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日立市と日立製作所は、2023年12月「デジタルを活用した次世代未来都市(スマートシティ)計画に向けた包括連携協定」を締結。翌年4月には、次世代未来都市共創プロジェクト(以下、共創プロジェクト)を始動しました。3つのテーマの中の「グリーン産業都市の構築」は、現在どのような状況にあるのか。全5回のシリーズでお届けする本企画の第3回後編は、日立市 共創プロジェクト推進本部 課長 関 充夫氏、課長補佐 樫村 裕也氏、日立製作所 大久保 亮に、コンソーシアムによる産学金官の連携などプロジェクトの広がりを中心に話を聞きました。

【第3回】地域の脱炭素化をデジタル技術で推進する「グリーン産業都市の構築」(前編)から読む >

コンソーシアムの取り組み

―― 日立市の脱炭素化をめざすコンソーシアム「中小企業脱炭素経営促進コンソーシアム」について教えてください。

樫村氏
2022年に市内中小企業の脱炭素化の実現に向けた産学金官による「日立市中小企業脱炭素経営促進コンソーシアム」が立ち上がりました。日立製作所などの地元の企業や大学、銀行、自治体が連携して、中小企業の脱炭素化を考えるコンソーシアムになっていて、そこで日立製作所の「EcoAssist-Enterprise」というCO2排出量を見える化するシステムを紹介していただきました。コンソーシアムで検討した結果、中小企業の脱炭素化を進めるためにこのシステムを活用していくことが決まり、そのまま2024年からの共創プロジェクトで継続して取り組んでいます。

画像1: コンソーシアムの取り組み

コンソーシアムには、関東経済産業局や関東地方環境事務所、茨城県にも入っていただいており、県と連携してシンポジウムなども行っています。また、茨城大学の教授にコンソーシアムの座長をお願いしているのですが、茨城大学でもカーボンリサイクルエネルギー研究センターという研究施設を立ち上げていまして、大気中の二酸化炭素を吸収して燃料化するといった研究をされているので、将来的にその技術を日立市で産業化できないか、あるいはその仕組みを日立市の中小企業で使えないかといったことも検討させていただいています。

他にも日立市内にキャンパスがある茨城キリスト教大学の経営学部の教授には、経営の観点から中小企業に脱炭素を広める方法を一緒に考えていただいていて、シンポジウムの場で脱炭素の取り組みの意義について講演をお願いしています。

画像2: コンソーシアムの取り組み

プロジェクトの次のステップ

―― スタートから約1年半が経過しましたが、「グリーン産業都市の構築」の次のステップはどうなるのでしょうか。

大久保
昨年度は、再生可能エネルギーの地産地消に関する取り組みを地域でどういう事業にしていくかというマスタープランを、総務省の補助金を使って市役所の方と一緒に策定しましたが、今年度以降はそれを詳細化して実行に移していくことになります。まずは地域内での実証を進めていく上で具体的にどんな機器を調達・導入すればいいかなどの事業設計を、マスタープランに沿って進めていきます。

画像1: プロジェクトの次のステップ

関氏
中小企業の脱炭素支援については、すでに取り組みが進められていますが、再生可能エネルギーの地産地消などの取り組みは、これから具体化していくもので、現在進行形で取り組んでいます。私たちのチームは一朝一夕で完結するテーマではなく、長期的に取り組む必要があるものが多いです。そのため、最初から大きく動き出すのではなく、小さな取り組みから始めて試行錯誤を重ねながら、少しずつ進めて、実装していくことが重要だと考えています。

画像2: プロジェクトの次のステップ

大久保
施策の実装にはコストがかかりますから、国の補助金などの活用も検討していくことになるのですが、私たちが検討している内容にマッチする補助金が来年度以降もあるのかはわかりません。関係する環境省や経済産業省などが、納得して補助金を出せるような事業設計を作ることも、これからの課題です。

関氏
日立市と日立製作所だけで進められることには限りがあります。これから先は、より多くの仲間を増やしていくことが何よりも重要だと考えています。コンソーシアムのようなステークホルダー、そして地域の中小企業や市民の皆さんを巻き込んでいくことが不可欠です。それらの方々の理解を得ながら進めなければ、この共創プロジェクトを進めることは難しくなります。そして何より、社会課題の解決に向けた本プロジェクトに「共感」を持っていただくことが、多くの仲間を取り込むことにつながるので、この姿勢を大切にしながら、前に進めていきたいと考えています。

新しい仕事の手ごたえ

―― この共創プロジェクトに関わるようになってから、仕事の手ごたえは変わりましたか。

大久保
民間企業である日立製作所と、行政機関である日立市とでは、めざしているもの、施策に対する考え方など異なる点も多かったのですが、1年以上かけて、このまちをどうしていきたいかという将来像やビジョンについて議論し、方向性を探るといった経験を共有することで、今は同じ目標に向かって当初より建設的な議論ができる共創パートナーの関係性になってきたという実感があります。これは私にとっては大きな手ごたえです。

樫村氏
私の場合、共創プロジェクト以前からコンソーシアムや脱炭素経営支援システムなど関連することに取り組んできていますので、手ごたえを改めて感じるというよりは、これまで行政ではできなかったことが、この共創プロジェクトならできるのではという期待感と、必ず実現したいという強い思いがあります。これからひとつずつ積み重ねていくことで、何かつかめればと思っています。

関氏
私自身、この共創プロジェクトに関わるようになって3カ月ほどで、正直なところ、まだ大きな手ごたえを感じているわけではありません。それでも、さまざまな場面でこの取り組みが話題に上がることが多く、周囲からの関心の高さを実感しています。そして、双方が同じ目標に向かって、もっと議論を進めていくことで、何かを得られる、何かを変えられるのではないか、という大きな期待感を強く感じています。

お互いの存在

―― 日立市から見て、日立製作所はどういった存在ですか。

樫村氏
私はずっと日立市で働いてきましたから、ごく当たり前にそこにある企業が日立製作所でした。しかし以前に、全国から参加される脱炭素の取り組みの会合に出た時、日立市だから日立製作所と組めるというのは強みですねと皆さん話されるのです。外から見ると、日立製作所は日立市にとって当たり前ではない存在だということがその時にわかりました。

関氏
日立製作所は、100年以上にわたりこの地に根ざし、地域とともに歩んできました。現在でも、家族の中に「日立製作所で働いていた」という人は少なくありません。それほどまでに、日立製作所は私たちの暮らしや地域の文化に深く根付いており、今では日立市の個性や特徴のひとつといえる存在になっていると感じます。

―― 日立製作所から見て、日立市はどういった存在ですか。

大久保
もちろん日立製作所にとって日立市は創業の地であり、今後もそれは変わることはありません。以前から愛着もあり日立製作所として所縁のある場所として認識していましたが、この共創プロジェクトで共に事業を進めるようになってからは、日立市は新しいパートナーという存在に変わりました。今では、地方創生のモデルを共に作りあげていくために、なくてはならないパートナーだと感じています。

「日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト」の記事一覧はこちら>

画像1: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第3回】地域の脱炭素化をデジタル技術で推進する「グリーン産業都市の構築」(後編)

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山積する社会課題の解決、そして環境・幸福・経済成長が調和する「ハーモナイズドソサエティ」の実現をめざす日立製作所は、創業の地である日立市とともに「次世代未来都市」に向けチャレンジしています。(取り組み領域は、エネルギー、交通、ヘルスケアなど。)
日立が得意なデジタルを活用した次世代社会システムの整備は有力な解決手段です。 そしてさらに、両者の「共創プロジェクト」がめざすのは、市民が自ら参加し創る未来社会。住みやすい地域や都市づくりには何が必要なのか。本セッションでは、日立市のプロジェクトリーダーである小山修氏、自治体でのアドバイザー経歴もある山口周氏、生まれ故郷の町おこしに尽力するバービー氏を迎え議論していきます。
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画像2: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第3回】地域の脱炭素化をデジタル技術で推進する「グリーン産業都市の構築」(後編)

関 充夫(せき みつお)
日立市
共創プロジェクト推進本部 課長(グリーン産業都市担当)

1998年に日立市役所(旧十王町役場)に入所。15年間都市計画や市街地開発に携わり、2025年より現職。

画像3: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第3回】地域の脱炭素化をデジタル技術で推進する「グリーン産業都市の構築」(後編)

樫村 裕也(かしむら ゆうや)
日立市
共創プロジェクト推進本部 課長補佐

2003年に日立市役所に入所。5年目より経済産業省地方支分部局に3年間出向、商工振興課の後、2024年より現職。

画像4: 日立市×日立 次世代未来都市共創プロジェクト
【第3回】地域の脱炭素化をデジタル技術で推進する「グリーン産業都市の構築」(後編)

大久保 亮(おおくぼ りょう)

株式会社 日立製作所
社会イノベーション事業統括本部
サステナブルソサエティ事業創生本部 サステナブルソサエティ第三部 主任技師
兼 ひたち協創プロジェクト推進本部 グリーン産業センタ 市役所常駐者

2006年に日立製作所に入社。電力会社向け業務システム開発、エネルギー関連や産業関連の設備管理システム開発、デジタルを活用した新規事業の開発、エネルギー分野における新規事業開拓に取り組む。2024年より現職。

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