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日立製作所の「GenAIアンバサダー」4人が、アイティメディアの本宮学氏をモデレーターに生成AIの導入成功アプローチをディスカッションするオンラインイベントのレポート全6回の第5回目。今回のテーマは、日常的に生成AIを使うという文化の醸成についてです。

何から始めればよいか分からない

本宮(モデレーター)
私が多くの企業に生成AIについて取材する中でよく聞くのが、「そもそも生成AIの活用が広がらない」という悩みです。この課題の乗り越え方を、生成AIの活用促進活動に携わっておられる大山さんに伺いたいと思います。

画像1: 何から始めればよいか分からない

大山
私は営業部門における生成AIの活用促進のリーダーを務めていますが、やはり最初は、どうやって使ってもらうか悩みました。今日はその経験をお話しします。

私は、促進活動を進める中で大きく3つの課題に突き当たりました。最初の課題は、「何から始めればよいか分からない」というものです。そういうお客さまは多いのではないでしょうか。そして私が行ったのが生成AIとの壁打ちです。生成AIとの対話を重ねてたくさんのアイデアを手に入れました。

そのアイデアの中から、プロジェクトの目的やスコープに照らし合わせて、ワークショップの開催が有効だと判断し、開催を決めました。しかし、その時の私はワークショップ開催の経験がなく、ここでも「どうやってワークショップを開けばいいか分からない」という壁に突き当たり、そしてやはり行ったのは生成AIと壁打ちです。すると、短時間で綿密な企画書が出来上がり、それをベースに私はワークショップを大きなトラブルなく開催しました。

生成AIは世の中の膨大なデータから、初心者の私には思いつかないアイデアを大量に提示してくれました。何から始めればよいか分からないという方は、アイデア出しが大の得意である生成AIに、まずは支援を仰ぐのが最善だと思います。

また、生成AIを活用して作ったワークショップの企画書はとても内容が良く、日立グループの教育専門会社の担当者に見せると、私のことをワークショップ開催のエキスパートだと勘違いするほどでした。次の課題にもつながりますが、生成AIを使うと素人がいきなりエキスパートになれる、というようなエピソードを上手に拡散することも、実はとても効果があると感じています。

画像2: 何から始めればよいか分からない

古い慣習にとらわれ、生成AI業務活用が進まない

次の課題は、「古い慣習にとらわれ、生成AI業務活用が進まない」というものです。

先程もお話ししましたが、Teams会議をやるとボタン1つですぐに議事録が作成できますが、時間をかけて議事録を作ることがスキルアップの鍵と考える世代には受け入れ難いものです。それについては、生成AIを使えば生産性が約2倍に向上し、それによって生まれる時間で付加価値のある大きな仕事に取り組むことができ、スキルをより磨けるという事実を真摯に啓発していくことが大切だと思っています。

画像: 古い慣習にとらわれ、生成AI業務活用が進まない

情報発信がネタ切れになる

3つめの課題は「情報発信がネタ切れになる」というものです。啓発活動やエピソードの拡散が重要だというお話をしてきましたが、継続的な情報発信を限られたチームメンバーだけで行うのは体力的に非常に大変です。そこで私は何か活動を企画したら、すぐに関連する他部門に働きかけ、連携して動きます。例えば、ワークショップを開催する場合は、企画段階から広報と連携し、レポート記事の作成と日立グループ全体への展開をお願いしています。いろいろな部門を巻き込むことで継続的な情報発信が容易になると同時に、私たちの活動の認知度向上にもつながります。

また、社内SNSの活用も重要です。私は生成AI活用促進のSNSを運営していますが、5,000人規模のフォロワーがあり、ここで事例紹介リレーという企画を立ち上げています。これは、誰かに日常の生成AIの活用の仕方を投稿してもらい、最後にお友達を紹介してもらうという形で、無理なく継続的に自走できるような仕組みとなっています。

画像: 情報発信がネタ切れになる

日常的に生成AIを使うという文化の醸成

本宮(モデレーター)
生成AI活用が広がらず、PoCで終わってしまった話は本当によく聞きますが、活用の促進にはやはり根強い活動が重要なんですね。他の皆さんからも、企業が生成AIの普及を進めるうえでの勘所をお聞きしたいと思います。

画像: 日常的に生成AIを使うという文化の醸成

五十嵐
私たちが普段心掛けているのは、実際に使われる方をできるだけ巻き込んでいく、ということです。例えばシステム部門の方と日立だけで検証を行っても、まわりは「ふーん」で終わってしまって活性化しません。一方で、実際に生成AIを使う現場の方々も検証に巻き込むと結果は自分事になり、「じゃあ次はこういう試験をしよう」など検証は活性化し、PoCは前進しやすいと思います。

また、最初からあまり大きい目標を立てても、お客さまにはそのシーンが想像つきにくく、検証にも時間がかかってしまいます。まずは本当に身近なところから、例えば「チャットでこんな回答が返ってくるとしたら業務の効率化になりませんか」とすぐに想像できることから始めると、「じゃあこんなことはできる?」とお客さまの興味が湧き、次につながりやすいと思います。

滝川
新しいツールを能動的、積極的に活用できる人に対し、そうではない人もいるのは避けられません。それを踏まえると生成AIをアプリケーションの中に混ぜ込んでいくという取り組みも有効だと思います。「生成AI活用開発フレームワーク」(第3回参照)のように誰もが気付かないうちに、ストレスなく生成AIを使っているという仕組みを工夫して実現することも、普及には大切ではないでしょうか。

照屋
私の経験では、生成AIの普及に成功しているお客さまには、大山さんのような旗振り役が必ず存在しています。トップダウンで「さあやろう」というのも大事ですが、やはりみんなのやる気を引き出す現場のリーダーも不可欠だと思います。その旗振り役のもと、先程もあったように、実際のユーザーの声に丁寧に寄り添いながら小さくても成功事例を一つ作り、それを横展開していくというやり方が、最終的に浸透につながると思っています。

大山
生成AI活用をPoCで終わらせないためには、経営者は失敗を許容するポジティブな姿勢を示しながら、現場は失敗を恐れずに創造的な挑戦を続ける、というトップダウンとボトムアップ双方からのアクションが不可欠だと思います。そうした試行錯誤のチャレンジなくして、日常的に生成AIを使うという文化は醸成されないのではないでしょうか。

本宮(モデレーター)
生成AI活用の成功には、技術面だけでなく、マインド醸成といった面まで含めて企業にはさまざまな取り組みが求められます。そんなお客さまに伴走してくれる心強い存在が、GenAIアンバサダーの役割だと認識しています。

次は、日立のGenAIアンバサダーの皆さんに、そのミッションに対する想いや意気込みを伺っていきたいと思います。

次回、第6回(最終回)は5月23日公開予定です。

画像1: もう迷わない、生成AIのビジネス活用
【第5回】成功例に学ぶ、課題の乗り越え方(その3)

本宮 学(もとみや まなぶ)
アイティメディア株式会社
DX編集統括部 統括部長 兼ITmedia ビジネスオンライン編集長
※所属と肩書はウェビナー開催時点のもの

アイティメディアの BtoB IT・ビジネス領域メディアの責任者。先端テクノロジーやエンタープライズIT分野の取材を続け、2016年からITmedia NEWS編集長、2018年からITmedia ビジネスオンライン編集長にそれぞれ就任。両メディアの統括責任者を経て、2024年10月より現職。日本企業のデジタル変革やAI活用の可能性について取材している。

画像2: もう迷わない、生成AIのビジネス活用
【第5回】成功例に学ぶ、課題の乗り越え方(その3)

滝川 絵里(たきがわ えり)
株式会社 日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット
AI CoE GenAIセンタ ワンストップサポートサービス
部長

日立製作所入社後、官公庁向けプラットフォームのシステム運用や、クラウドサービスの立ち上げに参画したのち、大学の頃から興味があり取り組んでいたデータ分析の世界に参画。自然言語を中心とした障害対応支援や営業力強化のAIソリューションの開発に従事。2023年より全社生成AI活用プロジェクトに参画し、日立グループ全社への共通基盤展開や、その実績を活用した外販ソリューションの拡販、支援を担当。現場で働くなんでも知っていてみんなが頼りにするベテランの方々を尊敬しており、いつかAIがそんな存在になることをめざしている。
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画像3: もう迷わない、生成AIのビジネス活用
【第5回】成功例に学ぶ、課題の乗り越え方(その3)

五十嵐 聡(いがらし さとし)
株式会社 日立製作所 アプリケーションサービス事業部
テクノロジートランスフォーメーション本部 生成AIシステムエンジニアリング部
部長

日立製作所入社後、ミッションクリティカルな大規模システム開発を実施(産業流通業界)。スクラッチ開発、マイグレーション開発、インフラリプレースなど多岐にわたるプロジェクトをプロジェクトマネージャーとして推進。現在はシステム開発における生成AI活用として「生成AI活用開発フレームワーク」を中心としたアセット開発の取りまとめ、及びプロジェクトへの適用支援、展開を実施中。
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画像4: もう迷わない、生成AIのビジネス活用
【第5回】成功例に学ぶ、課題の乗り越え方(その3)

照屋 絵理(てるや えり)
Director, Strategy Office, Strategic Social Innovation Business BU, Hitachi Digital LLC

日立製作所研究開発グループ入社。自然言語処理に関わる研究開発に従事。2022年に公共システム事業部に異動。データサイエンティストとして、材料開発メーカー向けにデータとAIなどのデジタル技術を活用し材料開発を加速するMaterials Informatics関連の技術開発・拡販を担当。近年は、公共分野の生成AI活用支援にも従事。日立認定データサイエンティストゴールド。理学博士。
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画像5: もう迷わない、生成AIのビジネス活用
【第5回】成功例に学ぶ、課題の乗り越え方(その3)

大山 友和(おおやま ともかず)
株式会社 日立製作所 デジタルシステム&サービス営業統括本部
Executive Strategy Unit
チーフプランニングエキスパート

日立製作所入社後、コンサルティング部門にて営業業務改革や新規事業の立上げなどに従事。日立コンサルティングに出向後は、基幹業務システム構築などに従事し、プロジェクトリーダーとして、システム企画・構築・運用全般を統括。その後、日立製作所に戻り、営業バックオフィスを支える業務システム全般を統括してきた。現在、営業部門の生成AI徹底活用PJの取纏めとして、講演活動やナレッジ蓄積、社内コミュニティ運営、人財育成などの取り組みを推進中。
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