本プロジェクトの予告編はこちらから
youtu.be北海道支社 生成AI徹底活用へ
北海道全域のお客さまへ幅広い分野の製品・ソリューションを提供している北海道支社。2024年4月、支社長に着任した簑輪正樹は、ビジョンとして「課題解決型営業」へのシフトを掲げる。
「いま、営業は製品やソリューションを売るだけではなく、お客さまの課題を捉え、解決を支援する、課題解決型営業への進化が必須です。一方で、北海道支社のみんなは毎日多忙を極めていて、ワークライフバランスも改善したい。課題解決型営業へのシフトと業務負荷の削減、この両立のために、重点取り組みに据えたのが『生成AIの徹底活用』です」

簑輪 正樹(みのわ まさき) 日立製作所 北海道支社長
簑輪がとった初手は、上層部の啓発だった。経験豊富で生成AIに頼らずとも仕事を進められるベテランたちは得てして生成AI消極派になりがちである。そこで簑輪は部長職以上を集め、生成AI体験会を開催。部長たち自身に、北海道支社のホームページ用の文章を楽しみながら作成してもらった。全員が、これは業務に活用できる、と生成AIの可能性を実感した。
GenAIアンバサダーとの連携
上層部と共通認識は築けたが、どうしたら支社内で生成AI活用を広められるか、その後の展開の仕方を模索する中、簑輪は名古屋で開催されたあるイベントに出席。そこで日立で生成AI活用をリードする「GenAIアンバサダー」の一員である大山友和に出会う。日立の営業部門の生成AIの活用促進に携わる大山は、これまでも精力的にセミナーを開催するなど啓発に努めていたが、ある悩みがあり、それを簑輪に打ち明けた。
「聴講型のセミナーはメッセージが一方的になり、現場での活用につながりにくいことに悩んでいました。活用を早く深く浸透させるには、推進者とユーザーが課題を共有しながら対話型でプロジェクトを進めるような『本気の取り組み』が必要だと思います。ただ私の部門単独でそういう場をつくるのは難しいのです」
それを聞いた簑輪は、「ぜひ北海道支社をテストケースにして、やりたいことを全て実行してください」と申し出た。

大山 友和(おおやま ともかず)
日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部 Executive Strategy Unit GenAIアンバサダー
チームビルディングの狙い
2024年6月、大山はプロジェクトリーダーとして、北海道支社 生成AI活用促進プロジェクトを始動する。まず手掛けたのは、プロジェクトチームの構築だ。各部から1人、意欲ある人財を選出してもらい、推進リーダーに任命。部内の業務から生成AIユースケースを創出することを彼らのタスクとした。大山は語る。
「簑輪さんがトップダウンで方針を打ち出していたおかげで、私たちのボトムアップ活動は円滑に進みました。プロジェクトチームのタスクは、有効なユースケースの創出ですが、その過程で支社全体に生成AI活用が広がることも狙いました」
推進リーダーたちは、部内でユースケースを集め、そこで得た学びをプロジェクト会議で共有する。推進リーダーたちの知見が磨かれ、それが周囲に波及する、という仕組みだ。推進リーダーの1人、企画部の吉田紗枝子は言う。
「使わずとも仕事は回っているので、生成AIを使えと言われてもピンと来ない人もいたと思います。でも、実際の業務でユースケースを紹介すると、その便利さに『私も触ってみるか』という人が増え、徐々に支社内のムードが変わっていくのを感じました」

吉田 紗枝子(よしだ さえこ) 日立製作所 北海道支社 企画部
支社の全社員に対しMicrosoft 365 Copilotを導入
北海道支社での生成AIの活用が広がる中、簑輪と大山は、この流れを加速させるべく次の一手を打つ。簑輪が北海道支社全員へのAIアシスタントMicrosoft 365 Copilot(以降、Copilot)一斉導入を決断。そして大山は日本マイクロソフト社に協力を依頼し、推進メンバーの本間敬啓とともに、社内全体を巻き込んだCopilotワークショップの定期開催を実現する。
日本マイクロソフト社の講師が質問に答えながら、ありきたりではない、業務に即した実践的な使い方をハンズオンで伝授していく。ワークショップ後のアンケートで、今後生成AIを業務に活用したいか、という質問にイエスと答えた社員は92%に達した。
「Copilotのライセンスを配るだけでは、これほど早く活用の文化は浸透しなかったと思います。大山さんから、配布に合わせて全社員参加のワークショップを開催するというアイデアをもらい、この2つの施策が組み合わさって生成AIの習熟が加速化したと思います」と本間は語る。

本間 敬啓(ほんま たかひろ) 日立製作所 北海道支社 企画部
鍵となった「心理的安全性」
大山は、北海道支社の「心理的安全性」を習熟の速さの要因にあげる。
「遊び半分でCopilotを使っていても、簑輪さんはじめ上司は否定しないどころか、どんどんやれと背中を押します。楽しく使うことでハードルが下がり、初心者に輪が広がり、失敗も学びになり、もっと使ってみたいという自主性が育まれる。そして活用の文化が醸成されていきます。この心理的安全性の高さは、間違いなく今回の成功の鍵のひとつです」
その象徴的な例が、営業部の依田隼弥が主催する勉強会だ。依田は、数年前から個人的にさまざまな生成AIに触り続けてきた、いわば生成AIマニアだ。依田は言う。
「この勉強会は、自分が日々感じている生成AIを使う楽しさをみんなに伝えたくて、自主的に開いています。だから業務に即した生成AIの活用法だけではなく、例えば自分の好きな野球チームの応援歌を作ったり、社員が主⼈公の⼩説を作ったり、あえて業務には関係ないテーマも取り上げました。遊びながら、生成AIの得意分野、不得意分野などを理解して、業務活用へのヒントを得てもらえたら、と考えています」毎週末に開かれるこの勉強会はつねに盛況で、すでに20回を越えている。

依田 隼弥(よりた しゅんや) 日立製作所 北海道支社 社会システム第三営業部
楽しみながら真剣に学ぶ
「私は、使う目的は問わないから楽しみながら真剣に学んでほしい、と思っています」と簑輪は言う。簑輪がCopilotの北海道支社の社員全員への導入を決めたきっかけに、上層部を集めた体験会の光景がある。そこにいたベテランたちが生成AIに遊びながら触れ、みるみる使いこなしていった。それと同じように、ライセンスを配布して楽しんで使うことを推奨すれば支社全体に同じことが起きるのでは、と考えたのだ。
「みんなおもちゃのように面白がって使い始め、習熟度が上がり、結果、生産性向上につながりました」
楽しみながら真剣に学ぶ文化をさらに推し進めたい。そんな想いで簑輪は、現在推進リーダーたちが取り組んでいるユースケース創出活動をより促進させるために、ユースケースコンテストを開催できないか?と考えた。さらに、日本マイクロソフト社の品川にある本社を舞台にコンテストを開催できればより盛り上がると考えた簑輪は、“Go to 品川!”を合言葉に本企画の検討を進め、実現へ向けて大山に相談する。すると大山はそのアイデアを日本マイクロソフト社に持ち掛け、北海道支社だけでなく日立全社レベルのコンテストに発展させた。そして2025年、日立と日本マイクロソフト社の共催で、品川の本社において「第1回Copilot活用コンテスト」が開催されることになる。
本プロジェクトのドキュメンタリー映像はこちらから
youtu.be
簑輪 正樹(みのわ まさき)
株式会社 日立製作所 北海道支社長
株式会社 日立製作所に入社以来、ビルシステムや産業分野のアカウント営業を担当。関東支社副支社長を経て、現在北海道支社支社長として北海道における日立グループ全体のビジネスをリード。

大山 友和(おおやま ともかず)
株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit フロントサポートセンター チーフプランニングエキスパート GenAIアンバサダー
コンサルティング部門にて、営業業務改革、新規事業の立上げなどに従事した後、日立コンサルティングにて、基幹業務システム構築などを担当。プロジェクトリーダーとして、システム企画・構築・運用全般を統括その後、営業バックオフィスを支える業務システム全般を統括。現在、営業部門の生成AI徹底活用プロジェクトの取りまとめとして、講演活動、ナレッジ蓄積、社内コミュニティ運営、人材育成などの取組みを推進中。
本記事に記載の会社名、製品名は、それぞれの会社の商標または登録商標です。