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日立では従業員一人ひとりが日々生成AIの使いこなしの技を磨いており、Hitachi Digital LLC(以下、日立デジタル)のCOO(Chief Operating Officer)の安井隆宏も例外ではありません。今回も日立のGenAIアンバサダーの一人である大山友和にひとつ上の使い方のアドバイスを受けながら、話は、生成AIによる業務効率を最大化できる新しい会社のカタチにまで及びました。

「【第2回】Hitachi Digital LLC COO 安井隆宏の活用術(前編)」はこちら>

英語でメッセージを伝えるために

大山
1年の8割以上をアメリカで業務する安井さんは、生成AIを英語での効果的なコメントづくりにも活用しているということですが。

安井
そうですね。私はネイティブスピーカーではないので、英語圏の出席者が私の発言を誤解することなく、知りたいことに過不足なく答えてくれるよう適切なワーディングやフレーズを事前に生成AIに相談しています。

プロンプトとしては、まず例えば「先月からの業績改善の施策の進捗状況、および課題点について説明してください。これを英訳してください」などと入力し、生成AIが英訳したものについて、これで抜け漏れなく答えを返してくれるだろうか、などと精査しながら、いろいろな言葉を付け加えたりして英訳を繰り返し、それらを頭の中でつないで完成形を作っていく、という感じです。

画像: 英語でメッセージを伝えるために

大山
そうですね。目的に合った回答を引き出すためには、やはり自分の立場を「私はIT インテグレーションビジネスの戦略アドバイザーです」と入れた方が良いでしょう。そして、いろいろな言葉を付け加えたりする、というお話でしたが、そこは生成AIにも考えてもらいましょう。なのでプロンプトに、「上記を多角的に質問したい。」を追加して、メッセージしてみてください。

安井
なるほど。生成AIが、私の質問の内容をさまざまな観点から膨らませてくれました。プロンプトの2行目を実際のビジネスに即した具体的な内容にすれば、リアルに使えるフレーズになりそうです。私は今まで翻訳アプリのような使い方しかしていませんでした。これはもったいなかったですね。

画像: 「多角的に」という言葉をプロンプトに加えることで、生成AIが内容を膨らませてくれる。

「多角的に」という言葉をプロンプトに加えることで、生成AIが内容を膨らませてくれる。

会議の流れをシミュレーションする

大山
ひとつの英語コメントをしっかりと効果的なものに仕上げることも大事ですが、ミーティングでは流れの中でさまざまなコメントを要求されます。事前に、会議の流れが自分の発言内容まで含めてシミュレーションできれば、より周到な準備ができますよね。「ロールプレイをしてください」というプロンプトで、それが可能になります。

始めに、「こういう議題でミーティングがあり、自分はこういう立場で出席します」などの背景情報を入れて、最後に「このミーティングのロールプレイを英語でしてください」と生成AIにメッセージしてみてください。

安井
仮に「来週、業績が目標通りにいかない状況での業績確認があります。その会議のロールプレイを英語でしてください」とメッセージしてみます。

なるほど。会議の流れがシナリオ形式で生成されました。私のコメントもしっかりありますね。これもプロンプトをもっと具体化して、参加者を指定したり、課題点を詳細に入れたりすれば、かなりリアルなシミュレーションができそうです。

画像: 会議の流れをシミュレーションする

大山
はい。参加者の役職に加えてペルソナなども指定すれば、生成AIがその人物になりきって発言してくれます。

安井
これまで私はコメントを1個1個考えていましたが、このやり方なら全体の流れの中で、効果的な英語のコメントをまとめて提案してくれるわけですね。これはスゴイというより、最早ズルいですね(笑)。

画像: 「ロールプレイをしてください」というプロンプトで、生成AIが会議のシミュレーションを提示。

「ロールプレイをしてください」というプロンプトで、生成AIが会議のシミュレーションを提示。

業務効率を最大化する新しい会社のカタチ

安井
経営の改善を行う際、関係者が集まり、さまざまな角度からビジネスプランを何度も検討して、議論をし尽くし、これで観点に漏れはないと全員が納得してはじめて実行に移ります。その時に、事前にビジネスプランについて「ロールプレイしてください」や「多角的に見てください」など生成AIにレビューさせれば、検討すべき観点が拡大かつ整理され、リスクの見落としなども減り、議論は効率的に進むでしょう。今日、私が教わったことを業務に取り入れたら、意思決定のスピードと質が向上すると確信しています。

でも、ロールプレイのようなことが生成AIで実現できるのは、もう少し先なのかなと思っていました。

画像1: 業務効率を最大化する新しい会社のカタチ

大山
生成AIの実力に気付いていない人はまだまだ多いと思います。1日に約85~137憶回の検索を処理するGoogleと比べたら、その利用頻度は遠く及ばないでしょう。ということは、今から会社全体で、生成AIをGoogleレベルの頻度で、かつ高度な使いこなしで活用できればその企業は大きなアドバンテージを得ることができると思います。

画像2: 業務効率を最大化する新しい会社のカタチ

安井
そうですね。全ての社員が雑務を生成AIに任せ、かつコア業務に生成AIをフル活用すれば、とてつもない力になりますね。

そして、今日強く感じたのが、生成AIは企業の壁を壊す役割を担ってくれるのではないか、という期待です。日立グループ内ではOT(制御・運用技術)とITの両分野で、例えば鉄道車両について、制御機械について、環境問題について、1日にとてつもない数の会議が開かれ、さまざまな知見が飛び交っています。しかし、そうした知見に他部門の人間がリーチする仕組みづくりは難しく、そのつもりはなくとも結果的に壁ができてしまう、という現状があります。今日私は、パブリックのデータからさまざまな示唆を、生成AIを通して得ていましたが、その代わりに、日立社内で部門共通の情報プールをつくり、そこに会議の議事録をはじめ部門ならではの知見を格納して生成AIで活用すれば、一気にその壁は壊れるかもしれない。そしてお客さまの課題に対して日立の全ての知見を結集したご提案を、日立の全ての社員が行う。

こうした仕組みは日立に限らず、あらゆるお客さまにとって競争優位を確立するうえで有効ではないかと思います。

大山
その通りだと思います。生成AIは単なるビジネスの補助ツールではなく、ビジネス変革の触媒です。AIを企業の中心に据え、経営から現場の業務まで、その活用を前提としたAIファーストにシフトできた企業が、複雑で予測困難な時代を生き残れるのではないでしょうか。生成AIは「やるか、やらないか」ではなく、「やるか、今すぐやるか」の選択肢だと思います。

安井
どの企業も使える時間は平等です。しかし生成AIの活用度を高めることで、お客さまの価値創出に集中できる時間をどんどん増やすことができます。それは、10%アップ、20%アップのレベルではなく、おそらく100%アップ、200%アップという世界でしょう。私たちは本気でシフトしなければいけないと思います。

大山
Googleを使うことを「ググる」っていうじゃないですか。Microsoft社ではこれに倣ってMicrosoft Copilotを使うことを「コパる」と言っています。私はぜひこれを流行らせて、もっと活用率を上げたいと思っています。

安井
いいですね。私もこれからスタッフにドキュメントのレビューを頼まれたら、「それ、事前にコパって、課題点を抽出しましたか?」と聞くようにします(笑)。

画像1: エグゼクティブの生成AIの使い方
【第2回】Hitachi Digital LLC COO 安井隆宏の活用術(後編)

安井 隆宏(やすい たかひろ)
Hitachi Digital LLC COO

2001年4月 株式会社 日立製作所 入社。2015年10月 情報・通信システム社 IT プラットフォーム事業本部サービスイノベーション統括本部 IT基盤ソリューション本部 OSSソリューションセンタ長。2019年4月 サービス&プラットフォームビジネスユニットサービスプラットフォーム事業本部ソフトウェアCoE本部長。2021年4月 社会ビジネスユニット公共システム事業部官公ソリューション第一本部長。2023年4月 Hitachi Vantara LLC Chief Lumada Business Officer。2023年11月 Hitachi Digital Services LLC Chief Lumada Business Officer。2024年10月 クラウドサービスプラットフォームビジネスユニットCOOを経て現在、2025年4月Hitachi Digital LLC のCOOを務める。

画像2: エグゼクティブの生成AIの使い方
【第2回】Hitachi Digital LLC COO 安井隆宏の活用術(後編)

大山 友和(おおやま ともかず)
株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit
GenAIアンバサダー

日立製作所入社後、コンサルティング部門にて営業業務改革や新規事業の立上げなどに従事。日立コンサルティングに出向後は、基幹業務システム構築などに従事し、プロジェクトリーダーとして、システム企画・構築・運用全般を統括。その後、日立製作所に戻り、営業バックオフィスを支える業務システム全般を統括してきた。現在、営業部門の生成AI徹底活用PJの取纏めとして、講演活動やナレッジ蓄積、社内コミュニティ運営、人財育成などの取り組みを推進中。

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