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マイクロソフトコーポレーション(米国本社) 藤井創一氏/株式会社日立製作所 吉田順
2024年3月、日立グループは「リテールテックJAPAN 2024」にて、「生成AIで変わる小売の未来」をテーマにマイクロソフトとのスペシャルステージを開催した。同社と日立は、デジタルソリューション分野において戦略的提携を結ぶパートナーである。ステージには、マイクロソフトコーポレーション(米国本社)で、小売業への生成AI活用を推進する藤井創一氏が登壇。日立製作所からは、Generative AI センターのセンター長として日立の生成AI開発をリードする吉田順が登壇した。対談形式で行われたステージの内容を2回にわたってお送りする。

価格高騰、人材不足――小売業の課題解決に、生成AIをどう生かすか

吉田(日立)
日立製作所の吉田順と申します。日立は「Digital for all.」というメッセージを掲げ、デジタルを通じて生み出す価値をすべての人たちに届け、サステナブルな社会の実現をめざしたデジタル事業を展開し、お客さまのDXを支援しています。本日は、日立とデジタルソリューション領域において提携しているマイクロソフトコーポレーション(以下、マイクロソフト)の藤井創一さんと「生成AIで変わる小売の未来」についてお話しさせていただきます。藤井さん、よろしくお願いします。

画像: 日立製作所 吉田順

日立製作所 吉田順

藤井(マイクロソフト)
お招きいただきありがとうございます。マイクロソフトは「Retail Unrocked」を掲げ、AIを掛け合わせることで小売業が持つポテンシャルの“Unrocked”=解放をめざし、お客さまのDX推進に貢献しています。本日はよろしくお願いします。

吉田
コロナ禍の収束後、小売業では商品の値上げが進む一方、多くの企業が人材不足に悩んでいます。こうした状況において、生成AIを小売業の課題解決にどう生かせるでしょうか。まずは海外の小売業を取り巻く情勢について藤井さんから解説いただいたのち、マイクロソフトと日立が展開する、小売業への生成AIの活用事例についてお話ししていきます。

世界最大級のリテールカンファレンス「NRF」で語られた4つの論点

藤井
今年1月、NRF(National Retail Federation:全米小売業協会)による世界最大級の小売業のカンファレンス、「NRF 2024:Retail’s Big Show」がニューヨークで開催され、全世界から4万人近い方々が参加しました。小売業で去年どんなことが起きたのか、今年どうなっていくのかという示唆を得られる貴重な機会ですので、わたしも参加しました。

画像: マイクロソフトコーポレーション(米国本社) 藤井創一氏

マイクロソフトコーポレーション(米国本社) 藤井創一氏

コロナ禍やインフレ、労働力不足など小売業にとって危機的な状況が米国でも続いていたことで、業界の先行きは非常に厳しいと認識されてきました。各企業の努力により米国の小売業全体では昨年、前年比で3.6%成長したのですが、消費者の懐事情を考えるとやはりこの先の不透明感はぬぐえない――そんな状況にあります。

今回のNRFのキーテーマは「Make it Matter」でした。ちょっと日本語に訳しにくいのですが、米国の小売業界が続けてきた不断の努力を成果に結びつけていくにはどうすればよいかという視点で、100以上のセッションが開催されました。

今回のNRFの印象を一言で言うと「AI祭り」です。各セッションで最も取り上げられていたテーマが生成AI活用であり、大きく4つの論点から語られていました。

1つ目は、データを使った新しいビジネス「リテールメディア」を進化させる過程で、いかにAIを活用してデータ分析や生産性を強化していくか。2つ目は、「顧客体験の向上」に向け、AIエンジンをはじめとする技術をいかに駆使するか。3つ目は、顧客体験の向上に欠かせない「サプライチェーン強化」に向け、配送の最適化などにAIをどう活用していくか。そして4つ目が、「従業員支援」。米国の小売業では、賃金を上げるなどの対応で待遇の改善を図りながらも、離職が止まらない状況が続いています。従業員をサポートし、生産性を高め、楽しく働いていただくためにAIをどう活用していくか。生成AIが、これら4つの課題を解決するための起点となる――そんな印象を持ちました。

画像: 世界最大級のリテールカンファレンス「NRF」で語られた4つの論点

吉田
「AI祭り」という表現は、今回のリテールテックや日立にも言えることです。そのくらい、世界全体で今、小売業が生成AIに期待しているということですね。

増えつつある、生成AI活用のユースケースと投資対効果

藤井
海外の小売業では、製品のデザインからカスタマーサービスまでバリューチェーンの各プロセスで生成AIの活用が検討されていますし、財務やHRといったコーポレート機能の強化に向け生成AIの導入を検討する企業も増えています。マイクロソフトが把握している範囲では、昨年の第4四半期だけでも前年比56%程度、ユースケースの検討数が増えています。DXの推進や業務を支えるプラットフォームの構築、あるいはプログラミングといった領域など、生成AIの活用シーンは今後ますます増えていくのではないでしょうか。

こういった情勢の背景には、「生成AIはビジネスに使える段階になってきた」という小売業全体の共通認識があります。2023年にIDCとマイクロソフトが共同で行った調査によると、米国の小売業では、AI活用に約1ドル投資すると3.45ドルのリターンが見込めるという結果が出ました。アジアのある小売業では、ECサイトに生成AIを組み込んだところ、購買客の買い物かごのサイズが22%増加したなどの大きな成果も表れています。

画像: 増えつつある、生成AI活用のユースケースと投資対効果

吉田
AI投資の成果がROIに明確に表れている――アメリカらしい、非常にわかりやすい物差しですね。興味深いお話ありがとうございます。

「【後編】顧客体験と働き方を変える、生成AI活用」はこちら>

画像1: 日立×マイクロソフト「生成AIで変わる小売の未来」
【前編】グローバルで見た、生成AI活用の現在地

藤井創一(ふじい そういち)

マイクロソフトコーポレーション(米国本社)
ワールドワイドリテイル&コンシューマグッズ 日本担当インダストリーアドバイザー
国内流通業向けSI営業及びプロジェクトマネージャーを経て、2001年日本マイクロソフトに入社。リテイルインダストリーマネージャーとして同社流通業(小売・卸・消費財製造業)向け戦略策定と市場開拓を担当、同業界向けソリューション開発及び販売・マーケティング施策活動全般に従事。また同社業界貢献活動として、2001年より流通業IT国際標準仕様の策定団体“OPOS/.NET流通システム協議会”の代表幹事、日本小売業協会CIO研究会、日本オムニチャネル協会など多数の流通業団体活動に従事。

画像2: 日立×マイクロソフト「生成AIで変わる小売の未来」
【前編】グローバルで見た、生成AI活用の現在地

吉田順(よしだ じゅん)

株式会社日立製作所
デジタルエンジニアリングビジネスユニット Data&Design 本部長
兼 Generative AI センター センター長
1998年、日立製作所入社。銀行・保険、流通・小売、製造業、鉄道などさまざまな業種の顧客に対し、多数のAI/ビッグデータ利活用プロジェクトを推進。社内外のデータサイエンティスト育成にも関わる。データ分析のトップ人財を結集したLumada Data Science Lab.の共同リーダー。2023年5月に設置されたGenerative AIセンターのセンター長を務めるほか、2023年12月からは、日立におけるAIを活用したトランスフォーメーションの推進責任者としてデジタルシステム&サービスセクター のChief AI Transformation Officerに就任。

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