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日立グループは、東京ビッグサイトで開催される小売業向け日本最大規模の展示会リテールテックJAPAN2025への出展にあたり、生成AIを多角的に活用。前回のコンセプト映像の制作事例に続き、今回は、ブースデザインにおける画像生成AIの活用について紹介します。話をするのは、日立製作所 産業・流通営業統括本部でプロモーションに携わる山田将人と、本取り組みで生成AI活用を支援した日立製作所 GenAIアンバサダーの大山友和の二人です。さらに日立製作所 研究開発グループのデザイナー 黒澤雄一も交え、ビジネスにおける画像や映像の活用に話は及びました。

前編はこちら>

1時間足らずで5案のパース図を生成

大山
最初、山田さんから私のところに「リテールテックJAPAN2025の日立グループブースのデザインを生成AIでできないだろうか」という相談がありましたが、それはどのような経緯からだったのでしょうか。

画像: 1時間足らずで5案のパース図を生成

山田
リテールテックJAPAN2025の日立グループブースでは、私たちの策定した2035年の小売業のあるべき将来像、「日立リテールビジョン」を表現しようと考えていました。そのビジョンでは生成AIの活用も重要なアピールポイントの一つなのですが、それならば展示ブースのデザイン自体も生成AIで行えば話題になり、訴求の補強になるのでは、という気持ちでGenAIアンバサダーである大山さんに協力を依頼しました。

もちろんその時点では、ちゃんと使えるデザインが生成されるかどうか半信半疑だったのですが、2日後くらいに大山さんから生成AIが作成した5案のパース図(ブースのフォトリアルな完成予想図)を見せられて、そのクオリティに驚きました。そして、制作時間の短さもさすが生成AIだと感心しました。通常、代理店にブースデザインを依頼して5案のパース図作成をお願いすると数週間は必要ですし、もちろんそのぶんコストもかかります。

大山
2日後になってしまったのはタイミングが合わなかったからなのです。実はこちらの作業は1時間もかかっていません。申し訳ありません(笑)。

エグゼクティブサマリーの作成

画像1: エグゼクティブサマリーの作成

大山
具体的な作業の内容ですが、はじめにデザインコンセプトを決め、次にそのコンセプトに基づいてデザイン生成を行うという2ステップを踏むことにしました。私はデザインの経験はないのですが、人がやるならばそのようなプロセスを採るだろう、と考えたからです。そして、コンセプトの策定には鮮度の高い情報をブラウジングすることが得意な生成AIを、デザイン作業には、建築パース図の作成に強い画像生成AIを用いることにしました。

まず、山田さんから提供された「リテールビジョン」のコンセプト図やテキストによる関連資料を生成AIに読み込ませ、デザインコンセプトを5案、考えてもらいました。それが次の表になります。

画像2: エグゼクティブサマリーの作成

そして、画像生成AIにデザインを生成させるため、これら5案のデザインコンセプトとブース面積など仕様に関する情報を読み込ませました。そして生成されたのが次の画像です。ちなみに画像生成AIで狙った画像を得るには、絵のテイストなどを指示しなければならず、私には適切なワードが思い付かないので、生成AIに画像生成AI用のプロンプトを作成してもらいました。

画像3: エグゼクティブサマリーの作成

デザイン制作期間を約1か月短縮

大山
私としては、期待を裏切らないものが生成されたという手応えがあったので、山田さんに提出したのですが、これらの案を見た時、どう思いましたか。

山田
関係者はみんな、これはすごい、という感想でした。どの案も「日立リテールビジョン」のテーマである「ムリ・ムダ・ムラのない、モノと人財の好循環社会」がしっかり表現されているうえに、それぞれ異なる切り口でデザイン上の工夫が施され人を惹きつけるブースになっています。この案の中から方向性を選ぼう、ということになりましたが、どの案もきわめてスタイリッシュなため費用面が懸念され、大山さんに相談するとすぐに概算見積もりが届きました。費用も生成AIで算出できるのですね。

大山
はい。費用と、使用部材や必要な映像機器など費用の根拠となる情報をざっくりと出すことができます。

山田
概算を見ると残念ながらどの案も予算をかなりオーバーしており、そのまま実現することは困難となったのですが、我々のビジョンにもっともふさわしく感じた案1の「循環の調和」が、使用機器を省くなどすればこのイメージを踏襲できると判断し、方向性は案1に決定。そして案1をベースに代理店と打ち合わせを行い、グリーンの壁、曲線を使ったロゴ周りなど踏襲して欲しい要素を伝え、予算に基づいたパース図を作成してもらいました。

これまでの、代理店にデザイン作業をお任せするやり方だと、イメージが合うまで何度もやり取りする必要がありましたが、今回は予め私たちの要望が生成AIにより明確化されていたことで手戻りが最小化され、デザイン制作期間を約1か月、短縮することができました。

画像: 実際の予算や展示会の施工規定に基づいて制作されたパース図

実際の予算や展示会の施工規定に基づいて制作されたパース図

大山
今回は生成AIのデザインをそのまま実現することはかないませんでしたが、関係者間のイメージ合わせを迅速化し、リードタイムを短縮するのに生成AIは大きな威力を発揮しました。今後の挑戦は、予算をはじめ実際的な制約もプロンプトに組み入れることで、どこまで現実との差異を縮めることができるか、ということでしょうか。

生成AIと並走し、学び続ける

大山
ここからは生成AIを活用したコンセプト映像制作に携わった黒澤さん(前編参照)に再び加わってもらい、今後のビジネスにおけるAIで生成した動画や画像の活用の可能性について聞いてみます。

画像: 生成AIと並走し、学び続ける

黒澤
画像や映像の生成AIは、強力なビジョン共有ツールになっていくと思います。例えば生成AIの出力スピードを生かして、未来シナリオを描くワークショップなどで活用したら面白いかもしれません。ブレインストーミングを行った後で、その結果をプロンプトにして画像や映像を生成してメンバーで共有するのです。ブレなくイメージ豊かに世界観を共有できるでしょう。

山田
これまで画像や映像の制作は、専門的な知識を必要とするものとされてきましたが、生成AIによってこうした垣根は取り払われていくのだと今回感じました。我々が携わるプロモーション業務はもちろん、営業担当者がプレゼンテーションで、教育担当者がセミナーで、自分で作った画像や映像を手軽に活用する世界がもう来ているのだと思います。

大山
AIの黎明期には、人間がやりたいことに対して、AIができることはほんの一部でした。ところが今はそれが完全に逆転し、生成AIに触れるたびに、私たちの想像を超えるものが出力されるようになってきています。この状況において私たちが生成AIの力を最大限活用するためには、AIファーストの徹底が不可欠です。定型業務、意思決定、そして今回のような画像や映像の制作——何事においても、まず生成AIを活用してみる。有益な出力なら利用するし、そうでなければ人間がやればいい。進化し続ける生成AIと並走しながら、とにかく活用し、学び続けることだと思います。

画像1: 業務別!生成AI使いこなし術
【第4回】プロモーション部門編(後編)

山田 将人(やまだ まさと)

株式会社 日立製作所 産業・流通営業統括本部
第四営業本部 リテールシステム営業部
主任

日立製作所に入社後、小売業向けソリューション営業を担当後、モバイル関連部門にて事業戦略、経営企画、ブランド戦略、広報戦略等を経験。その後、流通業向けのマーケティング業務や社内教育・セミナー・イベント企画、展示会企画や運営に携わる。CEATEC2019では企画したビジネスアイデアを特許出願し、2023年度に特許取得。

画像2: 業務別!生成AI使いこなし術
【第4回】プロモーション部門編(後編)

黒澤 雄一(くろさわ ゆういち)

株式会社 日立製作所 研究開発グループ
Digital Innovation R&D
デザインセンタ ストラテジックデザイン部
デザイナー

日立製作所に入社後、宇宙技術の開発部門に配属され、人工衛星の搭載ユニット開発などを経験した後、衛星を活用した放送サービスの企画・開発に従事。その後、デザイン本部へ移り、鉄道の車内ディスプレイを活用したサービスの企画・開発などを担当。現在は、エネルギーからリテールまでさまざまな事業における未来戦略のコンセプトの策定に携わる。

画像3: 業務別!生成AI使いこなし術
【第4回】プロモーション部門編(後編)

大山 友和(おおやま ともかず)

株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit フロントサポートセンター チーフプランニングエキスパート
GenAIアンバサダー

コンサルティング部門にて、営業業務改革、新規事業の立上げなどに従事した後、日立コンサルティングにて、基幹業務システム構築などを担当。プロジェクトリーダーとして、システム企画・構築・運用全般を統括その後、営業バックオフィスを支える業務システム全般を統括。現在、営業部門の生成AI徹底活用プロジェクトの取りまとめとして、講演活動、ナレッジ蓄積、社内コミュニティ運営、人材育成などの取組みを推進中。

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