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日立グループ全社の生成AI活用を加速する「生成AI共通基盤」。第1回と第2回では、この生成AI共通基盤の日立グループ全社への展開と活用事例を紹介しました。第3回は、日立製作所の松井豊和と湊秀樹に、多様なニーズに応える生成AI共通基盤の開発について話を聞きました。

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生成AI共通基盤の開発ロードマップ

―― 生成AI共通基盤の開発における二人の役割について教えてください。

松井
私は、日立グループ内や社外からの多様な要望を整理して共通基盤の開発環境を整えたり、米国のデジタルエンジニアリング会社であるGlobalLogicとの連携の調整を図るなど、プロダクトマネージャーとして生成AI共通基盤の開発全体を取りまとめています。


私は、生成AI共通基盤の技術面における開発の取りまとめを担当しています。

―― 生成AI活用を加速する生成AI共通基盤の開発ロードマップについて教えてください。

松井
日立には、日立グループ内での取り組みと、それを生かした社外向けの取り組みがあります。社内に向けては、2024年4月にステップ1として機密性の高い推論環境を提供し、2024年10月からはステップ2としてファインチューニング学習の提供を開始しており、その上でさまざまな生成AI業務が稼働しています。それらのナレッジも活用しつつ、5月には社外向けに開発フレームワークを、10月からはお客さまの業務に特化したLLM(Large Language Models)を構築・運用するサービスと、それを稼働させる基盤を構築・運用するサービスの提供を始めました。

2025年度の前半には、社内向けに事前追加学習により大量のデータをLLMに流し込み、LLM自体をカスタマイズする環境を提供し、そのナレッジを生かして外販も開始する予定です。 そこから先は、お客さまや日立のフロントからの要望、研究所やGlobalLogicなどとも緊密に連携しながら、日立ならではの新しい価値を実感いただけるサービスを提供していきたいと考えています。


ステップ1では、一般的なエンジニアであれば容易に生成AIを使いこなすことができる、ソフトウェア開発用ツールと、開発プロセスのガイドラインを作成しました。ミッションクリティカルなシステムへ適用が可能なこの開発フレームワークを社内で活用してもらうことで、AIアプリケーション開発のハードルを下げ、さまざまな業種や業務でトライ&エラーを繰り返しながらナレッジを蓄積しています。日立は生成AIをあらゆる業務で徹底活用するAIトランスフォーメーションを全社で推進しているので、多様な成果が期待できます。

日立のナレッジが可能にした社外向け新サービス

―― 10月に提供開始した、社外向け のサービスについて詳しく教えてください。

松井
お客さまの業務に特化したLLM環境を構築し、継続的な運用を支援する「業務特化型 LLM 構築・運用サービス」、実行環境の構築・運用を担う「生成AI業務適用サービス」を 10月1日より提供開始しました。これは業務レベルの回答精度を得る上で課題となる、生成AI技術者の確保や大規模な学習環境への投資、実行環境の整備・運用といったお客さまの負荷を大幅に低減する、新サービスになります。

画像1: 日立のナレッジが可能にした社外向け新サービス

特長としては、LLMの構築環境を用意するだけでなく、お客さまの独自ナレッジを学習データにするところから、生成AIアプリケーションを開発できる実行環境の構築・運用までを継続して支援するサービスだということです。業務に特化するということは、その業務の知見やノウハウを学習データにするという難しさがあります。例えば、熟練者のノウハウを、どうやって学習データにするのかです。

画像2: 日立のナレッジが可能にした社外向け新サービス

日立には、これまでIT、OT(制御技術)、プロダクトを展開するコングロマリットとして蓄積してきた多種多様なナレッジがあります。さらにそれらを活用できるデータサイエンティストやLLMエンジニアといった専門家がいます。だからこそ、さまざまなお客さまの業務に特化したサービスを提供できるのです。


業務のナレッジというのは本当に多種多様で、例えばOTの世界では非構造のものが少なくありません。熟練者でなければ理解できない図面であったり、独自の図表を組み込んだ作業指示書であったり、デジタル化が困難なものが多くあります。日立は、これまでそういった情報をデジタル化するという経験をさまざまな分野で蓄積してきました。その豊富なナレッジがあるからこそ、お客さまの業務に特化したLLMの構築・運用が可能なのです。

画像3: 日立のナレッジが可能にした社外向け新サービス

生成AI共通基盤を作る難しさ

―― 「生成AI共通基盤」ならではの開発の難しさはありますか。

松井
生成AI共通基盤を管理している部門と連携し、さまざまな要望に対応しながら開発に取り組んでいるのですが、今は社内だけでなく外販に向けて社外からの要望にも対応しなければなりません。さらにGlobalLogicとも連携を図ろうとしています。彼らはすでにさまざまなベストプラクティスを持っているので、そのナレッジをサービス化して生成AI共通基盤で活用するといったことも計画中です。

このように、生成AI活用に関わるさまざまな要望が私たちのもとに集まってきます。これに応えるためには、多様な要望を整理して理解を深めながら、日々変化する状況を踏まえて開発をアジャストさせていく必要があります。そこに生成AI共通基盤開発の難しさがあると思います。


生成AIがどこまで使えるものになるのか、今世界中で検証している段階であり、本格的に業務で活用した事例は多くありません。それだけに技術の進化が激しく、半年前に覚えた技術が気づいた時にはもう古いものになっていることもあります。学習のやり方についても新しい技術がどんどん出てきていますし、LLMでも今までの規模感でGPUリソースを想定していると、突然桁違いの大きなモデルが登場してきたり、日々目まぐるしい技術の進化が起きています。それをキャッチアップしながら、いかに素早く対応していくかが生成AI共通基盤の開発ならではの難しさだと思います。

生成AIの持つ可能性

―― 生成AIは、これからの社会をどう変えていくと思いますか。

松井
今、盛んに言われているのは、労働者不足の問題を生成AIで解消するということです。人手不足の現場や経験者の少なくなった仕事をAIで代替するということは、多くの企業が取り組んでいる重要な課題です。しかし、社会には他にも環境やエネルギーなどの複雑な課題が存在します。AIの可能性は無限ですから、私たち人間では思いつかないような解決策を自ら見つけ出せるかもしれません。AIの広がった社会は脅威で語られることが多いのですが、うまくその力を借りながら付き合っていけば、人間の限界を超えた発想で社会課題を解決してくれる可能性だってあります。私はそんな未来を思い浮かべています。


私は、生成AIがもっと早く広まって欲しいと思っています。世界中でこの技術が活発に使われるようになれば、もっと多くの人々が新しい活用方法を編み出し、技術革新が起きる。社会課題の解決のためにも、私たちがもっと生成AIを活用できる環境を整える必要があると思い、現在の仕事に取り組んでいます。

画像1: 生成AI活用のフロントランナー
【第3回】多様なニーズに応える「生成AI共通基盤」の開発

松井 豊和(まつい とよかず)

株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部
プラットフォームソフトウェア本部 生成AIサービス開発部 
部長

情報プラットフォームの開発を通じて、そのベストプラクティスをソリューションとして拡販。2010年、Hitachi Cloudの立ち上げに参画し、サービス開発に携わる。その後、Hitachi Cloudのナレッジを日立グループ全社に展開するプロジェクトに従事。2024年4月より、現在の部署で生成AI共通基盤の開発プロジェクトを取りまとめている。「日立サンディーバ」(日立ソフトボール部)の後援会 応援団長も務めている。

画像2: 生成AI活用のフロントランナー
【第3回】多様なニーズに応える「生成AI共通基盤」の開発

湊 秀樹(みなと ひでき)

株式会社 日立製作所 マネージド&プラットフォームサービス事業部
プラットフォームソフトウェア本部 生成AIサービス開発部 
主任技師

日立の統合システム運用管理JP1の開発を担当。その後、ストレージの運用管理製品の開発を経て、再びJP1をベースとしたSaaSの立ち上げなどに携わる。2024年4月より、現在の部署で生成AI共通基盤の開発を技術面で取りまとめている。

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