Hitachi
お問い合わせお問い合わせ
株式会社電通デジタル(以下、電通デジタル)の大木真吾氏と、日立のGenerative AI センター センター長の吉田順が小売業における生成AI活用の現在地を考察した「リテールテック大阪 2024」での講演「生成AIで変わる小売の未来」。後編ではリテール分野における最新事例の紹介なども交えた対話をお届けします。

「【前編】現場運営や販促施策の課題解決に向けた生成AI活用」はこちら>

アバターが接客応対する「デジタルポップアップストア」

吉田(日立)
ここからは本日のテーマである「生成AIで変わる小売の未来」に関するお話です。小売業にはさまざまな業務課題がありますが、今回は2つの事例を紹介します。1つは「デジタルポップアップストア」というアバターを活用する事例、もう1つが購買行動のシミュレーションを提供する「AIペルソナ」の事例です。

昨今、小売店の新規開業に関して「店舗スタッフを集めにくい」という課題があります。また、近年は外国人の顧客も多いなかで求められる外国語に対応できる人材の確保も容易ではありません。そこでデジタルポップアップストアでは、スタッフに代わる多言語対応のアバターがお客さまと対面して相談を受ける機能を提供します。なお、あるショップでの実証実験では、120%の売り上げ向上が見込める結果が得られました。さらに、このデジタルポップアップストアにデジタルサイネージやAIなどを組み合わせようというプランもあります。大木さんはこの試みについてどう感じられますか?

画像: 株式会社 日立製作所 デジタルエンジニアリングビジネスユニット Data&Design 本部長 兼 Generative AI センター センター長 吉田 順

株式会社 日立製作所
デジタルエンジニアリングビジネスユニット Data&Design 本部長 兼 Generative AI センター センター長
吉田 順

大木(電通デジタル)
まず、成果が「見える化」されるのはすばらしいですね。業務の効率化や負荷軽減というのは重要な要素ですし、顧客体験という観点からもとても有用なアプローチだと思います。というのも、こうした新しい試みが単に物珍しさから「とりあえずやってみた」で終わってしまうもったいないケースがとても多いからです。生成AIが商品とお客さまの仲を取り持って、顧客個人にとって意味のあるハイレベルな対話機会を提供することで、その仕組みが繰り返し使われる状況をいかに整えていくか、そんな体験設計をこの先ぜひ小売業の皆さまと一緒に考えていけたらと思います。

画像: 株式会社電通デジタル トランスフォーメーション部門 ディレクター 大木 真吾 氏

株式会社電通デジタル
トランスフォーメーション部門 ディレクター
大木 真吾 氏

「AIペルソナ」による買い物体験シミュレーション

吉田
確かに珍しさからか「とりあえずやってみよう」というケースも多いのですが、それから繰り返してどう定着せさるかが大事ですよね。対話力に関しても最近の生成AIは以前より柔軟に対応できるようになりました。

では次に「AIペルソナ」について説明します。これは例えば、新商品の発売時に店内のどこにその商品を置いたら注目されて売り上げが伸びるか、現状では実際に置いてみないと分かりませんが、これをシミュレーションによって事前に予測しようという試みです。

商品情報をAIにインプットして、POS履歴や顧客の趣味・嗜好(しこう)などに関するデータからお客さまのペルソナを作成し、例えば10代の女性ならどういう買い回りをするかをシミュレーションします。このAIペルソナが商品を見た時にどんな反応をするか――例えば「このチョコレートおいしそう」といった顧客の商品に対する印象・感想を生成AIの自然言語処理でコメント表示したりすることも可能です。

従来はトライアルをいろいろな場所で繰り返してそのデータを蓄積していましたが、試す前にシミュレーションできるのが新しい点です。研究例として今回初めて提示したものですが、マーケティングのプロである大木さんはどう感じられるでしょうか?

大木
マーケターとしてはとてもわくわくしますね。私は「40~50代男性」というセグメントですが、VRゴーグルを使ったデモなら20代女性やシニア、子どもの視点からも行動を追体験できる。ほかにも、身長が高い/低いでどう見えるのかといったところなどもチェックしながら、マーケティングの精度をさらに高めていけるのはとても面白いですよね。

現在可能なのは単に性別や年代などを軸にした設定に基づく追体験だと思いますが、購買データをさらに蓄積・分析することで、例えば「ロイヤルカスタマー」や「最近離反した顧客」といったマーケティング的なグルーピングを設定して追体験できるようになるでしょう。そうなればもっと楽しくなるし、ビジネス効果に関するより深い示唆も得られるはずです。

吉田
確かに現状では伝統的なデモグラフィック(人口統計学的属性)を利用していますが、いまや「30代女性」といった単純な設定だけでは予測が困難な事項も増えてきました。大木さんのご指摘どおり、今後そこに購買データの分析を組み合わせていければ、より高度で複雑な予測も可能になるでしょう。

画像: AI顧客による購買体験シミュレーション

AI顧客による購買体験シミュレーション

蓄積される膨大なデータから生み出すビジネスの価値

大木
それは楽しみですね。こうした生成AIの活用で新たな体験を提供していくその背後では、同時に多様なデータが蓄積されていきます。重要なのは、そのデータを顧客理解にどう生かすことができるかです。

店頭購買データを用いた分析視点という側面から、「優良顧客とは誰か」「どのような時系列の変遷でその商品にたどり着いたか」といった理解を深めることで、蓄積したデータからより多くのことが見えてくるようになる。さまざまな手法で顧客の行動や販促施策の効果を予測することが、近いうちに新しいビジネスにつながっていくのではないでしょうか。

吉田
ありがとうございます。新たな技術が生まれるとできることも増えていきますよね。そうしたなかで、これからもお客さまの課題を的確にとらえながら、新しい事例を大木さんたちと一緒につくっていきたいと思います。本日はありがとうございました。

大木
ありがとうございました。

画像1: 日立×電通デジタル「生成AIで変わる小売の未来」
【後編】多種多様なデータから顧客をより深く理解する

大木 真吾 氏

株式会社電通デジタル
トランスフォーメーション部門
ディレクター

2005年に31歳で大手広告グループに参加。データマーケティングやCRM領域の戦略策定・施策立案・分析支援などを担当。エグゼクティブデータマーケティングディレクターとして100を優に超える多彩なプロジェクトをけん引・参加してきた。2022年より電通デジタルに移籍。

画像2: 日立×電通デジタル「生成AIで変わる小売の未来」
【後編】多種多様なデータから顧客をより深く理解する

吉田 順

株式会社日立製作所
デジタルエンジニアリングビジネスユニット
Data&Design 本部長 兼 Generative AI センター センター長

1998年、日立製作所入社。銀行・保険、流通・小売、製造業、鉄道などさまざまな業種の顧客に対し、多数のAI/ビッグデータ利活用プロジェクトを推進。社内外のデータサイエンティスト育成にも関わる。データ分析のトップ人財を結集したLumada Data Science Lab.の共同リーダー。2023年5月に設置されたGenerative AIセンターのセンター長を務めるほか、2023年12月からは、日立におけるAIを活用したトランスフォーメーションの推進責任者としてデジタルシステム&サービスセクター のChief AI Transformation Officerに就任。

他社登録商標
本記事に記載の会社名、商品名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。

お問い合わせ先

株式会社 日立製作所 産業・流通営業統括本部

お問い合わせは、こちらから

This article is a sponsored article by
''.