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単なる管理のための可視化で終わらせない――三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社(以下、三菱UFJモルガン・スタンレー証券)が日立と共同開発したソリューションがめざすのは、求める人財の要件定義から現状の可視化、さらに学習プランの提示など成長への動機づけまでをサポートする仕組みだ。このソリューションのパイロットケースにもなった三菱UFJモルガン・スタンレー証券の社内システムは、どのような経緯で生まれ、そしてどのような効果を上げているのか。

タレント管理にとどまらない、立ち位置を自ら確認する仕組み

近年、ESG*¹対応にともなう人的資本の開示拡大や労働力減少、価値観の多様化や離職増を背景に、人事主導の画一的人財育成から現場主導の具体的人財育成への転換が求められている。ネット証券の台頭などによって事業環境が大きく変化している証券業界でも、対面チャネルの価値をどう再定義し、富裕層や法人のお客さまに対してどのように提案力を強化していくかは各社共通の課題だ。こうしたなか、三菱UFJモルガン・スタンレー証券では従来の商品説明型のビジネスモデルから、お客さまの真のニーズを捉え、資産運用にとどまらない幅広く専門的な提案を行うアドバイザリー型モデル*²へ転換した。そして、これを実践する担当者を「プロフェッショナル」として明確に位置づけた。

*1 Environment(環境)・Social(社会)・Governance(ガバナンス)
*2 アドバイザリー型モデル:お客さまの真のニーズを捉え、資産運用にとどまらない幅広く専門的な提案を行う同社のビジネスモデル

三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
業務企画部証券アカデミー 次長
木村 友理香 氏

同社ではこうした人財育成に関する基本方針を具現化していくための運用基盤として、お客さま担当者の自律的な成長を支援する社内システムを整備。2022年から運用を開始したこのシステムは、同社が定義する「プロ」の要件に照らした一人ひとりの現在地を可視化し、ステップアップに必要な教育プランや研修を提示することで、プロ人財への成長をナビゲートする仕組みだ。

人財育成を進める上での課題は明確だった。同社の業務企画部証券アカデミーで営業研修を企画・運営している木村 友理香氏は「人事評価や上司からのフィードバックなどはありましたが、お客さま担当者が自分の立ち位置を把握し、次にどんなテーマに取り組み、どの能力・スキルを強化させるべきかを自ら確認できる仕組みはありませんでした」と説明する。

従来のタレントマネジメントツールは、人事管理に主眼を置くものであり、同社が掲げる「プロ」の要件に照らした教育プランや研修に連動させることを目的としていなかった。本人が自律的に成長できる環境を整えるため、このシステムの開発に着手した。

自発性が導く現在地から成長への道筋

同社のCRM*³基盤上で提供する本システムの開発では、まず「現在地の確認」や「振り返り」といった中核機能を実装し、その後アジャイル手法で新たな機能を追加していった。また、視覚的負荷の少ないシンプルなインターフェースを徹底して磨き込み、直感的で分かりやすい操作性と視認性にこだわった。
*3 CustomerRelationship Management(顧客関係管理)

三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
ウェルス&ミドルマーケット本部 業務企画部システム業務室 開発推進課 部長代理
児玉 卓巳 氏

さらに運用面では、できるだけユーザーに過度な負担をかけないことに留意した。この点について同社の顧客管理系システムの開発・保守を担う児玉 卓巳氏は「本システムはユーザーの自律的な成長を促すための仕組みですし、日々のアクセスを強いるような運用は避けたかった」と説明する。実際に、ユーザーの利用は「毎日見る」のではなく、研修や自己学習の節目、機能リリースのタイミング、上司との面談前後など、要所で振り返る用途がメインとなっている。

本システムの利用が徐々に広がるにつれて、単なる「現状を把握するツール」ではなく、「成長のためのナビゲーター」として認知するユーザーも増えていった。「知識面と実践面の強化を支援する機能や人事処遇制度と連動する機能を順次追加していくなかで、これまでにはなかった種類の問い合わせが寄せられるようになりました」と、児玉氏はユーザー側の意識の変化を実感しているという。

種々の数値が示す確かな導入効果

こうした現在地の可視化・把握から次の学習へつなげる導線の整備に加え、営業支援機能の拡充にも取り組んだことでユーザー数は着実に増加。ユーザーの負担を抑えつつ段階的なエンハンスを通じて、本システムは実務の現場に自然に溶け込み、利用の裾野を広げていった。

そしてシステム稼働から3年、導入効果は複数の指標で顕在化している。まず、同社が定義する「プロ人財」の認定者数は約2倍に拡大し、資産運用ビジネスに必要な関連資格の保有者も倍増した。底上げの背景には、一人ひとりが現在地を確認し、必要な学習・研修へ次の一歩を踏み出すという好循環がある。

この好循環について、「当初に比べてプロ人財は確実に増え、一人ひとりの意識も高まっている実感があります。また、管理職の立場では、傘下組織のメンバーの状況も把握できることから、個別面談の場などでの活用も広がっており、振り返りや指導の手段としてこのシステムを利用する機会は確実に増えました」と木村氏。結果として、プロ認定者数と資格保有者数を増加させたこの社内システムは、同社が推し進めるアドバイザリー型モデルを支える人財の質的向上に大きく貢献している。

「第2回 プロ人財育成を、さまざまなビジネスへスケールさせる」はこちら>>

三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社
[所在地] 東京都千代田区大手町1-9-2 大手町フィナンシャルシティ グランキューブ
[創 立] 2009年12月1日(創業:1948年3月4日)
[従業員数] 5,688名(2025年3月31日現在)
[事業内容]個人・法人向けに国内外の株式・債券や投資信託などの金融商品の販売、企業の資金調達やM&Aアドバイザリーなど総合証券サービスを提供
三菱UFJモルガン・スタンレー証券株式会社のWebサイトへ

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