社会インフラシステムの安定稼働をサポート
日立が開発した総合システムシミュレーション環境(SST※)は、本番環境と同じシステムをサイバー空間上に再現して、実稼働中の環境では実施できないシステム試験を網羅的に実施できるオフライン型デジタルツインシミュレーターです。実稼働前のシステム試験はもとより、環境変化に対応したカスタマイズや短時間でのシステム改修が求められる場合にも、本環境を活用して事前に改造リハーサルが実施できるため、制御システムの開発・試験・改善を、すべて事業所内で行うことが可能となります。つまりSSTは、24時間365日止めることができないミッションクリティカルな社会インフラの安定稼働を支える重要な役割を果たしているのです。
※ System Simulation Test
さまざまな社会インフラの制御システムに適用
SSTは、さまざまな社会インフラの制御システムに適用されています。
例えば、鉄道の列車運行管理システムでは、サイバー空間上に信号機やポイントなどの駅設備を再現し、列車の走行をリアルにシミュレーションできます。日本の都市部の列車運行管理システムは、世界でもまれに見る高密度なダイヤを定時運行しているため、ダイヤの乱れが発生した際、ほかの線区と連携しながら迅速に復旧できる信頼性の高いシステムが必要です。その品質と安全性を担保するためにSSTの技術が活用されています。
駅や列車の運行状況だけでなく、システムに接続しているさまざまなサブシステムをシミュレーションすることで、システム全体の最適化を実現する試験も実施できます。
また、プラント監視制御システムでは従来、試験対象である製品と模擬装置(実機)を多芯ケーブル(銅電線ケーブル)でつなぎ、人手による実機操作で試験を実施する必要がありました。この方法では、ケーブル接続に手間や時間がかかるほか、実機を置くスペースの確保、人による操作や接続ミスによる試験品質の低下などが課題となっていました。
これに対しSSTでは、シミュレーターをPC上に構築できるため、製品とシミュレーターをネットワークケーブルでつなぐだけで試験が行え、検査効率がアップします。
さらに現在は、シミュレーターをクラウド化したことで、場所にとらわれない試験が可能となり、シミュレーター用ハードウェア装置も不要となるため、試験環境の構築時間も削減。試験工数低減と品質向上、リソース最適化を同時に実現しています。
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