レジリエンス強化に向けた計画修繕管理の新サービス「修繕プラットフォーム」
東京海上日動火災保険株式会社(以下、東京海上日動)は、商業施設・設備の計画修繕を管理する「修繕プラットフォーム」を開発し、顧客向けに提供を開始しました。修繕プラットフォームは複数の施設・設備の管理が可能なクラウドサービスで、従来の保険商品の枠から一歩踏み出した新しいサービスです。
この修繕プラットフォームが誕生した背景には、東京海上日動がレジリエンスを重要な社会課題分野の1つとして新たに掲げ、マーケット戦略部の部内にレジリエンス室を新設して「インフラ・設備保全」「サプライチェーンマネジメント」「防災・減災」の3つのテーマへの取り組みを始めたことがあります。

東京海上日動火災保険株式会社
マーケット戦略部
企業戦略室 兼 レジリエンス室 課長
川口 健太 氏
修繕プラットフォームの開発理由について、マーケット戦略部 企業戦略室 兼 レジリエンス室の川口健太氏は、昨今の自然災害の激甚化や地政学上のリスクの高まりを挙げ、「安心で安全な事業活動や店舗づくりをご支援するのが部門の役割で、その一環で修繕プラットフォームの開発に至りました。」と説明します。お客さまの業界課題や経営課題の解決に向けて、データを活用して修繕を後押しする独自の保険商品や修繕計画を支える新しいソリューションを提供するため、日立ソリューションズの設備修繕計画最適化サービス(以下、S4)をベースに修繕プラットフォームを開発・提供する新たな挑戦が始まりました。
保険商品の枠組みを超えてお客さまの課題に貢献するサービスを企画
修繕プラットフォームの開発は、小売業界のお客さまの課題を聞く中から始まった、と企画立案時を振り返るのはマーケット戦略部 企業戦略室 兼 レジリエンス室の五十嵐 直人氏です。五十嵐氏は、保険金を支払うだけでは東京海上日動の機能として不十分で、業界共通の課題や経営課題になるのではと考え、計画修繕を後押しする修繕プラットフォームの企画を検討し始めました。マーケット戦略部は、1つの営業部門では対応が難しい課題に大きな解決策を提供する役割を担うため、営業担当者へのヒアリングや施設管理を行うお客さまへのニーズ調査を通じて、施設管理の具体的な課題の共通項を集約していきました。

東京海上日動火災保険株式会社
マーケット戦略部
企業戦略室 兼 レジリエンス室 課長代理
五十嵐 直人 氏
五十嵐氏は、「従来の保険商品では、お客さまの総務部門や管理部門が窓口になることが多いのですが、計画修繕では現場を知ることが重要なため、現場でリアルな声を伺ってソリューションに反映させました。」と話します。五十嵐氏は元々営業出身ですが、「現場から一歩離れているため、現場の声を重視してしっかり話を聞くことが重要」と言い、お客さまのさまざまな部門や声にしっかりと応えて届けきるソリューションを作る必要がありました。特にサービスの作り込みでは、店舗建設部をはじめとした修繕担当部署に細かなニーズを聞きながら、ソリューションの細部まで検討を進めました。
保険商品とは異質な取り組みのために議論も発生
修繕プラットフォームは、施設や設備の計画修繕を簡単に見える化できる点に大きなメリットがありますが、川口氏は、「大手のお客さまもいるので、それは当たり前にやっているでしょう、という社内の反応もありました。」と、当時の社内の状況を説明します。しかし、顧客の業界内の多くでは共通した課題があり、お客さまのリアルな声やファクトを伝えることで、社内からも受け入れられました。こうしてプロジェクトの企画内容を煮詰めていく一方で、新たな関門が出てきます。
東京海上日動は保険が本業で、自動車保険や火災保険などのわかりやすい保険商品を長年提供しており、修繕プラットフォームは新しい取り組みになります。
川口氏によると、動機づけや方向感、リスクなど、前例が無い中での整理が必要になり、法務やITリスク管理などからは、「そもそも実施してよいのか」「会社としてどうか」などという話も出てきたため、これらの対応や調整は決して簡単ではありませんでした。しかし、五十嵐氏がプロダクトアウトにならずにお客さま起点の軸に戻り、課題の真因をしっかり押さえて説得力のある課題と解決策を提示できたので周囲を説得できた、と川口氏は説明します。
その後、日立との修繕プラットフォームの開発への取り組みも始まりますが、日立と一緒に、日立グループの技術とノウハウを活用して商品とサービスをセットで提供できるシナリオを描き、取り組みを推進する道筋をつくりました。
企画段階からのさまざまなハードルを乗り越え、プロジェクトにゴーサインが出て、東京海上日動の新しい開発プロジェクトが本格的に動き出しました。
「第2回 レジリエンス強化の視点から施設・設備の管理サービスを開発」はこちら>
東京海上日動火災保険株式会社
[所在地] 東京都千代田区大手町二丁目6番4号
[創 業] 1879年8月
[従業員数] 16,645名(全社)
[事業内容] 日本の損害保険業界を代表する大手損害保険会社であり、日本初の保険会社を前身とする。自動車保険や火災保険をはじめとする各種保険商品を取り扱い、国内外で幅広い事業を展開している。