※ページトップの写真は発表者の皆さん(前列)とAIアンバサダー(後列)。
「「生成AI推進リーダー育成ワークショップ」開催!営業部門に500人超のAI活用の旗手たちが誕生(前編)」から読む >
ユースケースとその推進計画の発表
クラスAの最終日、生成AI推進リーダーたちが発表会場に集いました(一部メンバーはオンラインで参加)。

生成AI推進リーダー育成ワークショップ クラスAの最終日、約60名が会場に足を運んだ。
4日間にわたる「生成AI推進リーダー育成ワークショップ」の最終日には、期間中、参加者に課せられた「3つのユースケースの創出とその推進計画」の発表が行われます。会場には、リーダーたちのほか、アドバイザーとしてGenerative AIセンター本部長・AIアンバサダー 吉田 順、AIアンバサダー滝川 絵里、近藤 正勝、そして本ワークショップの主催元としてAIアンバサダー 大山 友和が同席しました。

左からGenerative AIセンター本部長・AIアンバサダー 吉田 順、AIアンバサダー 滝川 絵里、AIアンバサダー 近藤 正勝
定着への多様なアプローチを学べ
成果発表は、AIアンバサダー 大山の挨拶で幕を開けました。
大山は、発表にあたっては単なるユースケースの列挙ではなく、業務へのインプロセス化に焦点を当ててプレゼンしてほしいと強調しました。特に「どのように定着させるのか、推進計画を丁寧に示し、聞く側の皆さんはそこから多様なアプローチを学び取り、明日からの実践に役立ててほしい」と語りました。

AIアンバサダー 大山 友和
発表に際して、リーダーたちは10のグループに分かれてグループ内で議論し、代表として発表者を選出しました。今回のレポートでは、その中から5つのユースケースとその推進計画の概略を紹介します。
入社1か月でやることマニュアルの整備と自動化(公共システム部門・営業 安 俊浩)
人財の流動化がいっそう進む中、安は、入社した際の手続きの簡素化は組織に大きな効果をもたらすと述べます。
- 自組織の課題: 経験者採用社員や新人の入社後の各種手続きが、管理部門が多岐にわたるために複雑化しており、業務を圧迫している。
- ユースケース: 生成AIを活用して「1か月でやるべきことが一目で分かるガイド」を効率的に生成し、入社後の手続きの一元化をめざす。
- 期待効果: 業務習得に集中できる環境を整え、組織のパフォーマンス向上につなげる。
- 推進計画: 1か月目にインプット情報を収集し、マニュアルの枠組みを作成したうえで、パイロット版を開発し、課内で評価。2か月目には、関連部署の評価をもらいブラッシュアップを進め、部内に発表する。

【質疑応答】
「どのような障壁が考えられるか」という参加者からの質問に対し、安は「関与する管理部門が多岐にわたることや使っているシステムが異なるなどで、横断的に整理するのが難しいことが障壁になると考えられるが、ワークショップでの学びを生かしてクリアしたい」と答えました。
営業書類の定型フォーマット作成(関東支社・金融システム部門・営業 尾形 秀人)
提案活動の質の向上に向けて、営業書類の作成における無駄な工数は可能な限り削減したい、と尾形は話します。
- 自組織の課題:部署ごとに見積書・注文書・請求書など営業書類のフォーマットが統一されていないため、事務処理に手間がかかっている。
- ユースケース:生成AIを活用して、各部署共通の定型フォーマットを作成する。
- 期待効果:各種営業書類作成の事務工数を約30%削減。
- 推進計画:1か月目はグループで現状課題の棚卸しを行いながらプロンプトを試行。2か月目には、実際に書類作成に生成AIを活用し、課題共有とブラッシュアップを進める。3か月目には課内で利用方法を共有し実業務で活用。さらに部内での活用に向けて準備を行う。

【質疑応答】
AIアンバサダーの近藤より「ツールによっては不要な情報が混ざるリスクがある。用途ごとにツールを使い分けることが大切」という助言。さらにGenerative AIセンター本部長の吉田より「事務効率化に重点が置かれているようだが、ぜひ攻めの視点も取り入れてほしい」という指摘に対し、尾形は「今後は顧客アプローチや提案の強化に向けた活用も検討したい」と答えました。
マーケット分析における初期調査の精度向上(デジタルシステム&サービス営業統括本部・マーケティング部門 長田 将秀)
属人的なスキルに依存している業務に生成AIを適用することで、効率化と同時に新たな視点の獲得をめざしたい、と長田は話します。
- 自組織の課題: マーケットを見極め自社の事業機会の創出をめざすにあたり、検討対象となるテーマの分析が熟練者の洞察力に依存している。
- ユースケース: 熟練者によるテーマの分析方法を整理し、生成AIに使わせることで初期調査の精度を上げる。
- 期待効果: 分析業務の属人化の解消、および効率化による分析可能なテーマ数の増加。
- 推進計画: 1か月目はインプット内容の整理とともにプロンプトの大枠を決定。2か月目は、1か月かけてしっかり精査を行いながらパイロット版を作成。3か月目にはパイロット利用および評価を行い、今後の修正方針を策定する。

【質疑応答】
AIアンバサダーの滝川から「生成AIは平均的な答えに収束しがちだが、明確な役割を与えることで独創的な答えを引き出せる可能性がある」という助言。これに対し長田は「AIには敢えて尖った役割を設定することで、多様な発想を得られるのではないかと考えている。実務では平均的な意見と尖った意見を突き合わせることで、意思決定に生かすことが出来るか検討していきたい」と答えました。
社内提案書の自動作成(関西支社・社会システム部門・営業 南 郁也)
生成AIを活用してお客さまとの対応時間を増やしながら、提案数も増やしたい、と南は話します。
- 自組織の課題:決裁会議資料など社内提案書の作成に時間がかかり、お客さまとの対話や顧客価値の向上に資する施策を検討する時間を圧迫している。
- ユースケース:過去提案の成功事例を学習した生成AIによる提案書作成の支援。
- 期待効果:週10時間の作成時間を5時間に短縮。提案書の品質の底上げも実現。
- 推進計画:生成AIの浸透が進んでいない部署のため、1か月目は勉強会を開催。2か月目には、要件定義、データの準備、プロンプト設計、試行運用と評価までを行い、3か月目には仮運用および効果測定を経て、本番運用を開始する。

【質疑応答】
AIアンバサダーの滝川から「生成AIはできることが日々増えているので、関心のあることはどんどん試してみて業務に生かしてほしい」と助言。また、南の部署の浸透が遅れている理由について聞かれると、南は「便利さをまだ体感できていないことが予想されるので、まずは勉強会に力を入れたい」と意欲を示しました。
議事録自動化とニューストレンドの効率的収集(中部支社・製造業向け営業 山下 千紘)
お客さまとの対面時間をより充実したものにするために生成AIは有効、と山下は語ります。
- 自組織の課題: お客さまとの対面前の情報収集や対面時の議事録作成において、効果的な手法が確立されていない。
- ユースケース: ニュースサマリーの抽出と議事録作成に生成AIを活用する。
- 期待効果: ニュースチェック時間を15分→5分に。議事録作成を30分→5分に。お客さまとの対面時間の充実化を実現。
- 推進計画: 1か月目は、議事録作成について要件定義を行い、PoCを設計する。2か月目には、社内PoCをスタートさせ、評価とプロンプト改善を重ねた後に、お客さまとの会議での運用を開始。3か月目には、ニュースサマリーの抽出についてPoCをスタートさせ、評価とプロンプト改善を行ったうえで本運用へ移行する。

【質疑応答】
Generative AIセンター本部長の吉田より「営業の皆さんには、会議中には議事録よりもお客さまに集中してほしい。しっかり目を見て対話することで、いろいろなことが感じ取れるはず。議事録作成を突破口に、ぜひ活用率100%を達成してほしい」と助言。これに対し、山下は「『録音をお願いしにくい』という方もいるかもしれないが、今は多くのお客さまが生成AIに対して好意的なので、生成AIによる議事録作成は関係構築の上でも役立っている」と答えました。
日立の営業を生成AI活用の最前線へ
10人の成果発表を受け、最後にGenerative AIセンター本部長・AIアンバサダーの吉田が総評を述べました。
吉田は「日立の周囲を見れば、競合他社だけでなく、お客さまやパートナーも生成AIの高度な活用に本腰を入れており、さらに学生の皆さんの活用スキルにも驚かされる。そうした中で、日立の営業にはぜひ最前線にいてほしい」と述べました。
さらに「今日ここにいる皆さんが、そのカギを握っている。推進計画の実践については、ぜひ前倒しで取り組んでほしい」と生成AI推進リーダーたちへの鼓舞で挨拶を締めくくり、「生成AI推進リーダー育成ワークショップ」クラスAの最終日は幕を閉じました。

Generative AIセンター本部長・Aiアンバサダー 吉田 順