「第1回 人財の可視化を超えて自律的な成長へ――」から読む>>>
プロ人財育成基盤が変えた意識と行動、そして組織の文化
三菱UFJモルガン・スタンレー証券が2022年から運用を開始した社内システムは、お客さま担当者の能力やスキルを可視化して自律的な成長を促すことで、同社が定義する「プロ人財」の認定者や資格保有者を確実に増やしてきた。しかし、そうした定量的な効果以上に顕在化したのは、担当者一人ひとりの意識と行動の変化だ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
業務企画部証券アカデミー 次長
木村 友理香 氏
その変化について、現在は研修プログラムの運営管理を統括する立場ながら、導入当初はお客さま担当者として利用していた木村 友理香氏は「使ってみると会社が求める人財像がはっきり分かるようになり、そこへ向かってどう動けばいいのかというロードマップが意識できるようになりました」と語る。例えば、企業理念やMUFG Way*¹といった組織の指針と各人の行動との整合についても、本システムを通じてその基準が明確化されている。これにより各担当者は自分の立ち位置を踏まえて次の一歩を選べるようになった。
さらに、知識習得への意欲が高まるなかで、お客さま担当部門では「プロ=お客さま第一」という認識も共有されるようになった。資格は「取ったら終わり」ではなく、お客さまの課題解決のための手段として再定義され、次の学びや別の資格取得を動機づけている。こうした定性的効果は、定量的な指標以上に組織の風土に明らかな変化をもたらした。
*1Purpose(存在意義)、Values(共有すべき価値観)、Vision(中長期的にめざす姿)からなる、MUFGグループが経営活動を遂行するにあたっての最も基本的な姿勢であり、全ての活動の指針とするもの
社内運用の成果を共同開発で汎用化
3年間の社内運用で有効性を確認し、三菱UFJモルガン・スタンレー証券は、業種や職種を問わず多くの企業・現場でもプロ人財を育ててほしいとシステムの外販化を決断。システム開発にSIerとして参画した日立とともに、営業職だけでなく幅広い業務向けに汎用化した「プロ人財視える化・育成ソリューション」を共同開発した。木村氏は「当社の考え方に賛同いただける企業にもこのアドバイザリー型モデル*²を広げ、プロ人財育成を通じて日本経済の活性化にもつなげたいと考えました」とその背景を説明する。
共同開発にあたり、社内システムで磨いてきた「見やすく、分かりやすく、負担にならない」インターフェースと、現在地の確認から振り返り、学びへつなぐ導線は骨格としてそのまま残した。一方、企業ごとに異なる人財の評価基準やレベル認定は差し替えられるように調整し、組織の階層や拠点配置にも柔軟に対応できる設計に変更。また、共通基盤は過度に作り込みをせず、上位階層に各企業や各業種・職種の要素を積み上げられる拡張性を確保している。こうして元のシステムの基本機能や使い勝手を維持しつつ、幅広い業種・職種へも適用可能なソリューションとして整備された。
汎用的なソリューション化の実現を支えたのは、システム開発だけでなくその上流のコンサルティングも担った日立の総合力だ。社内システムと同様に、日立は企画初期から「プロ人財」の定義やモデル化といった基本設計をサポート。さらに、日立が持つ幅広い業種への知見を生かし、「どうすれば多くの企業で使ってもらえるか」を念頭に、各業種・職種に合わせたコンサルティングを組み込み、アプローチ面のアイデアも提案した。
*2 アドバイザリー型モデル:お客さまの真のニーズを捉え、資産運用にとどまらない幅広く専門的な提案を行う同社のビジネスモデル
知見の相互還流でさらなる進化へ
社員の「めざす姿」が明確な企業ほど、本ソリューションはプロ人財育成を後押ししやすい。一方、その過程にある企業では、本ソリューションの導入を機に人財像の再定義や評価軸・学習導線の整備が進めやすくなる。さらに、組織の方向性がそろわず社員のエンゲージメントが低下しているような場合でも、社員に「どこをめざし、どう動くか」を具体的に示すことができる。つまり、一人ひとりの社員が共有する理想像に向けて前進するための基盤として機能するのだ。
三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
ウェルス&ミドルマーケット本部 業務企画部システム業務室 開発推進課 部長代理
児玉 卓巳 氏
三菱UFJモルガン・スタンレー証券では、この社内システムを管理ではなく自律的成長のツールとして運用している。今後も一人ひとりが次の一歩を考えることができる環境づくりを重視していく方針だ。このスタンスについて木村氏は「社員の育成と成長にフォーカスするのは、人的資本を重視する当社の価値観とも親和性があると感じます」と意義を評価する。一方で同社と緊密に連携する日立は、本ソリューションを業種・職種横断でさらに展開しながら、各導入パターンのテンプレート化などを進めていく計画だ。
そして現在も起点となった同社のシステムと本ソリューションのそれぞれで、新機能の追加や性能の強化が進められている。「弊社内開発でこの1年ほどの間に実現した新機能や培ったノウハウと、プロ人財視える化・育成ソリューション側で新たに投入されたアイデアなどを相互にフィードバックしながら、双方でさらなる進化を追求していきたいと考えています」と児玉氏は今後の緊密な連携に意欲を見せる。
人財の可視化と自律的成長を支援するプロ人財視える化・育成ソリューションと、その“原点”として多面的な価値を創出し続ける人財育成システム。三菱UFJモルガン・スタンレー証券と日立は、今後も相互に知見を融合させながら、企業の効果的な人財育成と持続可能な人的資本経営を一歩一歩着実に前進させていく。
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三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
[所在地] 東京都千代田区大手町1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ
[創 立] 2009年12月1日(創業:1948年3月4日)
[従業員数] 5,688名(2025年3月31日現在)
[事業内容]個人・法人向けに国内外の株式・債券や投資信託などの金融商品の販売、企業の資金調達やM&Aアドバイザリーなど総合証券サービスを提供
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