※1 Mobility as a Service
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バス降車から施設利用までリアルな実証の現場を公開
2025年2月12日に筑波大学附属病院で開催された医療MaaS実証のメディア取材会の後半には、屋外のバス停で実際の実証の様子を取材してもらう機会が設けられました。

見守りサイトの画面例と実際に設置されているビーコン
当日は実証に参加した方に介助者と日立のスタッフが付き添い、計3名で参加者の自宅最寄りのバス停から乗車。目的地のバス停「筑波大学病院」に予定時刻に到着したバスから降車する際、参加者は乗務員にスマートフォン画面の「見せ券」を提示し、実証参加者であることを示したうえでバスを降りました。この見せ券は、バスの車両内や乗降するバス停に設置した無線装置(ビーコン)からの電波を検知することで、スマートフォン上に自動的に表示されます。

見せ券のイメージ
実証参加者はそのまま同院の桐の葉モール内にある健康・スポーツ科学センター「WIT」※2に徒歩で移動しますが、屋内外を結ぶ経路の各所に設置されたビーコンが移動情報を取得し、対象者の移動をモニターし続けます。そのデータは家族などのスマートフォン上に経路図や施設平面図のほか、時系列情報として表示され、リモートで見守りができるため、家族にとっては大きな安心材料です。なお、経路移動中には見せ券は不要となるため、参加者のスマートフォン上に表示されることはありません。
そして、実証参加者がWITのある桐の葉モールに到着すると施設内各所のビーコンからの電波を検知したスマートフォンに再び見せ券が自動的に表示され、参加者はWITの受付で施設スタッフにその画面を提示。利用手続きを済ませ、フィットネスマシンなどを使ったエクササイズを開始しました。
※2 Willing Institute of Tsukuba:筑波大学附属病院の桐の葉モールにある、今川商事株式会社が運営する健康・スポーツ科学センター
高く評価された家族に安心を届ける「見守りサービス」
その後、実証の一連の流れを見学・取材した記者団から実証参加者の家族へのインタビューがスタート。取材に応じたある父親からは、「障がいのある息子は一人での行動やお金の管理が難しいので、ふだんは私自身が送り迎えしています。今後、年齢とともに送迎も大変になっていくなかで、今回のシステムがあれば料金の支払いもできて負担軽減になりますし、見守りのアプリから息子が今どこにいるか分かるのはとても安心です」と、料金の事後決済機能やビーコンによる見守りサービスなどの有用性を評価するコメントが寄せられました。

実証参加者の家族

つくば市
市長
五十嵐 立青 氏
続いて、当日実証参加者の方々とともにバスに同乗していたつくば市の五十嵐 立青市長もインタビューに対応。「障がいのある人が余暇活動をするという選択肢は社会にまだ多くありませんが、ご家族の負担を軽減できるという意味でも、ハンズフリーの仕組みは大変有効だと思います。また見守りサービスは、障がいのある方だけでなく、ご高齢の方や小さなお子さまがいるご家庭にとっても安心感を高められる仕組みではないでしょうか」と、今回実証されたシステムのさらなる活用可能性に期待を寄せました。
誰もが自由で便利に安心して移動できる社会をめざして
今回実証したシステムの将来の実用化を考える時、例えばビーコンを手の届く場所に設置すると容易に取り外されてしまう、といった盗難リスクは1つの課題となります。また、事業化・サービス化に向けてはビーコンの故障などに対応する保守体制の確立も必要です。さらに、サービス利用者が降車すべき場所を間違えないように「スマートフォン上に降車のタイミングを知らせるメッセージを表示できないか」といった要望も家族からすでに出ており、今後はサービスの利用価値をさらに高めるための追加機能の実装も検討していきます。
本実証の成果を踏まえ、日立はこれからもサービスの利便性や有用性についての検証のほか、障がい者の生活自立支援に対する貢献度などの測定・検証も推進していく考えです。また、実証を主催した「つくばハンズフリーチケッティング共同事業体」※3でも、ハンズフリーで利用・決済できる施設やサービスを拡大しながら、地方公共交通の利用促進を通じて、“必要なとき、必要な場所へ”さまざまな移動手段を提供する社会の実現に向けた取り組みをさらに加速させていきます。
※3 つくば市、国立大学法人 筑波大学、一般社団法人 つくばスマートシティ協議会、関東鉄道株式会社、今川商事株式会社、株式会社 日立製作所で構成。
お問い合わせ先
株式会社 日立製作所 社会インフラITシステム
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