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統合報告書やサステナビリティレポート、有価証券報告書は企業の重要なコミュニケーション手段であり、コーポレート部門は多くの時間と専門的な知見を投入して作成します。日立ではこうした情報開示業務の支援に向けてAIエージェントを開発し、実務の中でその精度を磨いてきました。そして、この日立の知見が凝縮されたエージェントを、今度はお客さまにも提供していきます。「コーポレート部門向けAIエージェント」開発プロジェクトのメンバーとユーザー部門としてPoCに参加したIR部門の皆さんに話を聞きました。

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【第13回】情報開示業務が変わる!コーポレート部門向けAIエージェント(前編)

評価の高い日立の情報開示文書

——情報開示業務を支援するコーポレート部門向けAIエージェントを開発する契機は何だったのですか。このプロジェクトをとりまとめた日立製作所 フロントエンゲージメント推進本部の根橋さん、縫島さん、教えてください。

根橋
私は以前、ESG情報開示を支援するサービスの拡販に携わっていたのですが、その際、多くのお客さまから日立のグループサステナビリティレポートの完成度の高さについて褒めていただくことがありました。日立はこれまで、数多くの外部評価機関から高い評価を得てきましたが、その背景には、コーポレート部門の皆さんが生み出す文書の質の高さがあると感じています。その際に、「資料作成にはAIを活用されているのですか」と尋ねられることも多々ありましたが、その当時は、まだ本格的なAI活用には及んでいませんでした。

その後、私が製品事業部へ異動してAIビジネスの立ち上げに関わることになった際、その時の経験を思い出しました。そこで、サステナビリティレポートを作成するサステナビリティ本部、有価証券報告書を作成する財務・法務部門、そして統合報告書を担当するIR本部などに、情報開示業務においてAI活用のニーズがあるかをヒアリングして回りました。すると、想像以上に多くのニーズが次々と挙がってきたのです。

縫島
中でもIR本部は、すでにAIの業務活用を本格的に検討しており、課題の洗い出しから汎用AIサービスの活用も進んでいました。そこで、IR本部から具体的な要件を提示してもらい、実務に役立つAIサービスへ磨き上げるため、密に連携しながらプロジェクトを進めていく体制を取ることになりました。

年間900件を超える投資家面談

——たとえば、どのような課題を抱えていましたか。日立製作所 IR本部の川村さん、伊藤さん、教えてください。

川村
私たちIR本部は、日立の企業価値の適時適正な情報開示として、決算説明会やInvestor Day(投資家・アナリスト向け戦略説明会)の実施、統合報告書やIRサイトを通じた財務・非財務情報の開示、さらに資本市場の視点を経営に反映するための年間約900件におよぶ投資家との面談の実施とその学びの社内への和英での報告などをおこなっています。

これらのうち、面談や説明会に関わる業務では、1時間におよぶ各面談後に議事録を作成し、その内容をふまえて速やかに経営へ報告することが求められるため、用語や数値を正確に捉えながらスピードと品質を両立した成果物を限られた工数で作成することが課題となっていました。また、統合報告書などの開示資料の作成においては、過去の基礎資料などを参照しつつも担当者の主観でポイントを拾ってしまい、元資料に含まれる重要な視点やファクトを見落としてしまうケースもあります。こうした課題に対し、AIエージェントであれば、人間では見落としがちな情報も含めて一度網羅的に拾い上げたうえで整理・要約ができると考えていました。

そうした中、今回お声がけいただいたタイミングがちょうど統合報告書の制作開始時期であったことから、まずは統合報告書の作成においてAIで何かできないかとご相談しました。

統合報告書における原稿案作成は、同時に制作を進めていたサステナビリティレポートや有価証券報告書といった他のコーポレート開示媒体への横展開もできそうなテーマであるという期待がありました。また、幹部の過去の発言や掲載記事、各種経営資料などの社内情報を安心してインプットし、社内用語にも対応できれば、一定レベルの成果物が得られると考えていました。

伊藤
統合報告書の作成プロセスそのものの効率化も、大きな課題となっていました。たとえば、幹部のメッセージページを作る際には、まずインタビューを行います。その内容を軸に、メッセージに厚みを持たせるための参照情報を社内外から探し集め、それらを編集・統合してこれまでの発信内容と一貫性のあるメッセージにまとめる必要があります。こうした作業には多くの時間を要するため、私たちは、この文章化作業の工数を削減し、全体のテーマ設定やコンテンツ検討に、より多くの時間をかけたいと考えていました。

また、IR本部では議事録作成一つとっても、投資家面談に加え、当部が主体となって企画・運営する Investor Day や 四半期決算説明会などのIRイベントにおける質疑の議事録も作成・公開しています。これらの議事録は社内共有にとどまらず、コーポレートサイト上にも掲載するため、適時性と正確性が強く求められます。現在は外部のスクリプト作成サービスを利用していますが、人名や固有名詞などで誤記が発生することもあり、確認作業に一定の工数がかかるなど、必ずしも満足できる品質ではありません。

そのような中、今回のPoCでは、6月に開催したInvestor Day の質疑応答の録音データを本AIエージェントに読み込ませ、スクリプトを生成しました。その結果、外部サービスよりも高精度な文字起こしが得られ、特に日立特有の用語や固有名詞を正確に処理できる点 が大きな強みとして確認できました。

さらに、本AIエージェントは セキュアな環境で動作している点も安心材料となり、録音データの提供においても、社内的なハードルが低いことを実感しています。

川村
実は今回のお話をいただく前から、本部独自で社外サービスやツールを探していたのですが、扱う情報が経営情報にあたるため、どうしてもセキュアな環境を求めるとコストが高くなるという課題がありました。また、議事録作成といった単一業務の効率化にしか対応していなかったり、独自AIエージェントについても文字数制限があり、長文作成には向かないという状況がありました。

私たちが作成している統合報告書や、サステナビリティ本部のサステナビリティレポート、財務・法務部門の有価証券報告書は、それぞれ内容の整合性が取れていることはもちろん、視点や粒度も一貫しているべきであり、業務支援ツールは横断して使えるのが望ましいと考えていました。実際、各部門のメンバーとはお互いの連携強化の必要性をつねづね話題にしていました。

その点、根橋さんと縫島さんが構想しているAIエージェントは、コーポレート部門全体で利用でき、部門間の情報連携を前提に開発されるとの説明でした。それを聞いて、「業務の質が大きく変わるかもしれない」と思いました。

コーポレート部門横断が生み出す価値

——根橋さんが、コーポレート部門で共通して使えるAIエージェントにしよう、と思ったのはどういった経緯からですか。

根橋
ヒアリングを進めるうちに、情報開示業務を支援するAIエージェントは各コーポレート部門が横断で使えるものがいい、という結論が見えてきました。実際、ヒアリングでは部門ごとに異なって見えていた業務も、機能要件として分解していくと、「文書ドラフト作成」や「情報収集、分析、評価」といった共通機能に集約されていきます。それならば、共通して同じツールを使った方が、数多くのメリットがあります。

画像: コーポレート部門横断が生み出す価値

——具体的に、どのような価値が生まれるのでしょうか。AIエージェント開発に携わった日立製作所 Data & Design の黒木さん、玉山さん、お二人の視点から聞かせてください。

黒木
まず、幹部の氏名や部署名、ソリューション名、さらには日立特有の指標といった社内用語の辞書を部門間で共有することで、表記の統一性が保たれると同時に、レビュー作業も大幅に効率化できます。加えて、文章のトーンやフォーマット、使用語彙、禁止ワードといった表現ルールをそろえることで、表現の揺れを防ぎ、読者に一貫した印象を提供できるようになるでしょう。

また、コーポレート系の文書を作成する際には、「いつ」、「どの部門」が作成した文書に基づいているのかといった根拠の明確化が不可欠です。その際、各部門が作成した文書をはじめ、社内のさまざまな関連資料を知識DBに格納し、横断的に参照できるようにすることで、全社として整合性のとれた、統一感のあるメッセージを効率的に作成できるようになります。

玉山
今回の開発プロセスは言い換えれば、日立の情報開示業務で培われたベストプラクティスをAIエージェントに組み込む取り組みです。これまで、各所で高い評価を得てきた、コーポレート部門の皆さんの文書作成の流儀やプロセスをAIエージェントに反映することで、スキルや経験を問わず、誰もが同じ水準のアウトプットを生み出せるようになります。これにより日立は、今後も継続して高品質な情報開示を行い続けられると考えています。

——次回は、コーポレート部門向けAIエージェントの活用を通じて日立IR本部が実感している効果と、導入企業にもたらされる価値について掘り下げていきます。

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【第13回】情報開示業務が変わる!コーポレート部門向けAIエージェント(前編)

根橋 いぶき(ねはし いぶき)
株式会社 日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット
マネージド&プラットフォームサービス事業部
フロントエンゲージメント推進本部 販売戦略部

2001年、日立製作所入社。運用管理ソフトウェアの広告宣伝や、ミドルウェア全般の拡販戦略、プロモーションなど一貫して企画業務を担当。2021年より金融担当営業として、損害保険会社を担当する傍ら、翌年より新設されたESG事業部門も兼任し、ESG情報収集サービスの事業立ち上げ、拡販に携わる。2024年より生成AIに纏わる新規ビジネス立上げに従事。

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【第13回】情報開示業務が変わる!コーポレート部門向けAIエージェント(前編)

縫島 環(ぬいじま たまき)
株式会社 日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット
マネージド&プラットフォームサービス事業部
フロントエンゲージメント推進本部 販売戦略部

2011年、日立製作所へ入社。ビジネスパートナー向けの拡販施策や新規パートナー開拓など、パートナービジネス領域での「クラウド」「サービス」事業拡大の企画・販売に長く携わる。2025年より現部署にて、生成AIにまつわる新規ビジネス立ち上げに従事。

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【第13回】情報開示業務が変わる!コーポレート部門向けAIエージェント(前編)

川村 麻衣子(かわむら まいこ)
株式会社 日立製作所 インベスター・リレーションズ本部
インベスター・リレーションズ部
Global Investor Engagement

2006年、日立製作所入社。HRとして事業所勤労や海外出向者オペレーション運用、全社HRコミュニケーションなど人財分野のさまざまな領域を経て、2023年IR本部に異動。以来、統合報告書およびESG分野での投資家対応などに従事。

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【第13回】情報開示業務が変わる!コーポレート部門向けAIエージェント(前編)

伊藤 千聖(いとう ちさと)
株式会社 日立製作所 インベスター・リレーションズ本部
インベスター・リレーションズ部
Global Investor Engagement

2023年、日立製作所に経験者採用で入社。前職では、IR、広報、宣伝、サステナビリティなどコーポレートコミュニケーション全般を幅広く担当してきたが、IR領域で専門性を深めたいとの思いから、IR活動に定評のある日立への転職を決意。入社後は、統合報告書やESG業務を担当し、現在はDSS担当としてIR実務に従事。

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【第13回】情報開示業務が変わる!コーポレート部門向けAIエージェント(前編)

玉山 尚太朗(たまやま しょうたろう)
株式会社 日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット
Data & Design Design Studio Lead Creative Technologist

1996年、日立製作所入社。鉄道などの公共サービス、情報機器や医療機器などのプロフェッショナル向け製品のヒューマンインタフェースデザインを担当。2018年から、先行的なインタラクション研究に従事。2022年に、JEITA HID専門委員会の委員長として、AIとインタラクションをテーマに活動を牽引。2023年、Design Studio の Lead Creative Technologist としてTeamQに参加し、デジタルサービスのUX/UIデザインやデジタルプロトタイピングをリードしている。

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【第13回】情報開示業務が変わる!コーポレート部門向けAIエージェント(前編)

黒木 洋平(くろき ようへい)
株式会社 日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット
Data & Design Design Studio Creative Technologist

2008年、日立製作所入社。コラボレーションソフトウェアの開発や導入支援、クラウド設計、IoTシステムの開発などを経験した後、AIを活用した組織活性度分析、物流配達員の行動分析をはじめとするさまざまなデータ分析に従事。2022年よりTeamQに参加。生成AI、IoT、クラウド、ゲームエンジンなどの知見を生かし、さまざまなプロトタイプ開発や体験型デモの実現に携わる。

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