企業内外のコミュニケーションが大きく変化する時代に
(左から)株式会社 ロマーシュ 徳永 麻子 氏
一橋大学大学院 阿久津 聡 氏
株式会社 日経BPコンサルティング 石原 和仁 氏
株式会社 日経BPのグループ企業である日経BPコンサルティングは、多岐にわたる専門知識と調査能力を兼ね備えたコンサルタントや編集者が“ブランド”“デジタル”“コンテンツ”という3つの軸で、企業コミュニケーションのさまざまな課題を解決する事業を展開しています。また、約5万人の消費者とビジネスパーソンが、企業や商品・サービスなど、延べ1,500ブランドに抱くイメージと評価を公正に調査する価値評価調査「ブランド・ジャパン」も主催し、戦略的な企業ブランディングを支援しています。
「新型コロナウイルスの広がりは企業内外のコミュニケーションに大きな変化をもたらしました。テレワークの普及で従業員間の対面コミュニケーションが激減し、組織の一体感やモチベーションが低下しています。そのため当社では現在、デジタルを活用した企業のインナーブランディングの再検討を重要施策と位置づけています」と日経BPコンサルティング ブランドコミュニケーション部 コンサルタントの石原 和仁氏は語ります。
2020年、日経BPコンサルティングは創立10周年を記念した企業スローガン・ミッション・ビジョンを新たに策定。その浸透活動を行うためのサービスとして、日立の「共感モニタリングサービス」の先行実証を実施しました。
「ブランド・ジャパン企画委員会委員長を務めておられる一橋大の阿久津教授が日立さんと一緒に開発したサービスだということをお聞きし、非常に興味を持ちました。今まで全く聞いたことがない仕組みなので、その効果を社内で試してみることにしたのです」と石原氏は続けます。
メッセージへの共感度合いを可視化できるサービス
共感モニタリングサービスとはどのようなものなのか、共同開発者の一人である一橋大学大学院 経営管理研究科 教授の阿久津 聡氏に話を聞きました。
「これまでマーケティングリサーチでは、アンケートなどの定量調査とインタビューなどの定性調査をバランスよく使うことで、企業や商品のメッセージに対する消費者の反応を探っていました。しかし定量調査では好き・嫌いといった結果は分かるものの、なぜそう思ったかが深く洞察できず、なかなか改善施策に結び付かない。一方、定性調査は意見の深掘りはできるものの、誰をサンプルにするかで答えが大きく変わってくる弱点がありました。そこで双方の持ち味を生かした、よりシステマティックな調査手法が作れないかと考えていたところ、日立さんから協創の提案をいただいたのです。社会科学で確立されているGTA(Grounded Theory Approach)の調査手法をベースに、私の研究室が蓄積してきた感情のタイプや“何々らしさ”といった複数の評価軸の知見を加えたサーベイに、受け手が感じた“想い”をフィードバックすることで、その共感度合いと原因構造を数値的に可視化・分析できるようにしたのです。1つの調査で定量・定性分析を統合できるほか、なぜそう思ったか、どのような言葉を選べば相手に響くのかも分かるようになります」と阿久津氏は語ります。
サービスで使うメッセージの形態は文書だけに限りません。オンラインセミナーや動画への共感度、テレワークにおけるコミュニケーションへの反応などもリアルタイムかつインタラクティブに可視化することが可能です。個別のサーベイ設計をすることなく、企業理念に関するブランドブックやトップメッセージ、動画コンテンツそのものをサーベイシートとして使えるため、すぐに調査を行えることも大きな特長です。
共感モニタリングサービスは従業員エンゲージメントの向上だけでなく、企業のM&A(合併・買収)においても、それぞれの企業理念や文化を相互理解し、アイデンティティの統合などに役立てることが可能です。
サーベイを体験するだけで理念の浸透を促す効果も
日経BPコンサルティングのトライアルでは、新たに作った企業スローガン・ミッション・ビジョンに関わるメッセージを社員全員にメールで送り、そのフィードバックを分析しました。「結果的に、一人ひとりがメッセージのどの部分に何を感じたかや、メッセージを読ませる順番の違いで共感度が変わることなどを検証することができました。社長メッセージによって短いスローガンの解釈をしっかり伝えられる有用性や、サーベイを体験するだけで理念の浸透を促す効果があることも分かり、具体的な施策立案がとてもやりやすくなりました」と石原氏は評価します。
この効果検証を踏まえ、同社は今後、日立と連携しながら共感モニタリングサービスを活用したお客さま向けのコンサルティングサービスを実施していく予定です。
阿久津研究室の研究成果を産学連携に生かすベンチャー企業、株式会社ロマーシュ代表取締役として、本サービスの開発と企業適用への窓口役を務めた徳永 麻子氏は、日立との協創と今後の期待について「阿久津研究室のアカデミアの手法と、日立のエンジニアリング力が融合したことで、今まで存在しなかった新しいサービスを創造できたと思います。開発終盤に新型コロナウイルスに遭遇しましたが、オンライン会議に参加した全員が互いのアイデアや技術を持ち寄り、アジャイルな手法で一緒にサービスを作り上げていきました。日立の皆さんのチャレンジングな姿勢には非常に感銘を受け、今後もさまざまな研究成果の社会実装を一緒に進めていきたいという思いを強く持ちました」と語ります。
ニューノーマル(新常態)時代では、従業員が今まで以上に企業の理念に共感し、より高い働きがいを持って生産性や健康を向上させる施策が必要です。日立はこれからも企業コミュニケーションに関わるさまざまな課題をトータルに解決する共感モニタリングサービスを、阿久津研究室や日経BPコンサルティングとともに、さらに進化させていきます。
お客さまプロフィール
[所在地] 東京都港区虎ノ門4丁目3番12号
[設立] 2002年3月1日
[資本金] 9,000万円
[従業員数] 115名(2020年4月現在)
[事業内容] 情報通信、電子機器、医療、建設の技術に関するコンサルティングおよび調査研究、経営、新商品の開発に関するコンサルティングおよび調査研究など
他社登録商標
本誌記載の会社名、商品名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。