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外からの視点だからこそ得られたさまざまな気づき
――運用を担うお二人はマチュリティ・アセスメントサービスの結果をどのように受け止めましたか。
中川
長年の運用を通じてよりよい運用を実践してきたつもりでしたし、実際に障害も起こさずに運用してきた自負はありました。しかしいざ客観的な視点から精査されると、足りていなかったことや新たに取り入れるべき多くのことに気づかされました。
松本
複数のシステムの運用を統合する前提で始まったプロジェクトでしたが、まず中川さんが担当するシステムの成熟度を評価し、そこで得られた解を私が担当するシステムにも適用していく方法を白井さんから提案されました。その進め方にはとても共感しましたね。
白井
私としては運用を統合する前にまず1つのシステムの運用改善を図ることで「こうすればうまくいく」という共通解を見つけ出し、そのうえで他のシステムに横展開していくほうが効率的だと判断したのです。
現場の意見をヒントに、さらなるサービス品質向上へ
――課題抽出後、プロジェクトはどのように進められましたか。
白井
その後2週間ほどかけて洗い出した問題点を深掘りして裏付けを取る「分析フェーズ」に入り、さらに推奨改善項目を最終報告書にまとめて提出する「報告フェーズ」を進めました。今回はこの最終報告書の体裁についてお二人から要望が寄せられています。
中川
抽出された課題について、もともと私たち自身でも認識していたものなのか、それともHARCによって明らかにされたものなのかを区別できるような書式にしてほしいとお願いしました。私たちとしては、自分たちだけでは気づけなかったプラスアルファを明確にしてほしかったのです。
松本
それから、最終報告書の前に途中経過のレビューも見せてほしいというお願いもしました。最終結果だけを見せられてもその是非を判断できないし、レビューを通じてアウトプットのイメージに関する互いの齟齬(そご)を避けられると考えたのです。
白井
ほかにもお二人からはスコアリングの根拠の提示方法や、チェックシートによる簡易診断のアイデアなど、貴重な意見や要望をいただきました。特に最終報告書の書式やスコアリングの根拠の提示方法に関してはすぐに改善させていただきました。こうした形でHARCの価値向上に役立つ気づきをいただけたのは大変ありがたいことでした。
運用をより重視する新しい時代のシステム観
――今回の社内プロジェクトを通じて印象的だったことを教えてください。
白井
今回、中川さんと松本さんから強く感じたのは“運用という仕事”に対する確たるプライドです。運用業務には受動的なイメージがありましたが、お二人から伝わってきたのは、よりよい運用を追求しよう、という熱意と積極性でした。
松本
水道や電気のような社会インフラと同じように、システム運用も安定稼働の継続を当たり前のように続けていると、存在意義が表面化せず、その評価も低くなりがちな印象を受けます。しかし本来、安定的な運用のためにこそ、確かなシステム設計や開発が必要なのです。そういう意味で、今後は運用業務の観点から設計に参画することで、システム運用がいかに重要かという認識を引き上げていかなければならないという思いが私にはあります。
中川
システムの運用改善に着目した点にこそ、HARCのサービスとしての価値があると私は思っています。システムのランニングコストはそのイニシャルコストより大きくなるので、コスト最適化を考えるなら、開発段階からより効率的な運用を考慮しなければならない。つまり旧来の「開発ありきの運用」ではなく、「運用ありきの開発」という発想の転換が求められているのです。
白井
そもそも開発と運用が責任を共有しながら同じKPIを追求するSREという方法論は技術面に止まらず、運用の重要性を再認識することで組織のあり方そのものを変革しようという思想が根底にあると私は考えています。
開発と運用が協働するSREへの期待
――プロジェクトの今後と、HARCのこれからについてお聞かせください。
中川
少し時間はかかりそうですが、本プロジェクトの成果をもとにしかるべき時機を見て、お客さまにHARCによる運用改善策を提案していきたいと考えています。
白井
現在は、マチュリティ・アセスメントで抽出した38項目の運用課題への対応の投資対効果や優先度を見極めながら、運用統合に向けたロードマップ案をHARC側で作成しています。また、将来は既存システムの運用改善だけでなく、新規システムの開発にもHARCの考え方を適用していければと考えています。
松本
開発と運用が対等な立場で協働する将来をめざすうえで、最初から運用担当者やHARCが関与しながらシステム開発を進めていくという発想は、ぜひ実現してほしいものです。
白井
個々のお客さまに最適化された解決策をいかに提案できるかがHARCプロジェクトの成否を握ります。そのためにも中川さんと松本さんがお持ちのようなお客さまの業務やシステムに関する深い知見は不可欠です。今後も実践を通じてサービス品質をさらに磨き上げながら、例えば対面だけでなくリモートでのインタビューにも対応するなどして間口を広げ、より多くのお客さまにHARCの価値をお届けしていきたいと考えています。
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