Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
開発業務でのデータ活用の本格導入に向けて解析エンジニアの社内育成をめざす花王株式会社(以下、花王)。その初動を担ったのが、日立のデータサイエンティスト高原 渉(以下、高原)による講演とWeb講義です。そこで語られた現場に根差すリアルな言葉は多くの聴講者を引きつけ、業務改革に向けた機運を後押ししていきます。

「第1回 人が育つから、技術が生きる データ活用の第一歩」から読む>

組織文化への共鳴を意識した講演設計

花王によるデータサイエンス人財育成プロジェクトの起点となったのが、2023年9月から10月にかけて実施された日立の高原による講演です。リアル/オンライン聴講者合わせて計約230名が参加したこの講演は大きな注目を集めました。高原はこの講演を単なる知識提供の場ではなく、花王の文化と向き合いながら「関心の地ならし」をする機会と位置づけ、事前に花王側と綿密な打ち合わせを重ねたといいます。

画像1: 花王株式会社「MIコンサルティング導入事例:データサイエンス人財育成プロジェクト」
【第2回】現場に届いた手応え──講演と講義で種をまく

株式会社 日立製作所
公共システム事業部 公共基盤ソリューション本部
デジタルソリューション推進部
技師 日立認定データサイエンティスト(プラチナ)
高原 渉

高原
これまで私は材料開発やMIの立ち上げに携わってきましたが、講演には開発や製造プロセスに関わる職種以外の方々も参加されると聞きました。そこで、どのような職種の方々であっても“この話は自分には関係ない”と感じさせないように、あえてMIの色彩を前面には出さず、“モノづくりに資するデータサイエンス”という文脈で講演を組み立てました。

画像2: 花王株式会社「MIコンサルティング導入事例:データサイエンス人財育成プロジェクト」
【第2回】現場に届いた手応え──講演と講義で種をまく

花王株式会社
デジタル戦略部門 DXソリューションズセンター
SCM DX共創部 データインテグレーショングループ
愛須 光 氏

愛須氏
私はデジタル戦略部門の所属ではありますが、今回講演を通じて開発・製造現場の方々が“こういうことをやりたい”と具体的なテーマを挙げてくださった点が印象に残っています。データサイエンスが現場の課題解決にどう役立つかを実感できた学びの機会になり、結果としてSCM部門全体の意識の底上げや心理的なハードルの引き下げにもつながったのではないでしょうか。

※ サプライチェーン・マネジメント

画像3: 花王株式会社「MIコンサルティング導入事例:データサイエンス人財育成プロジェクト」
【第2回】現場に届いた手応え──講演と講義で種をまく

花王株式会社
デジタル戦略部門 DXソリューションズセンター
SCM DX共創部 データインテグレーショングループ
マネジャー
田村 仁 氏

田村氏
当社には原理原則を重視し、本質的な課題解決に熱心なエンジニアも多く、新しいものがすぐに受け入れられるとは限りません。それが分かっていたからこそ、“この課題のここに効く”という具体的な話に焦点を定めた高原さんの講演が皆に響いたのでしょう。

“お悩み相談室”と化した想定外の質疑応答

特に印象的だったのは、講演後の質疑応答のセッションだったとか。想定をはるかに上回る質問が飛び交い、会場の熱量は一気に高まったといいます。

高原
初回の1時間ほどの講演の後には質疑応答が1時間半以上続き、それでも収まりきらず、その後も私のところへ個別質問に訪れる方が続きました。寄せられた質問はいずれも鋭い内容で、会場全体がまるで“お悩み相談室”のような熱気に包まれていました。

田村氏
あれだけ大きな反応があるとは、まったく想定外でした。導入講演の段階ではデータサイエンスへの関心は限定的だと思っていましたが、“興味を持っている社員がこんなにも多かったのか”と率直に驚かされましたね。

講義で広がる共感と当事者意識

その後、高原は業務に直結する実践的なスキル習得のためのWeb講義を2023年11月から12月にかけて隔週4回にわたって実施しました。講演時に回答しきれなかった質問についても整理したうえで、初回のWeb講義で対応。さらに、以降の講義は花王からのフィードバックを反映しながら毎回調整が加えられ、受講者との接点が丁寧に育まれていきました。講義には毎回約100名もの受講者が集い、そこで展開されたテーマや問題意識は回を重ねるごとに社内の幅広い層に浸透していきます。

高原
毎回“こういう思いを伝えてほしい”という田村さまからのオーダーをしっかり受け取って、それを私なりに咀嚼(そしゃく)し、講義内容の相当部分をオーダーメイドで構成しました。自分の業務に関連づけて考えてもらえるよう、どんな人が聞いても“使えそう!”と思っていただけるように工夫したのがポイントです。

画像4: 花王株式会社「MIコンサルティング導入事例:データサイエンス人財育成プロジェクト」
【第2回】現場に届いた手応え──講演と講義で種をまく

花王株式会社
SCM部門 技術開発センター
生産要素技術グループ(製造制御技術)
グループリーダー
高橋 滋樹 氏

高橋氏
講義内容は本当に“現場で使える知識”として落とし込まれていて、紹介事例も自分たちの業務にピタッとはまり、“これが自分のやりたかったことだ”と分かりました。特にデータの整理やまとめ方についての話は大いに参考になり、実務での使い方をより具体的にイメージできました。

愛須氏
受講を通じて実感したのが、機械学習モデルの構築だけでなく、その設計段階や現場の知見を生かした運用の重要性です。小さな検証を積み重ね、分析業務に活用する開発現場との信頼関係の大切さにも気づかされました。

田村氏
毎回の講義後には“難しすぎなかったか?”とか“次はどうするか?”といったアンケートを取っていました。その回答をもとに、そのつど次の内容を少しずつカスタマイズするなど、受講者の反応に応じた柔軟な講義にできたと思います。

画像5: 花王株式会社「MIコンサルティング導入事例:データサイエンス人財育成プロジェクト」
【第2回】現場に届いた手応え──講演と講義で種をまく

花王株式会社
SCM部門 技術開発センター
生産要素技術グループ(製造制御技術)
田中 伸明 氏

田中氏
もともとデータサイエンス活用に興味がありましたが、少し遠い世界だとも感じていました。しかし高原さんの講義を受けて、“今この分野に触れられるチャンスを逃したくない”と考え、その後のコンサルティングによる伴走型のテーマ推進(以下、伴走型テーマ推進)へ、自身の業務領域における課題をテーマに応募しました。

高原による講演とWeb講義は、データサイエンス導入の単なる入り口にとどまらず、多くの社員の意識と行動を変える転機となりました。分かりやすさと実務への接続性、そして対話を重視した姿勢が育んだ共感は、次なる伴走型テーマ推進へと継承されていきます。

「第3回 伴走型テーマ推進で支援から実践へ──」はこちら>

花王株式会社「MIコンサルティング導入事例:データサイエンス人財育成プロジェクト」の記事一覧はこちら>

花王株式会社

[所在地] 東京都中央区日本橋茅場町一丁目14番10号
[創 業] 1887年6月
[従業員数] 7,861名
[事業内容] コンシューマープロダクツ事業製品、ケミカル事業製品の製造、販売を主な事業としているほか、これらに附帯するサービス業務等

花王株式会社のWebサイトへ

画像6: 花王株式会社「MIコンサルティング導入事例:データサイエンス人財育成プロジェクト」
【第2回】現場に届いた手応え──講演と講義で種をまく

高原 渉
株式会社 日立製作所
公共システム事業部 公共基盤ソリューション本部
デジタルソリューション推進部
技師 日立認定データサイエンティスト(プラチナ)

大学院では材料工学を専攻。メーカーでのMIを活用した材料開発業務を経て、日立製作所入社。 現在は、データサイエンティストとして日立の材料開発ソリューションに従事。趣味はデータ分析で、プライベートでデータ分析コンペティションに参加している。Kaggleコンペティション「Vesuvius Challenge - Ink Detection」準優勝。Nishikaコンペティション「材料の物性予測」3位入賞。Kaggle Master*。社外講演等の活動も多く、MIの普及促進を行っている。

*世界的なAIのデータ分析コンペティションプラットフォーム「Kaggle(カグル)」における称号。「日立のデータサイエンティストが、世界的なAIデータ分析コンペ「Kaggle」で準優勝し、Kaggle Masterに昇格」(2023年7月18日)

日立アカデミー主催「マテリアルズ・インフォマティクスで学ぶ製造業の現場におけるAI実践活用講座」のご案内
材料開発におけるデータ活用が本格化し、マテリアルズ・インフォマティクス(MI)の導入が広がっています。本コースでは、データ分析の考え方・AIフレンドリーなデータのあり方・AIプロジェクトの進め方(要件整理・タスク設計)などの基礎から、各種データ(表形式・画像・テキスト・スペクトル・時系列・材料構造、など)における機械学習モデルの構築・活用及び生成AI(LLM)+ RAGやプロジェクトにおいてしばしば直面する状況とそれに応じた対処法までを講義します。本講座では、本記事にてMIをご説明している高原が講義を行います。

開催日時:2025年9月1日(月)10時~17時
詳細・お申し込みはこちら(日立アカデミーのWebサイトへ)

他社登録商標
Excelは米国Microsoft社の日本およびその他の国における登録商標または商標です。
本誌記載の会社名、商品名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。

This article is a sponsored article by
''.