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日立製作所(以下、日立)の水・環境事業統括本部長の風間 裕介は、AIアンバサダーの大山 友和らとともに、経営リスクへの対策など幹部の業務を支えるAIエージェントを開発。前回はその内容について、日本マイクロソフト執行役員 チーフラーニングオフィサーの野田 景子氏とともにレビューを行いました。今回はそこからさらに議論を広げ、組織がAIの価値を最大限に引き出すために何が必要かについて、掘り下げて聞いていきます。

「【第4回】日立製作所 水・環境事業統括本部長 風間裕介の活用術(前編)」から読む >

AIはツールであり、最終的な判断は「人」

大山
風間さんの話のようにAIは使いこなしが大事ですが、それを実践している組織はまだまだ少ないように思います。

野田氏
意思決定支援にAIを導入するお客さまは増えていますが、思うような回答が得られないとおっしゃる方もいます。そしてその背景には、おっしゃる通り使いこなしへの意識の欠如があるように思います。

AIはマジックボックスではなく、あくまでツールです。使い方を習得しなければ期待する成果は生まれません。その鍵のひとつがプロンプト力です。鋭い答えが返ってくるとき、その背景には必ず鋭い問いがあります。コンピュータ黎明期から語られてきた「Garbage in, Garbage out*1」という原則は、AI時代においても変わりません。

プロンプト力とは、自分の思考を「何が目的なのか」、「知りたいことは何なのか」、「どの観点で整理したいのか」などに分解し、AIに伝わるよう改めてロジカルに構造化することです。これは端的に言えば、コミュニケーション能力です。つねに自分の考えを解像度高く伝わるよう心掛けることは、AIの活用力の向上につながると思います。

コミュニケーション能力に加えて、プロンプト力には視野の広さも欠かせません。言い換えれば、特定分野に閉じないジェネラリストとしての多彩な観点を持つことです。先ほど風間さんも「N次元でものを考える力を鍛えたい」とおっしゃっていましたが、自分の中に複数の観点があると、立てられる問いの幅が大きく広がります。問いの射程が広がれば比較軸が増え、結果として意思決定はより戦略的なものになります。

*1 Garbage in, Garbage out:入力する情報や指示の質が低ければ、どれほど優れた仕組みでも、出力される結果の質も必ず低くなるという原則。

画像1: AIはツールであり、最終的な判断は「人」

風間
その時に忘れてはならないのは、AIが提示するのはあくまで「判断材料」に過ぎず、最終的に意思決定を下すのは、人だということです。私は、AI活用においては、AIの回答を起点にしつつも人が最終的な判断を下すプロセスを組み込むことが不可欠だと考えています。

実際に、水・環境事業統括本部のAI活用促進プロジェクトでも、「空いた時間で、人と人が議論する時間を増やす」ことを重要テーマのひとつにしました。日立グループには、「安全と健康は全てに優先する」という安全衛生の不変の基本理念があります。そして私たちが携わる社会インフラや産業分野の安全は、現場を知り尽くしたフロントラインワーカーたちが知恵を持ち寄り、顔を合わせて議論する中で築き上げられるものです。AIの出力をそのまま現場に当てはめるという発想はあり得ません。

現実世界に直接働きかけるフィジカルAIの領域の開拓が、いま私たちの重要なミッションのひとつです。この取り組みを進めるほどに、リアルな現場を知る人の知見をAIの設計・運用に組み込むカルチャーを意識的に育てていく必要があると感じています。

画像2: AIはツールであり、最終的な判断は「人」

AIカルチャーを設計し、根付かせる

野田氏
おっしゃる通りAIの活用率を上げるためには、AIを単に導入するのではなく、自社の事業特性に合わせてAIカルチャーを設計し、根づかせていくことがとても重要です。

これは私自身の失敗から学んだことでもあります。以前、CIOとして在籍していた企業で、営業部門のPCをiPadへ切り替える構想が検討されました。ただ当時は、働き方そのものの変革まで踏み込むには至らず、結果としてプロジェクトは十分に前進しないまま停滞してしまいました。
iPadもAIも、ツールに過ぎません。業務の進め方そのものを設計し直さなければ、ツールは組織に浸透せず、変革が起きることはありません。重要なのは、全社が一体となって働き方を再設計することです。そのために、トップが目指す組織の姿——すなわちノーススターを明確に打ち出すことが大切なのです。私たち日本マイクロソフト社も、AIとの協働を前提に働き方を再設計した組織を「フロンティア組織」と位置づけ、その実現に向けてお客さまの変革をご支援しています。

今回の日立さんのエージェントに立ち返ると、自社の戦略について繰り返し強度を検証するシナリオは、「安全と健康は全てに優先する」という理念を体現しているプロンプトで、これもまた日立さんのカルチャーなのだと思います。

大山
月面着陸を成し遂げたアポロ計画でも採用された、想定される最大負荷に対して、さらに余裕を持たせて設計する「安全率」という考え方があります。今回のプロンプトは、その設計思想を応用したものです。こうした発想が自然とAIに組み込まれるのは、確かに安全を最優先とする考え方がカルチャーとして私たちに根付いているからかもしれません。

画像: AIカルチャーを設計し、根付かせる

風間
ただAIが設計上いかに高い安全率を備えていたとしても、現実に存在するリスクが適切に入力されなければ、AIは真に強靭な戦略を構築することはできません。
例えば、心理的安全性が確保されていない会議では、参加者が自ら感じているリスクを率直に共有しないかもしれません。結果として、AIに渡る情報自体が不完全になる。ここでもやはりオープンな議論文化の醸成など組織のカルチャーが問われます。AIの真価を引き出すポイントは、AIを取り巻く環境にも数多く存在しているのかもしれません。

顔を合わせて対話することの豊かさ

野田氏
私たち日本マイクロソフト社では現在、CEOの津坂の主導のもと、多様な分野の識者をお招きして、外部の知見を積極的に社内へ取り込んでいますが、実はこの取り組みの主たる目的も社員のAI活用力の向上にあります。
先ほど申し上げたように、AIを使いこなす鍵はプロンプト力にあり、その力を高めるには、ジェネラリストとして多様な観点を持つことが欠かせません。私たちは、ゲストの皆さんからこの先の世界の変化などに関して新たな視座を学び、それをプロンプトに反映させることで、AIから幅広い発想を得る努力を重ねています。

画像: 顔を合わせて対話することの豊かさ

風間
世界の変化は、ますます加速度を増しています。こうした環境で生き残るためには、うねりの前のさざ波など、微小な違和感を自分の肌で感じ取る感覚を磨くことが大切になるでしょう。そのためにも、人と直接会い、対話する機会を疎かにしてはならないと考えています。これはカルチャーとして定着させたいですね。

野田氏
AIと協働するこれからのエグゼクティブにとって、リアルな体験の価値はますます高まると思います。今日のような場も、リモートのミーティングで成立させることはできたでしょう。しかし、実際に顔を合わせて対話することで得られる情報の質と量は比較にならないほど豊かであり、かけがえのないものです。そして、そのような情報をすくい上げることは、人にしかできないのですから。

「エグゼクティブの生成AIの使い方」シリーズの記事一覧はこちら >

画像1: エグゼクティブの生成AIの使い方
【第4回】日立製作所 水・環境事業統括本部長 風間裕介の活用術(後編)

野田 景子(のだ けいこ)
日本マイクロソフト株式会社
執行役員 チーフラーニングオフィサー
Global Skilling

生成AI時代において、顧客・パートナー・社員を対象としたスキリング戦略を統括。テクノロジー、ライフサイエンス、金融分野にまたがる20年以上の経験を背景に、業務のデジタル変革のみならず、組織やカルチャーの変革を大規模に推進。AI活用による事業成長や人材・組織変革について、経営層に対するアドバイザリーも行う。

画像2: エグゼクティブの生成AIの使い方
【第4回】日立製作所 水・環境事業統括本部長 風間裕介の活用術(後編)

風間 裕介(かざま ゆうすけ)
株式会社日立製作所
理事
インダストリアルAIビジネスユニット 水・環境事業統括本部 統括本部長 兼
株式会社日立プラントサービス 取締役社長

2003年日立製作所入社。公共分野のIT系/OT系システムのプロジェクトマネジメント、事業戦略担当後、海外のHitachi Aqua-Tech Engineering Pte. Ltd.社長、国内の日立プラントサービス社長を経て2025年4月より現職。

画像3: エグゼクティブの生成AIの使い方
【第4回】日立製作所 水・環境事業統括本部長 風間裕介の活用術(後編)

大山 友和(おおやま ともかず)
株式会社日立製作所
デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit フロントサポートセンター チーフプランニングエキスパート
AIアンバサダー

コンサルティング部門にて、営業業務改革、新規事業の立ち上げなどに従事した後、日立コンサルティングにて、基幹業務システム構築などを担当。プロジェクトリーダーとして、システム企画・構築・運用全般を統括。その後、営業バックオフィスを支える業務システム全般を統括。現在、営業部門の生成AI徹底活用プロジェクトの取りまとめとして、講演活動、ナレッジ蓄積、社内コミュニティ運営、人材育成などの取り組みを推進中。

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