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ハイブリッドクラウドソリューション EverFlexとは
十鳥
as a Service型のストレージ製品を担当する十鳥です。EverFlexは、オンプレミスとパブリッククラウドを融合したハイブリッドクラウドの活用を推進するためのソリューションです。長年にわたって日立がデータセンターなどで培ってきたハードウェアやソフトウェアの技術と、パブリッククラウドのサービス・ノウハウを融合してお客さまに提供するブランドです。その特長は、迅速・柔軟なクラウドと、信頼性の高いオンプレミスを適材適所で活用することです。それによりどのような環境でも高いパフォーマンスを発揮するシステムを構築できます。また、システム全体の電力消費の見える化による、省電力化・脱炭素対策にも貢献します。そしてこれまで日立が提供してきたサービスやサポートを従来どおりご利用いただけるという点も大きな強みになっています。
後山
十鳥さんの補足をすると、EverFlexはas a Service型のハイブリッドクラウドソリューションですが、as a Serviceというコンセプトは、一般的なものとしてかなり前からありました。例えば日立には「出前クラウド」というサービスがあり、これは日立が2007年から提供を開始した「SecureOnline」というPaaS型サービスの設計や運用ノウハウなどをワンラックにまとめて、それをお客さまのデータセンターに直接設置するというものでした。実は、これがEverFlexで提供する仮想化基盤の原型となっています。このサービスは10年以上前のものですから、日立にはそれ以前からas a Serviceに関するノウハウが蓄積され続けているということです。また十鳥さんが担当されたニアクラウドのサービスもあります。これは、2020年から展開しており、データセンターをリースするEquinixと連携し、日立のサーバーやストレージをEquinixのデータセンターに置き、クラウドライクなシステム運用を実現するという、現在のハイブリッドクラウドに限りなく近いものでした。
なぜ、ハイブリッドクラウドが必要とされるのか
十鳥
変化の激しい市場や社会情勢に対応するには、経営、運営の意思決定や、新商品・サービスの開発をより速く、より柔軟に進める必要があります。また、さまざまな分野でデータ志向が浸透しており、多様なデータの利活用が重要視されています。それらに応えるには、従来のオンプレミスでは難しいというのが事実。しかし、システムすべてをパブリッククラウドに移行するには制約やリスクがともないます。情報の機密性への不安もその一例でしょう。データによっては外部保管が法的に規制されている場合もあります。さらに、パブリッククラウドへ移行した後に、運用の手間やコストが予想以上にかかるといった例もあります。そこで迅速・柔軟な対応が可能なパブリッククラウドと、機密性や信頼性が高いなどの利点があるオンプレミスを融合したハイブリッドクラウドが注目されているのです。
後山
ハイブリッドクラウドの利点について、“オンプレミス回帰”というキーワードがあります。パブリッククラウドの導入に関しては、米国が進んでいるのですが、そのなかで先ほど十鳥さんが触れた、パブリッククラウド移行後の思わぬ手間やコストといった問題に直面する場合も多くあります。そして元のオンプレミスに戻る、という選択をするケースもあるのです。日本の場合、まだそこまでの例は少ないのですが、導入を検討する時点で、そのような事例も意識した形で進められています。そこで重要なポイントとなるのが、オンプレミスとパブリッククラウドを同じテクノロジー、同じアーキテクチャーでつなぐこと。そのような設計のハイブリッドクラウドなら、システム全体を元に戻すことや、一部の機能をオンプレミスに再配分するなど、さまざまな選択肢を検討することができるのです。
EverFlexの高信頼なサービスを支える
十鳥
私は、EverFlexを構成するサービスのひとつである「Virtual Storage Platform on cloud」(以下、「VSP on cloud」)のメニュー開発と拡販、パートナーであるAWS(Amazon Web Services)との連携による、さらに高信頼なサービスを提供するミッションに取り組んでいます。「VSP on cloud」はAWSのパブリッククラウド上で、日立がオンプレミスで提供してきたVSP(Virtual Storage Platform)と同等の機能を実現するソフトウェアストレージです。オンプレミスとパブリッククラウドの両方にまたがる形で機能し、厳しい要件が求められるミッションクリティカルな環境でも高信頼で柔軟なデータ利活用を実現します。2023年6月に国内リリースし、今後、機能強化を進めながら、グローバルでのリリースも予定しています。私は、日立に入社以来、一部の期間を除いてIT製品のソリューション/サービスの設計・開発に携わり続けてきましたが、いま、その知見と経験をフルに生かしています。
後山
私は、「IaaS」と「VMware Cloud on AWS」を担当しています。「IaaS」は従量課金型の仮想化基盤ソリューションで、日立のハードウェアとVMware製品による仮想化基盤をas a Serviceで利用できます。さらに、マネージドサービスを組み合わせれば、オンプレミスの環境をクラウドライクに使えます。「VMware Cloud on AWS」は、AWS上でさまざまな仮想化基盤をVMwareのレイヤーで包括的に利用できるサービスです。私は2005年に、日立の系列会社に入社し、クラウドの黎明(れいめい)期から携わり、クラウドやAWSの有用性をお客さまに伝え続けてきました。そのなかで積み重ねてきたスキルを生かせるEverFlexは、私にとっても大きな意味を持つブランドなのです。
「【第5回 後編】より高い価値をお客さまにお届けするために、EverFlexを拡充・成長させ続ける」はこちら>
十鳥 弘泰
株式会社 日立製作所
ITプロダクツ統括本部
ソリューションストラテジー本部
ハイブリッドクラウドビジネス戦略部 技師
●1987年 茨城県生まれ香川県育ち ●高等専門学校で情報工学を専攻 ●大学院の博士課程でプログラムの自動並列化に関する研究に取り組み博士(工学)を取得 ●2014年 日立製作所入社 高集積サーバーを活用したビッグデータソリューションの開発・デリバリを担当 ●2017年 データ分析・AI/ML利活用を提案するフロント部署に異動し、コンサルタントとして活動 ●2019年 プロダクト部門に戻り、ハイブリッドクラウドにおけるストレージサービスおよびソリューションの企画・開発に従事。現在に至る。
◎趣味は、小さなふたりの娘さんたちと過ごすこと。特に彼女たちが大好きなK-POPのダンスや歌詞などを、動画サイトなどでチェック・予習し、娘さんたちにレクチャーすることが楽しみ。大学院時代、研究室にこもって研究に没頭する毎日を過ごし、現在もオン・オフを問わず、取り組んでいる仕事の課題解決や今後の展開の可能性などを考えている時間が至福。
後山 直哉
株式会社 日立製作所
マネージドサービス事業部
プライベートクラウドサービス本部
クラウド基盤サービス第二部 主任技師
●1980年 島根県生まれ東京都育ち ●電気工学を専攻、画像工学に関するソフトウェアの研究に取り組む ●2005年 日立システムアンドサービス(現 日立ソリューションズ)入社 ●2008年 パブリッククラウドに関連するビジネス企画、プレSEとして活動 ●2013年 クラウド事業の日立統合にあわせて日立製作所に出向、転籍。転籍後は、AWSビジネスの企画・立ち上げに従事。以降、AWSなどのハイパースケーラー(メガクラウド)をはじめとするクラウドの構築・導入SEとして主にプロジェクトマネジメントを担当。
◎趣味は旅行。特に日本は現在までに36都道府県を訪ねた。子どもが生まれてからは控えているが、今後、まだ行っていないところの多い九州や四国への旅行に行く機会を楽しみにしている。学生時代はテニス部に所属していたが、現在は遠ざかっている。
他社登録商標
・Amazon Web Services、AWSは、米国およびその他の諸国における、Amazon.com, Inc.またはその関連会社の商標です。
・その他、本記事に記載の会社名、商品名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。