジタル企画部長
内藤氏
もちろんそれも大きな理由ですが、加えて重視したのが、CSV人材の厚みです。CSVaaSは一過性の施策ではなく、長期的なパートナーシップを前提とするものです。その点、日立は若手人材の積極的な育成を通して持続可能な体制の構築に真摯(しんし)に取り組まれています。安定してオンデマンド対応が可能な人材基盤が整っているという点も含め、日立は信頼に足るパートナーだと判断しました。
PoCでは3つの検証テーマを設定しましたが、その1つが、この「長期的なパートナーシップ」を構築可能かという点。加えて、突発課題にどれだけ迅速に対応できるかという「即応性」、そしてCSV対応費の最適化が可能かという「コスト」の2点も重要な検証項目としました。
最大2カ月を要した準備期間が、最短で翌日対応へ
——まず「即応性」と「コスト」についてPoCの結果はいかがでしたか。

大西 勇次氏(おおにし ゆうじ)
シスメックス株式会社 DX戦略推進本部 デジタル企画部
大西氏
即応性は劇的に向上しました。これまで最大2カ月かかっていた担当者のアサインや契約手続き、見積もり取得といった準備期間が短縮され、日立側のスケジュールが空いていれば翌日からでも内容確認などから速やかに業務に入っていただくことが可能な体制となりました。
またコスト最適化の面では、契約書作成など間接業務にかかる費用を削減できたことに加えて、小粒な業務にはミニマムなリソースで柔軟に対応いただける体制となったことも有効に働きました。さらに、準備期間中の私たちの無駄な待機コストが減ったこともメリットです。
例えば1つのシステムのCSV対応を進めていると、その影響で周辺システムでも対応が必要になることがあります。これまでは契約に含まれない範囲だと、対応をお願いするのが難しいケースもありました。ですが現在は、必要が生じたときに、適切なリソースで迅速に対応いただいています。CSVaaSの存在が私たちの大きな安心感につながっています。

薊 理紗(あざみ りさ)
株式会社 日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット
デジタル事業開発本部 Business Development Healthcare Solution Associate Manager
薊
CSVaaSによって、システムの定期改修など、小規模なルーティン業務についても、繁閑(はんかん)の状況に応じて気軽にご依頼いただけるようになりました。こうした点も、シスメックスの皆さまの安心感につながっているのではないかと思います。
当初は、シスメックスさまの業務の進め方やCSV対応のルールを把握するのに時間がかかる場面もありましたが、繰り返して依頼をいただくことでノウハウが蓄積され、現在ではより迅速に対応できるようになっていると思います。
いつでも気軽に相談いただけるパートナーとして、安心して頼っていただける存在であり続けたいと思っています。
ナレッジトランスファーがほぼ不要に
——それでは「長期的パートナーシップ」の観点からPoCの結果はいかがでしたか。

森川 博史氏(もりかわ ひろふみ)
シスメックス株式会社 DX戦略推進本部 デジタル企画 課長
博士(理学)
森川氏
長期的なパートナーシップという観点では、PoCを2年間実施しましたが、日立はもともとCSV人材の層が厚く、全体として安定して運用することができたと感じています。もちろん、必要な作業量に対して人的リソースが不足する場面もありました。その際には、対応が不可欠な重要パートと、後回しにできるパートを適切に見極めながら業務を進めていただきました。そうした判断を通じても、日立の確かな知見を改めて実感しました。
また、薊さんのお話にもあったように、これまで大小さまざまなCSV対応をご支援いただく中で、日立には当社のCSVに関する規定や基準、さらには業務上の作法まで深く理解していただいています。加えて、システム構築から日立にお願いしているケースでは、日立内の構築チームとCSVチームとの間で情報共有が行われているため、通常であればCSV業務開始前に1~2カ月ほど設けるナレッジトランスファー(業務知識の共有)の期間も、ほとんど必要なくなっています。いわば「あうんの呼吸」で対応いただける関係となっており、こうした点も長期的なパートナーシップを強化する要素になっています。

佐藤 允彦(さとう みつひこ)
株式会社 日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット
デジタル事業開発本部 Business Development Healthcare Solution
博士(工学)
佐藤
PoCを通じて得た最大の収穫は、シスメックスさまを深く理解したうえで、各部門のCSV活動を俯かんする視点を持てたことです。組織が大きくなるほど、各部門単独では対応のバラツキが生じるリスクがありますが、全体を見渡せる私たちであれば、全社基準に沿った適切な評価や文書整備の提案が可能です。部門間の橋渡しや全社最適を担う長期的なパートナーとして、しっかりと役割を果たしていけるという確信を得られました。
——そしてCSVaaSは2026年4月に本稼働となります。その判断の決め手は何だったのでしょうか。
内藤氏
長期的なパートナーシップ、即応性、コスト、どの観点でも社内のアンケート評価は満点に近いものでしたが、本稼働の決め手となったのはサービスの利用状況のグラフです。グラフは時々大幅な増大を示しており、こうした波をすべて社内のリソースだけで吸収するのは、やはり現実的ではないと感じました。そしてCSVaaSがこうした変動を受け止める調整弁として機能することがPoCを通して実証され、本稼働の判断に至りました。
CSVaaSを、広く医薬・医療機器分野の企業へ
内藤氏
私は、この日立のCSVaaSをシスメックス以外の医薬・医療機器分野の企業にも幅広く活用していただきたいと考えています。
CSVはもちろん重要な業務ですが、それ自体が競争力の源泉になる領域ではありません。であれば、日本でも有数のCSVのエキスパート組織である日立の知見を業界のみんなで共有し、各社が自社のコアコンピタンスにより集中できる環境をつくることができれば、結果として日本の医薬・医療機器産業全体が強くなっていくのではないでしょうか。

本多 正剛(ほんだ せいごう)
株式会社 日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット
デジタル事業開発本部 Business Development Healthcare Solution Manager
本多
日立でもこのCSVaaSを、シスメックスさま以外のお客さまに活用いただけるよう動き始めています。
CSV活動は、システム構築時の一時的な取り組みではなく、システムのライフサイクル全体を通して継続的に取り組むべきものです。しかし、幅広い事業の一部として医薬・医療機器を手がけている企業や、これからヘルスケア分野への参入を検討している企業にとって、CSVの専門人材を常駐で確保することは容易ではありません。
日立ではCSVaaSにより、システム構築の上流工程から運用フェーズのルーティン業務まで、お客さまのCSV活動を柔軟かつ迅速に支援できる体制を整えました。必要なときに必要な形で日立のCSVの知見をご活用いただけるサービスとして、ぜひ多くのお客さまに利用いただきたいと考えています。
生成AIによるCSV活動の進化は始まっている
内藤氏
また、これからのCSV活動の進化を考えるうえで、生成AIが大きな可能性を持っていると感じています。例えば現在、文書作成の比重が大きいQMS*¹の運用管理において、生成AIを活用して作業負荷や運用コストを軽減できないか、試行を始めているところです。
CSV活動では、計画書や報告書、各種記録など多くの文書を作成・管理する必要があります。こうした領域ではAIが大いに力を発揮するでしょう。さらに将来的には、変更の影響範囲の整理やテスト計画の検討など、CSVに関わるさまざまな判断を支援するツールとしての活用も期待しています。この分野についても、ぜひ日立と一緒に取り組みを深めていきたいですね。
*1 QMS:Quality Management System
本多
私たちもすでに一部でAI活用の試行を始めています。日立のCSV人材にもやはり限りがあるため、生成AIに私たちのノウハウを学習させることで、人的リソース不足のリスクを補完できる可能性があると考えています。
また、日立のCSVの知見とシスメックスさまのCSV運用方針を学ばせたAIを、シスメックスさま内部で一次対応に活用いただければ、即応性は一段と高まるでしょう。さらに将来的には、CSVaaSユーザー企業の知見を、機微情報を除いた形でAIに蓄積し、CSVaaSファミリーのお客さまの間で還流させることで、お客さまのCSV対応の継続的な高度化に寄与できると期待しています。
私たちは、CSVaaS をさらに進化したサービスへと持続的に発展させることで、医薬・医療機器業界全体の価値向上に貢献していきたいと考えています。




