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日立製作所の「GenAIアンバサダー」4人が、アイティメディアの本宮学氏をモデレーターに生成AIの導入成功アプローチをディスカッションするオンラインイベントのレポート全6回の第2回目。今回はそれぞれドメインエキスパートであるGenAIアンバサダーが、各領域の生成AI活用における課題を整理します。

熟練者の知識をいかに学習させるか

本宮(モデレーター)
日立のGenAIアンバサダーの皆さんが、社内外のさまざまなプロジェクトに関わる中で、企業はいま生成AI活用にどんな課題を抱えているのか、感じていることを伺いたいと思います。まず日立グループの生成AI共通基盤の開発に携わっている滝川さん、いかがですか。

画像: 熟練者の知識をいかに学習させるか

滝川
日立グループの生成AI共通基盤には、生成AIをチャット形式で活用する環境だけでなく、業務システムに組み込むための生成AIアプリケーションの開発・運用環境も用意されています。現在リリースから約1年たち、延べ200以上のプロジェクトに利用されています。いまもその数は伸びており、多くの業務で活用が進んでいます。

例えばサポートサービスなどの分野にも生成AIが適用され、業務を支援しています。しかし、高度で複雑な判断が求められるケースでは、まだ人が最終判断を実施せざるを得ない段階です。日立は生成AIを使って労働人口の減少という社会課題を解決することをめざしています。しかし、そのためには生成AIに熟練者の知識を学習させたり、自動化の仕組みと組合せたりするなどさまざまなチャレンジが必要不可欠で、これらのチャレンジに伴う課題の解決が重要な鍵になっています。

本宮(モデレーター)
いま、多くの企業で人手不足が、かつ、現場では熟練者の技術の継承が進まない中、生成AIがひとつの光明となっています。しかし現実はそう簡単ではないということですね。

生成AIの精度と生産性の両立

本宮(モデレーター)
人手不足は、システム開発の分野でも強く叫ばれていると思いますが、五十嵐さんはどのような課題感をお持ちですか。

画像: 生成AIの精度と生産性の両立

五十嵐
おっしゃる通り「2025年の崖」の年を迎えて、システム開発の分野で人手不足はますます大きな課題になっています。しかもIT人財の取り合いにより採用など人に関わるコストが高まり、そうなると企業はIT投資を抑制せざるを得ず、やりたいプロジェクトを実行できないなど、人手不足に起因して課題は連鎖して拡大している現状があります。

本宮(モデレーター)
いま、円安でITの調達コストも上がっています。競争力の向上へAIへの期待感はますます高まるものの、コストの問題で思うように導入を進められない。そういう板挟みはありそうですね。

五十嵐
はい。そういった背景がある中で、先程、滝川さんから話があったように、生成AIは課題の根本原因である人手不足の解消にしっかり応えるものになっていないといけない。そのためにいま私たちは、システム開発分野のニーズに応えるべく、生成AIの精度と生産性の両立、さらに誰もが使えるユーザビリティの実現などさまざまな課題にお客さまといっしょに取り組んでいるところです。

生成AIをどんな業務で使えばいいのか

本宮(モデレーター)
照屋さんの観点からも、企業がいま抱えている課題について聞かせてください。

画像: 生成AIをどんな業務で使えばいいのか

照屋
化学系メーカーにおいては、規模の大きな企業ではChatGPTのようなチャット形式の生成AIは現在まで順調に導入が進み、議事録を作ったり、資料を要約したり、効率化のための使い方は広くお客さまに浸透したと考えています。そして現在は、生成AIをもっと業務に特化させて、例えば開発スピードの向上など競争優位を築くために活用したいというニーズが高まってきている状況です。
ただ、生成AIの業務特化といっても、どのように使えばいいのか、あるいはそもそもどんな業務に使えばいいのか分からない、という段階で、いま多くのお客さまが悩まれていると感じています。

本宮(モデレーター)
私も日々企業を取材していると、チャット型生成AIを個人的に使うというユースケースは一巡し、生成AIを業種特化、業界特化、職種特化でどうやって使っていくか、そこへ関心が移ってきていることを非常に強く感じます。

古い慣習から抜け出せない

本宮(モデレーター)
生成AIの普及に携わる大山さんは、お客さまの課題をどのように捉えていますか。

画像1: 古い慣習から抜け出せない

大山
生成AIの業務活用がなかなか進まない時、その原因のひとつに「古い慣習から抜け出せない」という課題があると感じています。例えば、生成AIを使うと議事録が瞬時に作れますが、「議事録は時間をかけて作る。それがスキルアップの鍵だ」と考えている世代に自動化は受け入れ難く、この現状維持バイアスが生成AI活用拡大のブレーキになってしまっているのです。

本宮(モデレーター)
確かに昔ながらのやり方で成功体験を積んだ方は、そこから逃れるのは難しいかもしれません。また、自分たちの仕事が奪われるかもしれないと危機感を持っている方もいるでしょう。

大山
ただ、古い慣習から抜け出して積極的に生成AIに業務を任せないと、企業は新しい価値をつくり出すことができず、生き残ることが難しくなると思います。

照屋
私もむしろ、生成AIにどんどん業務を奪ってほしいと考えています。生成AIは、世の中の膨大なデータを学習していて、その範囲の質問には瞬時に回答を出すことができます。そのスピードは人よりも圧倒的に速く、効率性を考えたら生成AIにやらせた方がいいでしょう。そのうえで、私たちがいま持っているデータより外のこと――もっとフロンティアな部分の仕事を、生成AI活用で余裕ができた時間を使って人間が行うことで、ビジネスも、私たちの社会も高度化が進むのだと思います。

本宮(モデレーター)
業務特化型生成AIへの期待の高まりも、まさにそこから来ているのですね。ただ、課題もまだまだあるということでした。ここからはGenAIアンバサダーの皆さんが実際にそれらの課題をどうやって乗り越えたのか、社内外の経験をもとに克服法を聞いていきたいと思います。

画像2: 古い慣習から抜け出せない

次回、第3回は5月20日公開予定です。

画像1: もう迷わない、生成AIのビジネス活用
【第2回】高まる期待、山積する課題

本宮 学(もとみや まなぶ)
アイティメディア株式会社
DX編集統括部 統括部長 兼ITmedia ビジネスオンライン編集長
※所属と肩書はウェビナー開催時点のもの

アイティメディアの BtoB IT・ビジネス領域メディアの責任者。先端テクノロジーやエンタープライズIT分野の取材を続け、2016年からITmedia NEWS編集長、2018年からITmedia ビジネスオンライン編集長にそれぞれ就任。両メディアの統括責任者を経て、2024年10月より現職。日本企業のデジタル変革やAI活用の可能性について取材している。

画像2: もう迷わない、生成AIのビジネス活用
【第2回】高まる期待、山積する課題

滝川 絵里(たきがわ えり)
株式会社 日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット
AI CoE GenAIセンタ ワンストップサポートサービス
部長

日立製作所入社後、官公庁向けプラットフォームのシステム運用や、クラウドサービスの立ち上げに参画したのち、大学の頃から興味があり取り組んでいたデータ分析の世界に参画。自然言語を中心とした障害対応支援や営業力強化のAIソリューションの開発に従事。2023年より全社生成AI活用プロジェクトに参画し、日立グループ全社への共通基盤展開や、その実績を活用した外販ソリューションの拡販、支援を担当。現場で働くなんでも知っていてみんなが頼りにするベテランの方々を尊敬しており、いつかAIがそんな存在になることをめざしている。
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画像3: もう迷わない、生成AIのビジネス活用
【第2回】高まる期待、山積する課題

五十嵐 聡(いがらし さとし)
株式会社 日立製作所 アプリケーションサービス事業部
テクノロジートランスフォーメーション本部 生成AIシステムエンジニアリング部
部長

日立製作所入社後、ミッションクリティカルな大規模システム開発を実施(産業流通業界)。スクラッチ開発、マイグレーション開発、インフラリプレースなど多岐にわたるプロジェクトをプロジェクトマネージャーとして推進。現在はシステム開発における生成AI活用として「生成AI活用開発フレームワーク」を中心としたアセット開発の取りまとめ、及びプロジェクトへの適用支援、展開を実施中。
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画像4: もう迷わない、生成AIのビジネス活用
【第2回】高まる期待、山積する課題

照屋 絵理(てるや えり)
Director, Strategy Office, Strategic Social Innovation Business BU, Hitachi Digital LLC

日立製作所研究開発グループ入社。自然言語処理に関わる研究開発に従事。2022年に公共システム事業部に異動。データサイエンティストとして、材料開発メーカー向けにデータとAIなどのデジタル技術を活用し材料開発を加速するMaterials Informatics関連の技術開発・拡販を担当。近年は、公共分野の生成AI活用支援にも従事。日立認定データサイエンティストゴールド。理学博士。
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画像5: もう迷わない、生成AIのビジネス活用
【第2回】高まる期待、山積する課題

大山 友和(おおやま ともかず)
株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit
チーフプランニングエキスパート

日立製作所入社後、コンサルティング部門にて営業業務改革や新規事業の立上げなどに従事。日立コンサルティングに出向後は、基幹業務システム構築などに従事し、プロジェクトリーダーとして、システム企画・構築・運用全般を統括。その後、日立製作所に戻り、営業バックオフィスを支える業務システム全般を統括してきた。現在、営業部門の生成AI徹底活用PJの取纏めとして、講演活動やナレッジ蓄積、社内コミュニティ運営、人財育成などの取り組みを推進中。
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