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デジタル社会に流通する膨大なデータを保存・活用するために、いまやストレージは社会やビジネスに不可欠な重要なデータインフラとなりました。高品質・高性能・高信頼性で長年支持を集めてきた日立ストレージは、その環境性能でも業界をリードしています。ここでは、今日のように環境課題が注視される以前から継続する省電力化への取り組みの近年における目覚ましい成果について、それぞれの現場を担う若手社員の声を中心に紹介します。

「第1回:“モノづくり”の脱炭素化をリードするITプラットフォームの主力工場」はこちら>
「第2回:豊富な経験知が支える、LCA×製品単位の精緻なCO₂排出量算出・可視化実証」はこちら>
「第3回:脱炭素化の次元を変える、飽くなき探求と精緻な実証の結実」はこちら>

データインフラを支えるストレージの環境課題

画像1: 神奈川事業所の環境活動
第4回 さらなる省電力化に挑む環境配慮型ストレージ

株式会社 日立製作所
ITプロダクツ統括本部
ハードウェア開発本部
プロダクツ第1設計部
担当部長
保坂 文昭

膨大なデータを格納できるストレージは、生成AIの登場などで近年ますますその重要性が高まっている社会的データインフラです。一方、脱炭素化社会の実現に向けて、需要が拡大しているストレージ製品の省電力化が課題となっています。

神奈川事業所が製造する日立のストレージ製品は、2000年代から高効率な電源ユニットや大容量ドライブメディアの採用などによる省電力化にいち早く取り組んできました。なかでも最新の「Hitachi Virtual Storage Platform Eシリーズ(以下、VSP Eシリーズ)」は、データ圧縮アクセラレータで容量効率化と性能向上を両立し、ファン制御の最適化やドライブの大容量化でエネルギー消費効率を大幅に改善。その結果、ENERGY STAR Data Center Storageで公開されているストレージ製品のMid-Highクラスにおいて、電力当たり性能のランキングで第1位※1を獲得しています。

※1 VSP E1090(同ランキングでVSP E790は第4位、VSP E590は第10位、2023年12月25日時点)

ストレージ省電力化に向けた4つのアプローチ

①データ圧縮アクセラレータ設計

ENERGY STARで評価された「電力当たり性能」の「性能」に寄与したのが、データの圧縮です。ハードウェア開発本部 応用技術設計部 技師の森田 俊平は以下のように説明します。

画像2: 神奈川事業所の環境活動
第4回 さらなる省電力化に挑む環境配慮型ストレージ

株式会社 日立製作所
ITプロダクツ統括本部
ハードウェア開発本部
応用技術設計部
技師
森田 俊平

「ストレージではデータを圧縮することが重要です。データを圧縮し、それを記録するドライブを減らせた分だけ消費電力を抑制できます。ただし、ソフトウェアによるデータ圧縮は大きな負荷のかかる処理で、CPUの能力を使用するため、ストレージの動作が不安定になる一因にもなります。そのため、データ圧縮率とCPU負荷のバランスを考慮して、最適なアーキテクチャを検討する必要がありました。

そこで私たちはソフトウェアではなく、専用のハードウェアにデータ圧縮を任せるアクセラレータを独自に開発しました。これにより、データ圧縮率を高めながら処理性能も維持できるようになり、容量削減機能動作時のCPU処理性能は39%も向上※3しています」

②ファン省電力制御開発

データ圧縮と性能を両立した一方で、VSP Eシリーズでは「電力当たり性能」の「電力」を左右するエネルギー消費効率を向上させるため、ストレージ内のファンの動作をきめこまやかに最適化。これによる省電力化の試みについて解説するのは、ハードウェア開発本部 プロダクツ第1設計部 技師の松下 翼です。

画像3: 神奈川事業所の環境活動
第4回 さらなる省電力化に挑む環境配慮型ストレージ

株式会社 日立製作所
ITプロダクツ統括本部
ハードウェア開発本部
プロダクツ第1設計部
技師
松下 翼

「CPUなどの発熱によって正常な動作を妨げないようにファンを回して冷却しますが、稼働状況に応じてファンの回転数を最適化し、電力消費の無駄を減らしました。これまでは2Uや4Uなど製品のサイズごとに設定していたパラメーターを、VSP Eシリーズではモデルごとの実測ベースで最適化するなどして、最大53%の省電力化※4を実現しています。

また、VSP Eシリーズではフラッシュストレージに最適化されたドライブインタフェースNVMe※5に対応したSSDを初搭載しました。従来よりも高速なデータ転送が可能ですが発熱量も大きいため、ドライブなどの温度を精緻に採取し、高負荷になった時だけ回転数を高めるなどファン制御を最適化して高速化と省電力化を両立しています」

③「ENERGY STAR」認証取得

画像4: 神奈川事業所の環境活動
第4回 さらなる省電力化に挑む環境配慮型ストレージ

株式会社 日立製作所
ITプロダクツ統括本部
ハードウェア開発本部
プロダクツ第1設計部
武藤 亮真

神奈川事業所で製造する日立ストレージはグローバルで利用されており、大きな割合を占める輸出先は北米市場です。ハードウェア開発本部 プロダクツ第1設計部 武藤 亮真は、同市場で大きな影響力を持つ米国のENERGY STAR認証取得に際して、対外折衝に尽力しました。

「性能や品質で高い評価を受ける日立ストレージですが、たとえ優れた製品でもその国の規格に準拠していなければ販売できないため、各国の機関と連携しながら認証取得に取り組んでいます。

省エネルギー性能を評価するENERGY STAR認証の取得にあたっては米国子会社のHitachi Vantara LLC(以下、日立ヴァンタラ)と密に連携し、双方の法務や設計部門の担当者がペアとなって進捗管理や課題解決に取り組みました。米国の認証機関を相手に、日立ヴァンタラとともに申請書類の作成や認証試験の依頼・実施などを進めていくなかでは、想定外の情報の取得・登録が必要になるなど苦労も多々ありましたが、この経験を通じて確立できたスキームで、今後の新製品についてもENERGY STAR認証を取得していきたいと考えています」

④大容量メディア開発

画像5: 神奈川事業所の環境活動
第4回 さらなる省電力化に挑む環境配慮型ストレージ

株式会社 日立製作所
ITプロダクツ統括本部
ハードウェア開発本部
応用技術設計部
技師
櫛田 浩樹

日立ストレージは、大容量30TBのSSDをサポートすることで搭載するドライブ数を減らし、ストレージの省電力化・省スペース化を実現しました。さまざまなメリットのある大容量メディアのいち早い採用について解説するのは、ハードウェア開発本部 応用技術設計部 技師の櫛田 浩樹です。

「HDDやSSDなどのメディアの採用に関しては、安定した供給のためにマルチベンダー体制を整備しています。また、市場競争力を高めて機会損失を減らすために、大容量メディアのタイムリーな採用を推進しています。ベンダーが新たに開発したメディアを日立ストレージに実装するまでのリードタイムを極小化するために、近年ではベンダー各社に日立ストレージを導入してもらい、ベンダー側でテストをしてもらう『Joint Qualification※6』という開発プロセスを実践しています。

また、VSP Eシリーズのなかで唯一100V電源に対応している国内限定のVSP E390モデルに関しては、省電力機能をサポートしたSSDを採用することで、性能よりも低消費電力・低コストを重視したストレージを実現しています」

※3 VSP E1090/E1090Hと旧モデルVSP E990との比較値。Random Read(32K) IOPS, 実測値
※4 VSP E1090にて容量削減前後のストレージ全体の消費電力を比較(前:3.8TB SSD 768台搭載、後:同ドライブ320台搭載)
※5 Non-Volatile Memory express
※6 システムレベルのテストをより上流の開発プロセスで実施することで品質検証を効率化する手法

画像: ストレージ省力化に向けたアプローチ *ENERGY STARサイトはこちら

ストレージ省力化に向けたアプローチ

*ENERGY STARサイトはこちら

省電力化を率先する“サステナビリティ・ネイティブ世代”

データインフラを支え続けてきた日立ストレージは、その高品質・高性能や信頼性でお客さまから長年にわたって支持されてきました。さらに、VSP Eシリーズに代表されるその環境性能は国際的にも高い評価を受け、磨き続けてきた技術力が環境課題の解決にも寄与しうることを証明しています。

この環境という課題に果敢に挑む中心的な存在は、20~30代の若手社員たちだと言うのは、省電力設計の諸施策を取りまとめるハードウェア開発本部 プロダクツ第1設計部 担当部長の保坂 文昭です。

「彼らの多くはSDGsやエシカル志向をあたりまえのこととして受容してきた、いわば“サステナビリティ・ネイティブ”な世代です。性能や機能を追求する技術者的発想に環境配慮という視点がすでに組み込まれている彼らは、自由なアイデアと人一倍の熱意を持っています」と保坂は誇らしげに語ります。そんな未来を担う若い世代の感性や情熱と、先輩世代が高め続けてきた技術力のかけ算で、これからも日立ストレージは環境負荷の低減に取り組み、その先に脱炭素社会の実現を追求していきます。

「第5回:サーキュラーエコノミーへの序章」はこちら>

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