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日立のデータセンターがカーボンニュートラルに向けて動き始めています。自らのカーボンニュートラル前倒しやオンサイトPPAによる創エネ、さらに、提供サービスのカーボンニュートラルやパートナー企業からの脱炭素認定、お客さま企業のカーボンニュートラルを支援するサービスの提供など、さまざまなアプローチで脱炭素社会の実現をめざす多彩な取り組みを2回にわたって紹介します。

年々拡大する市場と大きな消費電力という課題

画像1: 日立のデータセンターにおけるカーボンニュートラル
第1回 「省エネ」「創エネ」「再エネ」による脱炭素化の試み

株式会社 日立製作所
マネージドサービス事業部
プライベートクラウドサービス本部
データセンタ部
部長
中村 秀

IoTやビッグデータ利活用などによるデジタルトランスフォーメーション(DX)のさらなる進展、そして、ITシステムのクラウドリフト&シフトの加速などを背景に、データセンターに対するニーズは年々高まっています。とりわけ“メガクラウド”と呼ばれる大規模サービス事業者の成長は顕著で、2022年における日本の市場規模(売上高)は、対前年比15.3%増の2兆275億円※1と初めて2兆円を超えると見込まれ、今後も毎年10%超の2桁成長が続く見通しです。

日立は1990年代から30年以上にわたってデータセンターを運用しており、現在は基幹データセンターとして東日本に横浜センタ、西日本に岡山センタを展開しています。この2つの拠点をベースに、ミッションクリティカルな金融・公共・産業分野のお客さまをはじめ、さまざまな業界のお客さまに多彩なサービスを提供。日立自身も両データセンターを重要情報インフラとして活用してきました。

情報インフラとしての重要性が高まるデータセンターですが、大量の高性能なサーバーやストレージが24時間・365日ノンストップで稼働し続けることから、膨大な電力を消費する環境負荷の高い施設という側面もあります。実際、日立のデータセンターは、日立の事業所のなかでも最も電力を消費している拠点の一つです。

こうした実情を踏まえ、日立では継続的にデータセンターの省電力化を推進してきました。「エネルギー効率の高い空調機器やUPS※2などの採用をはじめ、空調効率を上げるための気流改善、屋上緑化や散水などに取り組み、その結果、2007年比で10%以上の省電力化を達成しています」と施策の着実な成果を説明するのは、プライベートクラウドサービス本部データセンタ部 部長の中村 秀です。

※1 出典:総務省「令和5年版 情報通信白書」データセンター市場及びクラウドサービス市場の動向
※2 Uninterruptible Power System:無停電電源装置

3つのアプローチでカーボンニュートラルを前倒し

画像2: 日立のデータセンターにおけるカーボンニュートラル
第1回 「省エネ」「創エネ」「再エネ」による脱炭素化の試み

株式会社 日立製作所
マネージドサービス事業部
プライベートクラウドサービス本部
データセンタ部
主任技師
奥大谷 孝史

日立は環境長期目標「日立環境イノベーション」において、工場やオフィスといった事業所におけるカーボンニュートラルを2030年度までに達成する目標を掲げています。そのなかで他の拠点に比べて多くの電力を消費するデータセンターでは、会社としてのカーボンニュートラルの活動をけん引するべく、その達成期限を2027年度に設定し、目標を3年前倒ししました。

24時間安定的な電力供給が必要なデータセンターでは、気象条件や時間帯で発電量が変動する太陽光や風力といった再生可能エネルギーを主電源として利用するのは難しいのが実情です。また、非常に多くの電力を消費するため、再生可能エネルギー由来の電力をデータセンターに提供する事業者は少なく、その調達には多大な労力やコストがかかるという課題もありました。

こうした点を踏まえ、日立は3つのアプローチでデータセンターのカーボンニュートラルをめざしています。まず、使用電力そのものを減らす従来の「省エネ」、次に太陽光発電設備などを導入して自ら再生可能エネルギーを工面する「創エネ」、そして、再生可能エネルギーを直接的もしくは間接的に調達する「再エネ」です。

また、今後の展開を短期と中長期という2つの時間軸でとらえています。まず、短期的には、非化石電源で発電された電力の「環境価値」を証書化した非化石証書の購入などに注力。さらに中長期的には発電事業者が電力需要家の敷地内に発電設備を設置するオンサイトPPA※3や、敷地外で発電した電力を供給するオフサイトPPAといった“追加性(新たな再生可能エネルギー設備の増加を促す効果)”のある電源にシフトしていく予定です。

データセンタ部 主任技師の奥大谷 孝史は、「購入した排出権でCO₂排出量を相殺するカーボンオフセットによって総量としてのカーボンニュートラルを達成するだけではなく、将来的には発電した電力をそのタイミングで消費する電力の同時同量化をめざしていきたいと考えています」と、今後に向けた脱炭素化のビジョンを語ります。

※3 Power Purchase Agreement

“晴れの国”で稼働を始めたオンサイトPPA

画像3: 日立のデータセンターにおけるカーボンニュートラル
第1回 「省エネ」「創エネ」「再エネ」による脱炭素化の試み

株式会社 日立製作所
マネージドサービス事業部
プライベートクラウドサービス本部
データセンタ部
技師
森 皓生

カーボンニュートラル達成に向けて、西日本の拠点である岡山データセンタでは、日立初の試みとして駐車場を活用したカーポートタイプの太陽光発電設備によるオンサイトPPAを2023年11月から稼働させました。このオンサイトPPAで発電した電力は、データセンター内の事務所や共用部で使っている照明や空調の電力量に相当します。

断層から離れた強固な地盤に建つ岡山センタは、全国的に見ても自然災害のリスクが低い地域に立地。東京や大阪といった大都市が被災した際のディザスタリカバリーを想定したBCP用途に適しています。

岡山センタ長であるデータセンタ部 主任技師の吉岡 隆は、「岡山県は“晴れの国”と呼ばれるように、年間を通して晴天の日が多い地域であるため、太陽光発電の好適地です。また、都心型の横浜センタにはない広い駐車場を備えており、カーポートの屋根を使ってたくさんの太陽光パネルを設置できます」と、プロジェクトの背景を説明します。

画像4: 日立のデータセンターにおけるカーボンニュートラル
第1回 「省エネ」「創エネ」「再エネ」による脱炭素化の試み

株式会社 日立製作所
マネージドサービス事業部
プライベートクラウドサービス本部
データセンタ部
主任技師 兼 岡山センタ長
吉岡 隆

電力の安定供給が必須のデータセンターで、不安定な太陽光発電由来の電力を利用するオンサイトPPA導入にあたっては、落雷などの外来ノイズの影響なども含め、太陽光発電設備に異常があった場合でもデータセンターの運営に影響が出ないように各種検討を重ねました。「今回のPPA導入を通じて、太陽光電力をデータセンターで使いこなすノウハウや契約や届け出などに関する貴重な知見を得られました」と、吉岡はその副次的な収穫にも言及。今後はこの経験知を大規模オフサイトPPAや、電力ではなく環境価値だけを購入するバーチャルPPA導入といった次のステップにつなげていきたいと言います。

ステークホルダーとともにカーボンニュートラルを目指す取り組みについて探る「第2回」はこちらから

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